経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

コロナ禍を逆手に取りブランドの可能性を広げ新たな業態と展開に挑戦―エスワイフード


居酒屋を中心に80店舗以上の飲食店を展開するエスワイフード。会長の急逝という困難を乗り越えた今、居酒屋クライシスともいえるコロナ禍に見舞われている。「人を大切にしたチーム力」を重視する山本久美代表取締役に、この難局を打破する次のステップについて伺った。

エスワイフード代表取締役・山本久美
エスワイフード代表取締役 山本久美(やまもと・くみ)

 1981年に名古屋・新栄に「串かつ・やきとり やまちゃん」を創業してから今年で40周年を迎えた「世界の山ちゃん」。辛さと風味が際立つ「幻のコショウ」がヤミツキになる「幻の手羽先」を武器に、東海、関東、関西、そして海外へも進出し、黒字経営を実現してきた。

 2020年春から新型コロナが流行。居酒屋が大打撃を受ける中、ビールにぴったりの看板メニューを掲げる山ちゃんも例外ではなかった。「一時的に売り上げが約95%減少した」と振り返る。「『頑張ってね』と声をかけてくれるリテーバー(手羽先を求めてリピートしてくれるファン)がありがたかった」と感謝しつつ、営業と休業を繰り返す状態に、「従業員の心身のケアや、協力金の出ない取引先のことが気掛かり」と話す。

 これまでの最大のピンチといえば、5年前の創業者・山本重雄会長の急死だった。専業主婦だった久美氏は、夫の重雄氏との会話や社員との交流から会社のことを理解していたが、「経営はまったくの素人で、右も左も分からなかった」と話す。周囲に跡を継ぐことを促され、その重責に悩みながらも、重雄氏の築き上げたアットホームな社風を引き継ぐ決断をした。「一緒にやりましょう」と社員一丸となって取り組んだことが、「力を合わせればできる」という主体的な成功体験になり、会社のモチベーションの底上げになったという。

 「山ちゃんの伝統を守るのが使命」としながら、リスクの分散を念頭に「社員の夢」を叶える場として新業態も展開する。このコロナ禍でも干物とおばんざいの店やフレンチトースト専門店を開業した。最近は視点を変えて「店舗を持たない方法」を広げたいとも話す。

 スーパーで購入できるレンジ対応の冷凍食品「幻の手羽先」のほか、他業種とのコラボ、イベントでのキッチンカー販売など、成熟した山ちゃんブランドの横展開だ。居酒屋の形態ではなかった、新たなお客さまとの出会いの機会を増やしていく作戦だ。

会社概要
設立 1985年4月
資本金 4,900万円
売上高 81億円(2019年8月期決算)
所在地 愛知県名古屋市中区
従業員数 約995人(正社員170人、アルバイト約825人)
事業内容 飲食店(国内、海外)経営、FC事業、通販事業
https://www.yamachan.co.jp