近い将来、景気の変動期が必ず訪れると予想していたのがパワーエッジの塩原正也代表。コロナ禍という想定外の要因にも動じることなく、次なるジャンプアップに向けて新たな一手を打ち出している。
コロナ禍の景気変動期に人材採用と育成を強化
「想定していた要因とは違いますが景気変動期に入ったことをきっかけに、筋肉体質化から拡大路線へシフトチェンジします。そこで新卒と中途の採用を再開しました」
2021年1月現在の社員数は180人だが、25年には400人体制を目指すという。IT関連では人材不足が続いており、コロナ禍の中、多くの分野でリモートワークが導入され始め、ITリテラシーが高い人材に対するニーズはさらに大きくなっている。このような環境下では育成力の優劣が企業業績に直結することになる。パワーエッジは独自カリキュラムによる育成に定評があるだけでなく、受託案件が豊富にあることで実務経験を早めに積むことができるという特長がある。
「研修漬けではモチベーションが続きません。また、多くの企業は社員を早くマネタイズしたがるために、本人の希望と異なっても、その時のトレンド技術を学ばせる傾向があります。当社はお客さまも技術も常に全方位で、たとえ右肩下がりの業界でも、注目度が低くなった技術でも継続させるという方針です。短期的には選択と集中なのでしょうが、コロナのように何が起きるか予測不能な現代では多様性こそ最大のリスクヘッジになります。一人一人の希望や資質を冷静に判断した上で育成に取り組むことができるのは、大きな強みだと考えています」
新ベルト地帯を組成しグループの強みを生かす
20年は浜松、長野、埼玉など地方企業のM&Aも積極的に進めた。今後も太平洋に沿って静岡、沼津、また北陸新幹線に沿って金沢、富山、福井へとグループ拡大を構想中だ。塩原代表は、既存の名古屋、京都、兵庫を結んだベルト地帯を完成させることを考えている。その狙いの1つがDX(デジタル・トランスフォーメーション)だという。
「何も全てが最先端のデジタル化というわけではありません。業界や地域によっては、例えば注文書をいまだにファクスに頼っているケースもあります」
旧来のやり方を変える、これは意識改革こそ伴うが技術的なハードルは決して高くはない。組成したベルト地帯の顧客に対して、グループ全体でソリューションを提供して課題解決を図るというものだ。
地方への進出によって、グループ全体での技術者拡充という成果も得られる。地方には高レベルで最新技術を駆使する案件が少ないため、技術者のスキルアップ要求に十分に応えることができないという実情があるが、テレワークは、遠隔地にいても仕事ができることを明らかにしてしまった。つまり、地方に居ながら東京の案件を手掛けることが十分に可能なのである。
「本社が受注した東京の案件に対して、グループ全体の技術者の中から最も適正なチームを構成して取り組むことができます。これは地方在住の技術者にはモチベーションアップにつながりますし、東京の技術者不足という課題解決にもなります。さらに、地方に居ながら東京の最新案件を手掛けることができるのは、各拠点の採用においては大きなプレゼンスとなるでしょう」
IT業界はコロナ禍の中で好調な業種の1つである。景気が回復に向かえば、さらに人材が不足することも予想される。東京に集中しがちな案件をグループ全体でカバーするとともに、地方で新たな案件を創出するという戦略は、アフターコロナで真価を発揮しそうだ。
「20年は、これまでM&Aでグループに参画した企業の顧客やノウハウなどの情報共有が大きく進みました。リソースが増えた分、対応できる顧客課題も増え、新しいビジネスも次々と立ち上がっています」
塩原代表がハブとなって事業化を進め、スキームが固まったら現場に委ねるという手法は従来通りだが、今後はグループ会社のトップに社員を登用していくという。
「よく、最近の若者は欲がないと言われますが、企業が効率だけを追い求め縮小均衡する中ではポストは減る一方で、モチベーションが上がるはずありません。ポストさえあればやる気も欲も出るはずです」
現在は本社の執行役員クラスがグループ会社の取締役を兼務しているが、彼らがトップに登用されることで本社の執行役員のポストが空く。それに伴い玉突き式に全ての階層でポストが生まれるのだ。
「地方企業のM&Aによるベルト地帯の組成は、DX推進による地方顧客の創出、東京の技術者不足への対応、社員のモチベーションアップと、成長する上で必要な要素の全てを包含しています。21年以降もこの戦略を推し進め、大きく飛躍したいと思います」
会社概要 設立 2000年10月 資本金 5,700万円 売上高 19億2,000万円 所在地 東京都豊島区 従業員数 180人 事業内容 パッケージソフト開発販売、システム開発、ネットワークソリューション、ITサポート、スマートフォンアプリ開発 https://www.poweredge.co.jp/ |
【AD】