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インスタグラムをビジネスに活用するコツと最新トレンド

SNSマーケティングの新たなツールとして、インスタグラムをビジネスに活用する企業が増えている。しかし、有効な使い方が分からずフォロワー獲得に苦戦するケースも目立つ。そこで、インスタグラム運用のコンサルタントとして、短期間で多数の企業アカウントのフォロワーを爆発的に伸ばすことに成功した大槻祐依さんに、インスタをビジネス活用するコツを聞いた。(編集=吉田浩)

解説者プロフィール

大槻祐依氏

大槻祐依(おおつき・ゆい)株式会社FinT(フィント)代表取締役。早稲田大学文化構想学部卒。在学中に起業家養成講座の受講や学内のビジネスプランコンテストで優勝したことなどをきっかけに起業に興味を持つ。シンガポール留学中や帰国してからさまざまな企業のインターンシップを経験した後、2017年起業。現在、女子大学生向けのライフスタイル情報ウェブメディア「Sucle(シュクレ)」を運営。「インスタグラム」のフォロワー13万6千人を獲得する傍ら、グルメ、旅行、不動産、コスメブランド、ファッション等、さまざまな分野における企業のインスタグラム運営やコンサルを手掛け、短期間でのフォロワー増加を実現する。

 

インスタグラム

インスタグラム数値

*大槻さんが手掛けたインスタグラムフォロワー増加の実例

インスタでフォロワーを増やす基本的考え方と具体的テクニック

 

画像の仮説、検証を繰り返す

フォロワーを増やすためにはまず、インスタのアルゴリズムに対して、どんな画像が評価されやすいかを研究することで、ユーザーが求めている画像がどのようなものかを掴み、それに沿って発信することが重要になります。

私が自社メディアを運用してきた頃からやってきたのは、画像の仮説、検証を繰り返すことでした。

広告やキャンペーンを打つことや、フォロワーを増やすためのツールを使用することはせず、特に熱心に行ったのが画像一枚ごとの検証です。

たとえばグルメのアカウントの場合、ケーキにイチゴが1個だけ載っている写真が良いのか10個が良いのか、背景色は何が良いのかなど、写真ごとに比較します。そして、エンゲージメントが伸びた方について、その原因の検証を繰り返し、得られたデータを次の投稿に活かしていくというやり方です。

手作りご飯とカフェのご飯ではどちらが伸びるのか、手作りなら普通の料理なのか甘いお菓子なのか、甘いお菓子ならクッキーなのかケーキなのか、クッキーのデザインはスヌーピーなのか熊さんなのかなど、条件を変えて延々と続けるわけです。

そうしていくうちに例えば「黒の背景にイチゴ盛り盛りは伸びる」といった黄金方程式を見つけることができます。手間はかかりますが、最もシンプルに結果が出る方法と言えるでしょう。

イチゴ盛り投稿画像

ユーザーがフォローする理由をつくる

インスタアカウントを運用する際は、ユーザーがフォローする理由を作ってあげることが大切です。

フォローに至るのは、「画像と出会う」「アカウントを見に行く」「プロフィール欄を見て興味を持つ」「フォローする」という流れですが、この当たり前の流れが意外と忘れられがちです。

内容が統一されていないアカウントは、興味のない写真がたくさん自分のタイムラインに流れてくるのが嫌がられてフォローされにくくなります。ダイエットに興味のある人は、ダイエットに関する有益な情報が流れているアカウントをフォローしますが、ヨガの動画とダイエットレシピの両方を見たい人はあまりいません。そこで、ダイエットレシピだけに統一するなど、何を目的に見るユーザーが多いのかを考えて工夫する必要があるのです。

また、最近は特定のアカウントをフォローする理由が、単に「かわいい」や「きれい」といったことから、納得感を得たり、情報を得たりするためという方向にシフトしていることも見逃せません。インスタが個人の楽しみのためだけでなく、情報収集ツールとして利用されるようになってきているからです。

「インスタ映え」はもう古い!?

 インスタを情報収集ツールとして捉える向きが強くなってきたため、より「有益性」を重視する傾向が出てきたのも最近のトレンドです。

これまでは「インスタ映え」と呼ばれる写真の見ばえばかりが注目されてきましたたが、その時代はそろそろ終わりに近づいてきていると思います。

もちろんカワイイものはまだまだ流行ると思いますが、「映え」の世界は飽和状態になってきていて、たとえばコスメやダイエットなどの領域では、どうやってメイクしているのか、商材にどんな効用があるのかが分かりやすく示されていることのほうが、今は重要になってきています。一枚の投稿をいわば記事のような形で、ミニブログとして捉える傾向が強くなっているのです。

インスタ投稿

*写真がなく、文字だけの投稿が有効なケースもある

そのため、写真の重要性は伝えたい内容やものによっても変わってきます。たとえばニュースなど写真だけでは伝わらないものや、分かりづらいものは文字で捕捉する、または内容によっては文字だけにする方が良い場合もあります。

情報収集ツールとして捉えた場合、検索タグから写真の一覧が画面に出たとき、ユーザーの好奇心をそそってタップされやすくする工夫が必要です。その際、写真だけでは分かりづらければ、文字を載せることによって補足します。

ただし、ダラダラと分かりにくいものではなく、簡潔に一目で分かる体裁にすることが重要です。雑誌の切り抜きをイメージすれば、分かりやすいのではないでしょうか。「1スライドに1つの伝えたいことを載せる」というプレゼンのテクニックがありますが、インスタも同じように考えると良いでしょう。

検索意図を考えてハッシュタグを付ける

ハッシュタグの検索順位は、グーグル検索と同じくアルゴリズムで評価されるため、たとえばユーザーの滞在時間が長いコンテンツや「いいね!」が付くコンテンツは上位に来ます。本質はグーグル検索のSEOと似ていて、ユーザー満足度が高いコンテンツほど高く評価されます。

ハッシュタグの付け方のコツは、ユーザーの検索意図を理解すること。簡単な例で言えば、ある場所でレストランを探すユーザーを想定した場合、ハッシュタグに地名を付けるだけでなく「地名+カフェ」「地名+ランチ」といったワードにしたほうが、探されやすいということです

インスタにおける動画活用とストーリーズの使い方

動画活用の現状

動画の使い方については難しいところです

数年前までは、レシピやコスメの動画が流行って、今でも一般ユーザーがコスメの色を見せたり、ダイエットで筋トレ方法を見せたりする目的で動画を使っています。

ただ、現状はインスタで動画が伸びている領域はレシピぐらいのもので、他にめぼしい領域はありません。動画を見るならユーチューブの方が面白いですし、インスタでは通信制限があるのもネックになっています。とはいえ、通信制限が今後外れたら、動画がもっと増える可能性はあると思います。

動画は通常のフィードではなく、ストーリーズで盛んに使われています。中にはフィードは一切見ずに、ストーリーズだけを見る人もいます。動画の活用という点では、当面はストーリーズが中心になるでしょう。

ストーリーズの有効な活用法

最近は若者を中心に「インスタ映え」のハードルが敬遠され始め、より気楽なストーリーズに流れてきているという状況が見られます。

マーケティングにインスタを使う際、通常のフィードは主にフォロワーを増やすのに有効ですが、ストーリーズはフォロワーの熱量を上げるという点で優れています。

ストーリーズではコメント付けやすかったり、質問コーナーを設けたり、クイズやアンケートを行ったりと、ユーザーとコミュニケーションが取りやすい機能が多いからです。

たとえば、商品開発を行う際に、ストーリーズでアンケートを取ってユーザーの意見を聞きながら進めることもできます。商品を作っている最中にも、色やデザインはどちらが良いかといったことを、ライブ配信などを活用しながら行えるのが企業のメリットになります。

ダイレクトメール機能も付いているので、ヒヤリングも可能ですし、スワイプアップ機能を使って、PR記事やグーグルフォームのアンケート用紙などに飛んでもらうこともできます。

今や商品の3割以上がストーリーズから売れるという会社もあるほどです。見た人が衝動買いしやすいという点も、ストーリーズの特徴と言えるでしょう。

B to B領域に拡大の余地はあるのか

インスタは一般消費者向けの商品マーケティングに主に使われているイメージがありますが、B to B領域でも生かせるのでしょうか。

実際のところ、B to B領域の企業アカウントは少ないですが、広告で使用する会社は結構多いので、それなりにコンバージョン率が高いのではないかと推察できます。

とはいえ、今はビジネスパーソンがインスタを多用しているというわけではなく、若者から主婦層にユーザーが流れてきているフェーズに当たります。今後、ビジネスパーソンが増えるにつれ、B to B領域での活用が増える可能性はあります。

一方で、フェイスブックで見られたように、年配層が増えてくると若者が逃げていく可能性も考えられます。企業としては、このあたりのトレンドも注視していく必要があるでしょう。(談)

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