新型コロナウイルスの蔓延に伴い、衛生に関する人々の意識はますます高くなった。しかし、咳やくしゃみによる飛沫感染は予防できても、スマートフォンやタブレット端末などを介した間接的な感染の防止については、有効な手段が今一つ分からないという人も多いのではないだろうか。そうした中、除菌だけでなく抗菌・抗ウイルスの機能を両立させたガラスコーティング剤「スマホマスク」が登場した。(取材・文=吉田浩)
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スマホに付着した間接的なウイルス感染リスクは深刻
今や日常生活に欠かせないスマートフォンだが、その表面は雑菌の巣窟ということが分かっている。原因は皮脂や汗のほか、電車のつり革、PCのキーボード、エレベーターのボタン、オフィスの電話など、人が無意識のうちに触れた様々なものの汚れが、手指を介してスマホに付着することにある。スマホ表面は雑菌が繁殖しやすく、ある研究によれば、その不潔度は便座の18倍以上との結果も出ている。
既に知られている除菌の方法としては、紫外線やアルコール、エタノールによる殺菌などがある。だが、どれも効果は一時的で、処置後に汚れた手でまたスマホに触ってしまえば元の木阿弥だ。何かに触れるたびに手洗いをしたり、小まめにスマホ表面を布でふき取ったりすれば良いかもしれないが、非常に面倒で続けるには限界があるだろう。
問題なのは、スマホが風邪やインフルエンザ、ノロ、新型コロナなどの各種ウイルスにとって絶好の繁殖環境になっていることだ。
最近では、タブレット端末を介して、新型コロナウイルスの院内感染が広がったというニュースが流れたが、いくら手洗いやマスク着用をしっかり行っても、汚れた電子機器を触った手で目、鼻、口に触れることで、感染リスクを大きく高めてしまうことになる。
ウイルスの繁殖を防ぐ「スマホマスク」の特徴とは
抗菌と抗ウイルス効果を両立
そうした中、除菌だけでなく抗菌・抗ウイルス効果があり、一度の処置で効果が長期的に持続するスマホ専用のガラスコーティング剤「スマホマスク」を開発したのがヤマモトホールディングスだ。同社の山本英明社長はこう語る。
「新型コロナ騒動の前からスマホ専用のガラスコーティングの研究開発を進めてきました。ガラスコーティング剤は世の中にたくさんありますが、抗菌と抗ウイルス効果を両立させた製品は他にありません」
山本氏の説明によれば、抗菌用と抗ウイルス用では異なる添加剤を使用するため配合が非常に難しいが、この課題をクリアしたことがポイントだという。抗菌効果についてはISO22196、抗ウイルス効果についてはISO21702による評価を元に、第三者機関である抗菌製品技術協議会(SIAA)から証明を取得済みだ。
長期間コーティング効果が持続
抗菌・抗ウイルス効果以外にも、耐衝撃性向上、耐腐食性能、はっ水性能、操作性向上、耐汚性能、美観向上など、さまざまな機能について公的機関からエビデンスを取得しているという。
スマホマスク使用後は、仮にウイルスが付着した手でスマホを触ってもコーティング効果によって繁殖が広がらない。使用法は、綺麗に汚れをふき取ったスマホの表面に液体を塗り、拭き取るだけというシンプルなもの。初心者でも10分程度で済み、一度使用すれば1年間は放っておいても大丈夫とのことだ。
粘り強い研究開発で生まれたスマホマスク
山本氏は、もともと建築資材に使う特殊塗料などの研究を5年前から手掛け、抗菌・抗ウイルスのコーティング剤については2年ほど前に着手した。効果についてのエビデンス取得が終わり、いよいよ販売というタイミングで新型コロナ騒動が起きた。この4月からネット通販をスタートし、既に5千個程度が売れているという。
自社の最大の強みは充実した研究開発体制だと自負している。東京都立産業技術研究センターや早稲田大学などと共同研究を行い、その成果を製品にフィードバックしている。既に金属やプラスチック、ゴルフクラブなどに使用可能な除菌剤と抗菌・抗ウイルス剤でも展開し、スマホマスクもその延長線上で開発された。
「新型コロナ騒動を受けて突然作った製品ではなく、長年の積み重ねあってのものです」と山本氏は語る。
新型コロナ騒動により、除菌商品の需要も今後ますます増えることが予想されるが、人々の不安が強まっている時期だけに、まがい物が出回ること可能性もある。そんな中、しっかりとした研究開発体制と実績を持ち、第三者機関の認証を受けているという点は、スマホマスクの大きな強みとなるだろう。