世界経済予測、かつての経済大国中国のGDPが米国を抜く
経済予測、特に中長期の経済予測はそれほど簡単なものではない。しかし、今から30〜40年後の世界経済がどのような状況になっているかを考えておくことは、今後の日本の経済政策、あるいは外交戦略を決めていくためには1つの重要なポイントだろう。中長期の予測は現状を過去のトレンドにしたがって伸ばしていくことを基本に人口の増加率などを参考につくられることが多い。さまざまな組織がそうした予測を行っているが、共通しているのは、人口大国である中国とインドが大きくそのGDPを拡大させていくというものである。
中国もインドも過去の歴史のほとんどの期間は世界のナンバーワン、ナンバー2の経済大国だった。アンガス・マディソンの推計によれば、1820年の時点で中国は世界のGDPの28・7%、インドは16・0%を占めていた(アンガス・マディソン著、金森久雄監訳『世界経済の成長史1820〜1992年』東洋経済新報社、2000年)。歴史をさらにさかのぼれば、両国のシェアは増大することになる。
プライスウォーターハウスが07年に発表した予測では中国のGDPは25〜30年の間に米国のそれを抜くとしている。『チャイナ・アズ・ナンバーワン』(東洋経済新報社、00年)の著者関志雄も26〜39年の間に中国のGDPが米国を抜くとしているので両者の予測はほぼ整合的なものだ。かつての経済大国中国がその姿を取り戻すということなのだ。中国に次ぐ経済大国だったインドも高い成長率を維持し続け、25〜30年の間には日本のGDPを凌駕するとされている。
人口の推移の予想と世界経済
プライスウォーターハウスの推計によると50年の中国のGDPは70兆7100億㌦と米国の38兆5140億㌦の倍近くになっているという。インドも50年にはGDPが37兆6680億㌦と米国に迫るナンバー3になっているとされている。50年の時点で、GDP総額の順位は中国、米国、インド、ブラジル、メキシコ、ロシア、インドネシア、日本の順で、日本は現在のナンバー3からナンバー8まで落ちている。BRICs諸国といわれるブラジル、ロシア、インド、中国が大きく台頭してくるという予測だ。中国とインドは今でも人口大国。現在、中国の人口は13億4千万人、インドは12億4千万人だ。中国の人口は13億7千万人前後で頭を打ち減少に転じるが、インドは増加し続け、50年には中国の人口は13億人弱、インドは17億人前後と予測されている。あと10年ほどでインドの人口は中国のそれを抜き、またGDPの成長率でもインドが中国を上回ってくるとの予想だ。ただ、インドの実質GDPは現状で中国の3分の1以下。高い成長率で中国を追うものの、50年では中国の2分の1強のGDPで世界第3位ということのようだ。
ただ中国とインドは人口大国。中産階級の増加とともにGDPの総額が増えるのは自然なことだ。1人当たりGDPで見ると50年の時点でもまだ米国がナンバーワン(プライスウォーターハウスの予測では9万1683㌦)、これに韓国、英国、ロシア、カナダ、フランスが続く。日本はブラジル、ドイツに次ぐナンバー9ということだ。1人当たりGDPでは中国とインドはまだまだ低く、中国は米国の2分の1強、インドは米国の4分の1以下だ。BRICsが台頭してくるもののまだまだ米国は世界一豊かな国ということのようだ。プライスウォーターハウスの予測では韓国の伸びが高い。30〜35年の間には韓国の1人当たりGDPが日本のそれを抜くと予測されている。
長期の予測はそれほど正確なものではない。しかも世界中で所得水準の格差は拡大している。米国は1人当たりGDPで見る限り豊かな国であり続けるのだが、先進国の中で一番格差が大きく、また格差拡大のペースも早い。米国のトップ1%のシェアは20%を超え、大恐慌の直前の水準とほぼ同じになっている。たしかに米国は豊かな国だが、格差の拡大は社会の安定にとっては大きな問題だろう。
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