経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「おいしいコロッケを追求し 新しい食文化をつくりたい」―藤井幸大(サンマルコ食品常務取締役)

藤井幸大・サンマルコ

創業40周年を迎える北海道の冷凍食品メーカーのサンマルコ食品。常務取締役の藤井幸大さんは「コロッケ王子」としても活躍中です。年間2千個のコロッケを食べ、究極のファストフードとしてのおいしいコロッケを追求する藤井さんから、「コロッケ愛」を感じる取材となりました。

藤井幸大氏プロフィール

藤井幸大

(ふじい・こうだい)1981年札幌市生まれ。2010年米カリフォルニア州アカデミー・オブ・アート大学卒業。同年冷凍食品メーカーのサンマルコ食品入社。12年日本コロッケ協会設立。「コロッケ王子」としてコロッケのPRに努める。

「コロッケ王子」を名乗りおいしいコロッケをPR

佐藤 藤井さんはおじいさまが創業されたサンマルコ食品で、常務取締役として営業とマーケティングを統括されているそうですね。「コロッケ王子」の名でメディアにもご登場されていますが、このユニークな愛称の由来は?
藤井 当社では冷凍コロッケを作っており、友人から「ホテル王があるならコロッケ王もあるし、王位継承権第1位の立場ならコロッケ王子だよね」と言われたのがきっかけです。究極のフィンガーフードであるコロッケのおいしさの追求、PRや普及の一環でそう名乗っています。
佐藤 御社のコロッケはOEM供給も多いですよね。
藤井 はい。名前を挙げられないのが残念ですが、大手コンビニエンスストアやスーパー、ファストフード店、レストランにも卸しています。冷凍コロッケのシェアから考えると、国内に流通するコロッケの6~7個に1個は当社の商品になりますね。
佐藤 私も気づかないうちに御社のコロッケを食べているのでしょうね。先ほど「究極のフィンガーフード」とおっしゃいましたが、コロッケの魅力はどこにあるのでしょう?
藤井 自由度の高さですね。芋とパン粉で作るのがコロッケかと言えばそうでもない。クリームコロッケも焼きもろこしコロッケもある。丼、おにぎり、サンドイッチと並んで何でもできるのが魅力です。大正時代は三大洋食の一つとしてステーキよりも高価な食べ物でした。しかしその後は、肉屋の端材を使ったコロッケが出回り、品質低下や低価格化が進み過ぎてしまいました。
佐藤 テレビでも商店街の1個30円のコロッケなどをよく見ます。
藤井 あれは揚げたてがショーケースに並ぶからおいしそうに見えるだけ。私は本当においしいコロッケを追求し、コロッケのマーケットを広げていきたい。トンカツやラーメンのように、海外から入ってきた食べ物を日本で独自に発展させて、もう一度海外に送り出したいですね。
佐藤 日本の良さを付加価値にするわけですね。その点、日本のご当地コロッケはいかがですか?
藤井 実はあれも良くないんです。町興しなどの名目で、素人が名産品を無理やりコロッケにして販売するケースが大半なので……。それを観光客が食べて、悲しいことにコロッケ自体がおいしくないと思ってしまう。そこで私は地方の自治体と連携し、ご当地コロッケの開発や技術指導もしています。マーケットを広げる試みです。
佐藤 本当に良いものを届けたい、という王子の心意気を感じます。
藤井 冷凍食品の中でコロッケは生産重量1位です。でも食べる頻度は5~6週間に1度しかない。おいしいコロッケを追求して、みんなが月2回食べるだけでパイは倍になります。私も外食時には必ず注文しますし、年間2千個は食べますよ。

サンマルコ食品のコロッケ店「COROMORE(コロモア)」

11月1日に東京・渋谷にオープンしたサンマルコ食品のコロッケ店「COROMORE(コロモア)」(渋谷スクランブルスクエアB2「TOKYU Foodshow EDGE」内)

北海道の新しい食文化が日本の新しい魅力をつくる

佐藤 「コロッケ愛」を感じます。
藤井 愛にあふれていますよ。うちの家計の種でもあったコロッケは親同然。食べすぎて嫌いになったコロッケ思春期もありましたが(笑)、今は親孝行中です。
佐藤 面白い(笑)。「揚げ物は美容のために食べない」という女性も多いですが、偏食すると肌も荒れますしね。藤井さんは以前コロッケはダイエットにもいいとおっしゃってましたね。
藤井 はい。コロッケは脂質も糖質も食物繊維もビタミンも摂れるバランスの良い、ダイエットの補食として最適な食べ物です。ダイエットというと、基礎代謝を上げて摂取カロリーを減らす方法を思い浮かべますが、やりすぎると糖分や血流が不足して腸内環境が悪化し代謝が落ちる。その点、ジャガイモは食物繊維の塊なので腸を動かします。偏った食事は健康を害します。コロッケに対する偏見を変えていきたいですね。
佐藤 それも役目なんですね。北海道でもコロッケは人気なんですか?
藤井 それが北海道はジャガイモが特産品なのに、コロッケ消費量は全国最下位なんです。海鮮丼や豚丼もそうですが、素材の良さから、じゃがバターなどそのまま食べる食文化が根付いていて。もっとコロッケの自由度を楽しんでほしいですね。
佐藤 そのために、北海道の地場企業として今後の目標は?
藤井 コロッケを軸に北海道の新しい食文化をつくることです。それが北海道経済の発展につながり、さらに日本の食文化として根付けば、日本の魅力として海外に伝わります。そのころには私もコロッケ王(社長)になっていると思います。ただ、現在の王である父親が、一つだけ難しい条件を課してくるんですよ……。
佐藤 どんな条件ですか?
藤井 結婚です。社長になるなら、結婚しろと。世の中に素敵な女性はたくさんいますが、やはりコロッケを心底愛してくれる人でないと……。
佐藤 そこが一番のハードルですか(笑)。コロッケ王として活躍する日を心待ちにしていますね。

藤井幸大

おいしいコロッケごちそうさまでした!(佐藤)

聞き手&似顔絵=佐藤有美
構成=大澤義幸 photo=市川文雄