金融庁は、2017年7月~18年6月の重点施策をまとめた「金融行政方針」を公表した。
最大のテーマは、人口減少で地域経済が縮小し、収益機会がしぼむ地方銀行のテコ入れ。中でもビジネスモデルの持続可能性に深刻な課題を抱える地方銀行に対しては検査を実施し、課題の解決に向けて早急な対応を促す。さらに、競争に敗れて淘汰される地銀が出ることも懸念し、監督手法の見直しなども検討する考えだ。
金融行政方針は、森信親長官が就任した15年から、年1回発表している。今回の行政方針は、異例の長官続投3年目に入った森氏がかねてから地銀に対して抱いている問題意識を色濃く反映させた格好だ。
人口減少に伴う地域経済の縮小に加え、長引く低金利で貸し出し利ざやが縮む中、地銀の経営環境は厳しさを増すばかりだ。金融庁は行政方針で、17年3月期決算で過半数が本業の貸し出しや手数料ビジネスで経費を賄えず赤字となったと指摘した。
経営基盤の強化に向けた地銀の経営統合も、思うようには進まない。県内シェアの拡大を理由に公正取引委員会が慎重なためだ。行政方針では、「同一地域内の経営統合には寡占・独占のリスクが指摘されている」とも明記した。こうした中、金融庁は「ビジネスモデルの持続可能性に深刻な問題を抱えている地域金融機関に検査を実施する」方針を明示。「経営課題を特定した上で、深度ある対話を行い、早急な対応を促す」姿勢を打ち出した。
抜本的な改善策が講じられなければ、淘汰される地銀が出てくることも懸念される。地域の金融仲介機能を維持するため、現行の制度や監督手法の見直しなどにも乗り出す。
さらに、取引先企業の価値向上に取り組んでいる地銀を客観的に評価する共通指標も導入する。「良質な金融サービスの提供に向けた金融機関間の競争」を実現する狙いだ。
地銀の抜本改革に向けて、金融庁が本気で動き出した。
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