子どものころから長年続いた母親との確執、結婚・離婚など、波乱万丈の人生を歩んできた、作家のいつかさん。自らの豊かな人生経験を元に、現在は幅広い層の男女の恋愛・結婚の指南役として活躍するいつかさんの半生と、その素顔に迫ります。
いつか氏プロフィール
女性が生きやすい時代にその上で求めたいもの
佐藤 いつかさんとはもう10年以上のお付き合いになりますが、こうした場で、面と向かってゆっくりお話しするのは初めてですね。
いつか 緊張しますね(笑)。『ゼッタイ、必ず、大丈夫』『結婚できない10の習慣』に続き、『わたし幸せじゃないの?』を発行していただき、ありがとうございました。
佐藤 こちらこそありがとうございます。この本はいつかさんの半生を踏まえた女性の生き方について、膨大なデータを元に緻密に書かれていて、言葉一つ一つに重みを感じながら興味深く読ませていただきました。
今は女性を取り巻く社会的環境が30年前とは大きく変わり、女性は生きやすく、働きやすくなりましたが、その環境に甘えてはいけない、まだ不十分なところもあるとも示唆しています。看護師の待遇の良さとその歴史的背景のところで触れられていましたね。
いつか 深く読んでいただきうれしいです。職場に女性が多い他の職業と比べて、看護師は、長い時間をかけて社会で闘ってきた歴史があります。職能団体や政治団体をつくり、政治家を輩出し、明確な問題意識を持って発言し、行動してきたから待遇がいい。
2016年4月に女性活躍推進法が施行され、女性の環境は改善されました。でもそれに甘えて満足していてはいけないと思うんです。問題に対しては「間違っている」と主張し、自ら権利を勝ち取っていくという姿勢があって、初めて女性が活躍できる社会ができるのだと思います。
佐藤 仰るとおりですね。女性は与えられた社会を生きるのではなく、女性自らが切り開いていくという姿勢と覚悟が必要ですよね。
波乱万丈な人生を経たいつか氏が女性に伝えたいこと
佐藤 いつかさんは子どものころからご両親のスパルタ教育を受けて育ち、親との確執もあったそうですが、そういう環境も人格形成に影響した部分はあるのでしょうか?
いつか 私は3人姉妹の長女です。最初の子だから余計に厳しいのもあったのでしょうが、育て方が妹たちとはまるで違っていました。「一番になるのが当たり前」と言われ続け、どこまで頑張ればいいんだろうと悩みました。
転機となったのは、16歳のころ原宿の歩行者天国で、雑誌の読者モデルとしてスカウトされたことです。自分の稼いだお金で高校卒業とともに一人暮らしを始め、コピーライターの仕事をするようになりました。いろいろな方に助けていただき、今があります。佐藤社長は、有名な経営者のお父さまとの親子関係はいかがでした?
佐藤 私は4人兄弟の長女なので、親の生活が厳しい時期に産まれた私と、親が豊かになってから産まれた子どもたちとでは、子育ての仕方が違いました。でもそれは仕方のないことですよね。父親との関係は、周りからは、「有美ちゃんはお父さんにかわいがられて」と言われましたが、父親を恋人のように感じたことはありません。よく叱られましたし、怖い存在でしたよ。いつかさんの20代のころはいかがですか? 世界各国を旅されていたそうですが得たものはありましたか?
いつか 叔母がアメリカに住んでいたので、20歳でアメリカに渡り、そこで日本のシステムにとらわれていては駄目だと気づきました。日本では他人と同調するのが美徳だとされますが、アメリカでは自己主張し、他人の意見も尊重します。これまでに50カ国以上を訪れ、世界中の人々のモノの見方や考え方を知ることができたのは財産です。
佐藤 海外で学んだことで、日本社会に必要なことはありますか?
いつか これは本にも書きましたが、周囲に流されないこと、他人の視線に縛られないこと、自分を犠牲にしないこと、頑張り過ぎないこと、陰口を言わないことは今の日本社会に必要ですね。
佐藤 それらは裏返せば、日本人の弱点ともいえる特性であり、文化ですしね。その後、結婚・離婚を経験され、その経験を真正面から受け入れて、30代、40代と女性に向けて50冊以上の恋愛・結婚の本を書き続けてこられた。今回の本と新刊『ガラスの天井のひらきかた』は、これまでと比べてもう一段上の新しい価値観で書かれたフェミニズムのバイブルと呼べる内容です。
いつか 50代になってモノの見方がずいぶん変わったというか、自分自身の中で意識改革があったんです。例えば若いころは恋愛・結婚に執着していましたが、今は「ケ・セラ・セラ」と思うようになりました。その上で、女性であることを生かしてどう生きるか。それを2冊の本に込めました。
佐藤 波乱万丈な人生を経ているからこそ、今のいつかさんが在るのでしょうし、それが作家としての言葉に宿っているから、同じ女性にも、また男性にも、性別を越えて響くのだと思います。経験を受け入れるだけでなく、生かすことは大切なんですね。
似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=佐藤元樹
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