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稼いでいるのはどっち?ハーバード大学vs.スタンフォード大学

ハーバード大学はアメリカ合衆国東海岸のマサチューセッツ州ケンブリッジに、スタンフォード大学は西海岸のカリフォルニア州スタンフォードに所在地を置く、世界的に有名なトップ大学です。

両大学はともにアメリカを代表する名門私立校ですが、その歴史はハーバード大学の方が250年ほど長く、伝統校と言えます。また、学生数もハーバード大学の方が6千万人ほど多く、スタンフォード大学に比べて少々規模感が大きくなっています。一方、スタンフォード大学はシリコンバレーの発展に寄与してきた歴史があり、近年のテックブームの火付け役として世界的に高く評価されています。

2019年度のTHE(Times Higher Education)世界大学ランキングでは、3位にスタンフォード大学、6位にハーバード大学がランクインしており、どちらも世界的名門校として鎬を削っています。では、この両校を「経営」の視点から比較すると何が見えてくるでしょうか?両大学の決算書を比較して、どちらがどのように稼いでいるのか、解き明かして見たいと思います。

ハーバード大学とスタンフォード大学の基本情報

ハーバード大学

設立:1636年

学生数:2.2万人

所在地:MA ケンブリッジ

キャンパス:20平方キロメートル

スタンフォード大学

設立:1891年

学生数:1.6万人

所在地:CA スタンフォード

キャンパス:33平方キロメートル

ハーバードとスタンフォードの収益比較

稼いでいるのはスタンフォード大学

両大学共に事業活動収入は増加傾向にありますが、稼いでいるのは圧倒的にスタンフォード大学といえます。

さらに、スタンフォード大学においてはその収入額の成長スピードにも注目すべきでしょう。FY2018には、同大学の事業活動収入はハーバード大学の2倍を超え、FY2014の1.4倍ほどの113億ドルに達しています。

113億ドルというとおよそ1.2~1.3兆円程度ですから、日本企業の売上高と比較すると、サントリーや日本ハムと同程度に相当します。一方、ハーバードの収入規模は、日本企業でいうとゼンショーやニトリの売上高と同程度であるようです。

利益の大きいスタンフォード大学、追いかけるハーバード大学

続いて、事業活動収支差額を見てみましょう。こちらもスタンフォード大学がハーバード大学を突き放して大きな利益を上げています。

他方、ハーバード大学の事業活動収支差額が年々上昇を続けていることにも着目すべきでしょう。FY2014に2千万ドル程であった同項目はFY2018には2億ドルに迫るほどに急成長しています。とは言え、その絶対額は未だスタンフォード大学の半分にも達しておらず、収益に関しては大きく水をあけられている状況です。

学生納付金に頼るハーバード大学

ここからは各大学の収入源の詳細について見ていきたいと思います。まずは大学の主要財源として、学生が払う授業料等による学生納付金について見てみましょう。

近年5年間、事業収入が圧倒的に大きいのはスタンフォード大学であったのに対し、学生納付金による収入はハーバード大学が大きく上回っています。これを収入全体における比率で見ると、FY2018の事業活動収入に占める学生納付金の割合は、スタンフォード大学の5.6 %に対し、ハーバード大学ではおよそ21.5 %に相当しています。経営の視点から学生への依存が大きいのはハーバード大学であるようです。

潤沢な補助金を得ているのはスタンフォード大学

大学は教育機関であると共に研究機関でもあるため、研究資金等に関する政府等からの補助金・助成金収入も大きな財源の一つとなっています。

スタンフォード大学の獲得する補助金・助成金額は、ハーバード大学を大きく上回るのみならず年々増加傾向にあり、FY2018には16.6億ドルにまで拡大しました。しかし、同年度の事業活動収入額(113億ドル)と比較すると割合としては14.6 %で、ハーバード大学の17.5 %よりも低くなっています。

寄付金を多く集めているのはハーバード大学

寄付金収入額はハーバード大学に軍配が上がります。FY2018には、スタンフォード大学の2.8億ドルに対して、ハーバード大学は事業収入の9 %ほどに相当する4.7億ドル程度の寄付金を集めています。スタンフォード大学も近年は寄付金収入の増加が見られますが、比較的安定して4億ドル以上の寄付金を獲得しているハーバード大学に追いつくのはまだ先のようです。

収入の差の決定打は「医療収入」

実は、スタンフォード大学の事業収入のうち半分強を占めるのが医療サービスによる収入でした(FY2018)。ハーバード大学もメディカルスクールを有し、マサチューセッツ総合病院の経営を含めその他の病院とも提携しているのですが、スタンフォード大学のように附属病院は持っていないため、決算書の事業収入に医療サービス収入は含まれず、事業活動収入の規模はスタンフォード大学に比べかなり小さくなっているようです。

両大学で増える投資収入

実は、ハーバード、スタンフォード両大学とも、巨額の基金を用いて投資による収入を得ています。

投資収入額はハーバード大学の方が多いですが、両大学とも増加傾向にあり、FY2018にはハーバード大で20億ドル、スタンフォード大で15億ドルもの利益をあげています。これはFY2018の事業収入全体(ハーバード大:52億ドル、スタンフォード大:113億ドル)と比較しても無視できない割合で、ハーバード大学では実に収入の4割近くにまで上っており、大学とは言えもはや実質的に投資ファンド状態と言えるでしょう。

人件費はハーバードが4割、スタンフォードが6割

ここで、事業支出についても両大学を比較してみました。まず言えることは、スタンフォード大学はハーバード大学に比べ、事業支出における人件費の割合が高いことでしょう。

FY2018で比較しても、人件費が4割程度のハーバードに対してスタンフォードの人件費は6割近くに迫っています。さらに、支出総額、人件費ともに緩やかに増加を続けるハーバード大学に比べ、スタンフォードの人件費は全体の支出額とともに急激に増加しています。収入額の増加と合わせて見ても、近年規模を拡大しているのはスタンフォード大学と言えそうです。

ハーバードとスタンフォードの資産・負債の状況

バランスシートの規模は同程度

事業収入や支出の構成に大きな差が見られたハーバード大学とスタンフォード大学ですが、バランスシートの構成は両大学とも類似しており、その規模も550億ドル前後とほぼ同規模です。

キャッシュを持っているのはスタンフォード

経営においてはキャッシュフローも重要な要素ですが、両大学はどれだけのキャッシュを保有しているのでしょうか?

実はスタンフォード大学とハーバード大学では現金等残高に決定的な差があります。スタンフォード大学の保有する現金等残高はハーバード大学のそれに比べて一桁多いのです。大学が「倒産」することは考えにくいですが、経営の視点からはスタンフォード大学の方が遥かに余裕のあることは自明のようです。

まとめ

さて、ここまでハーバード大学とスタンフォード大学の決算書を比較して見てきましたが、最後にこれらを早稲田大学や慶應義塾大学等の日本の私立大学と比較すると何が見えてくるのでしょうか?

実は、生徒数など大学の規模自体に絶大な差がある訳ではない(むしろハーバード、スタンフォードの生徒数は早稲田、慶応に比べ少ない)のに対し、事業収入にしてもバランスシートにしても、ハーバード大学・スタンフォード大学は桁違いに大きいのです。具体的には、日本の私立大学の基金規模が数百億円規模(国立大学だと百億円規模)であるのに対し、両大学は数兆円規模の基金を有しており、その差は大きなものであると言えます。

さらに、その巨額の基金を運用することによって、大きな投資利益を得ていることも特筆すべき点でしょう。同じ教育機関ではあるものの、その経営規模や形態は日本の大学と大きく異なっているようです。