運の扉を開けるカギはどこにあるのか
この世の中、うまくいく人と、うまくいかない人がいる。うまくいかない人は、どんなに努力しても、うまくいかない。どうして、この違いが出てしまうのか。
という疑問を、実は、私は20歳前後のころから胸に抱いてきた。この疑問には、実の父の非業の死が関わっている。
故郷の天草で電気店を営んでいた父は、自分の借金ではない、借金の保証人になったことによって、身動きが取れないまま、自ら死を選ぶ結果になった。
眠る時間も惜しみながら、一心不乱に働いていた父が、うまくいかずに一つの生を終えたのである。
この世は「努力」だけではどうしようもない扉がある、とそのころ考えた。一体その扉を開けるカギは、どこにあるのだろう。
運命という言葉が、すぐに胸に涌いたが、私はこの正体不明の言葉が好きではなかった。運命、宿命、というと、正体が不明な言葉にもかかわらず、もはや変えることのできない、がんじがらめの束縛を感じてしまうのだ。それゆえに、運命論は硬直した考えだと考えていた。
ところが、ある言葉に出合った時、その合理的な思考の積み重ねに、大変感銘を受けたのだ。
それは運命の構造と要素を語る言葉だった。
運を変える思考は、すべての根源の力となる
その言葉とは、前回に触れた、稀代の聖人マザー・テレサによる箴言である。驚いたことに、そこには運命を変えることのできるプロセスが、整然と記されていたのだ。
私はかなり合理的な考えを持つ人間なのだが、その私を納得させるに十分な運命転換の方程式だったのである。
それは、次のような言葉によって紡がれている。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
以上の5つの階梯である。
そのプロセスの第一には、「思考」が置かれている。
パスカルが『パンセ』(このパンセという語も思考を意味するフランス語)の中で「人間は考える葦である」といった時の(考える)だ。
また、デカルトが、「われ想う、ゆえにわれあり」と自らの存在証明とした(想う)でもある。この思考こそが運命を変える根源の力なのだ。
運を変えた人たちを観察し、レポートした本
次々と湧き出る思い、考え、そして喜怒哀楽の感情。こうした思考がすべてのスタートだということである。
この思考が言葉となって外に出て行く。その言葉が、自分を変えていく。
言葉は口にするものだが、同時に聴覚を刺激し、表情に表れ、場合によれば手足の動きと連動する。しかも、言葉は頭脳による思考の流れに直結して発せられている。
マザー・テレサはこの思考と言葉の関連に続いて、言葉が行動に、行動が習慣に、習慣が性格に、そして性格は運命につながるという。何が運命を変えるカギなのかが、ここで示されたといっていい。
このマザー・テレサの運命の方程式をもとに、私は周囲の「運命を変えた人たち」をウオッチした。年収1億円超えの実業家もいるし、5千万円の借金から生まれ変わり、今では年9千万円も稼ぐ女性もいる。そうした、たくさんの人の「運命を変えたカギ」の正体をレポートしたのが、3月に世に出た『運命転換思考』(経済界)である。
運命に関心のある人、後輩や子どもの教育に携わる人にも読んで貰いたいと思う。
今号の流儀
思考を変えれば言葉が変わる。そうして、大きく運命が変わる。
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