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「勝つことだけ」を考えるギャンブル依存症をどう防ぐか

ギャンブルイメージ

カジノが日本国内に誕生した時の最大の懸念材料がギャンブル依存症患者の増加である。

現時点でも日本には559万人のギャンブル依存症もしくは依存症リスクを持つ人がいると推定されている。人口比で5.6%はアメリカの0.6%の約10倍。これでカジノが解禁されたら、その数はさらに増えるのではないかとの心配も当然だ。

世論調査でカジノ解禁の是非を問うと、賛否は拮抗する。そして否定派の最大の理由も、ギャンブル依存症への恐れである。依存症患者が遊ぶ金欲しさに罪を犯すというのもよく聞く話だ。放置すれば社会不安につながる。カジノを開設するなら、厳重な依存症対策が不可欠だ。

一番簡単でなおかつ効果的な対策は、自国民を完全に排除することだ。東南アジアには外国人専用のカジノが多い。韓国には17のカジノがあるが、韓国国民が遊べるのは江原ランド1カ所のみ。外国人にお金を落としてほしいという狙いもあるが、同時にギャンブル依存症対策でもある。欧米人に比べ東洋人はギャンブルに熱くなりやすいという。そこで物理的にカジノと切り離すことで、依存症を未然に防いでいる。

高額の入場料を取るのも一つの方法だ。シンガポールのカジノは、外国人が入場するのは無料だが、自国民に対しては100シンガポールドルを徴収する。日本円にして約8千円。日本に置き換えればテーマパークの入場料よりも高い設定だ。ハイローラーと呼ばれる大金を賭ける人にとっては何ということない金額だが、一般市民にとっては躊躇する額だ。そして徴収した入場料は依存症対策に使われる。

日本のIRは、シンガポールをお手本にしている。2010年に2つのIRが誕生し、インバウンドを大きく伸ばした例にあやかろうというわけだ。そのため、自国民に対する対応もシンガポール同様、入場料を取る形になりそうだ。

しかし、入場料によるハードルだけでは依存症は防げないとの指摘もある。依存症患者は勝つことしか考えず、入場料などすぐに取り返せると信じているためだ。

そこで重要なのがソフト面での対策だ。例えば、依存症患者だけでなく、その家族の要請があれば、カジノに立ち入れないようにする、といったものだ。最近ではプレーヤーの賭け方をリサーチして依存症かどうかを判断し、重症化するのを未然に防ぐといった対策も海外のカジノでは取られ始めている。

同時に依存症患者へのケアも重要だ。診断し治療するだけでなく、本人および家族へのカウンセリングなども必要になってくる。ただし見方を変えれば、これまではパチンコ業界などが、独自に依存症対策に取り組んできた。しかし国策としてカジノが解禁されるのであれば、国としてその対策に全力を挙げる必要がある。それが、依存症予防・治療につながれば、結果として依存症患者を減らすことにつながる。

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