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本物にこだわった日本のお菓子を100カ国以上に届け、アジアの伝統を引き継ぐ米国企業「Bokksu」

記事作成=hackjpn

日本の料理やスイーツ、お菓子は海外でますます需要が高まっているが、コロナがまだ世界を揺るがしているため、ほとんどの人が日本に旅行できず、桜や夏祭りといった文化に触れる機会が減っている。

一方、多くのアジア系eグローサリープラットフォームは主にアジア人によって利用されているが、最近ではアジア料理についてもっと知りたいと思っている非アジア人が増加しており、その市場が拡大してきている。

そして現在、全国配送を通じて幅広いファンに本物のアジアの商品と体験を届けたことで、約25億円の資金調達を行った米国企業が注目を浴びている。

日本の伝統を季節と共に箱で届ける

2016年に設立されたBokksuは、日本のお菓子やお茶を提供するサブスクリプションデリバリーサービスを提供している。全国のスナックメーカーと提携して、地域の特産品から最新のスナックトレンドまで、季節のテーマごとに厳選された日本のあらゆるお菓子を提供している。

日本から発送される各ボックスには、楽しい文化をテーマにした20〜24種類の日本のスナック、キャンディー、お茶のほか、各製品の起源、味、アレルゲンについて詳しく説明した16ページ以上のカルチャーガイドマガジンを届けている。

「Seasons of Japan」シリーズでは、箱の色も日本の季節に合わせてデザインされている。たとえば、桜の季節には期間限定のピンクの箱の中に濃厚でしっとりとした桜のケーキ、手作りの桜のキャンディー、イチゴのクレープなどが入ってる。

彼らの商品のほとんどは、東京のコンビニエンスストアで手に入るようなものではなく、広島近郊でしか栽培されていないスダチや、スーパードライビールとよく合う海藻天ぷら等も販売している。東京のドン・キホーテや東急ハンズを訪れたような、わくわくする商品を目指しているという。

毎月厳選されたスナックサブスクリプションボックスの他に、オンデマンドでスナックを販売するeコマースマーケットプレイスも提供している。同社は100年以上の歴史を持つ日本全国のスナックメーカーと直接提携し、職人技でつくられたスナックと豊かな物語の両方を世界中の人々に届けている。これにより、地域のコミュニティを支えながら、伝統的な工芸品、文化、歴史を世界に広めることができるとしている。

新しい味わいだけでなく、歴史と職人技に富んだ文化とつながる機会を与え、日本で何十年も生産しているスナックメーカーのストーリーを伝えることにこだわっている点が競合他社と異なる部分である。

Bokksu
画像:Bokksuのウェブサイトより(https://www.bokksu.com/)


日本でしか手に入らないものを世界に

楽天とGoogleで働いた経験のあるBokksuの創設者兼CEOであるDanny Taing氏は、以前日本に数年間住んでおり、ニューヨークに戻ったときに日本のスナック食品をスーツケースに入れて友達とシェアしてみると、アメリカのどこにも同じおやつが見つからないことに気づいたという。

地元の食材を使った、または海外では販売していない小さな家族経営の店で作られた日本の伝統的なお菓子にアクセスしたい人がたくさんおり、そのニーズに応えるべく創業したのだという。

日本のお菓子は形、味、色、質感にさまざまな種類があり、季節や地域に基づいたユニークなフレーバーも多く取り入れていることから、ダニー氏はこの冒険的な日本の味を世界に届けたいと語っている。

最初は個人的にメーカーに連絡して、すべてのサンプルを試した後、ダニー氏が厳選したものを届けていたが、今日では全国のメーカーとの関係を育み、共にスナックサンプルを味わってチーム全員が愛を持てる商品のみを届けているのだという。

ダニー氏が特にこれまでに感動したお菓子は、創業100年の京都の飴屋がつくった大文字の飴だという。長年にわたって顧客に愛されてきた高品質の飴を手作りすることで、伝統を着実に継続させるという彼らの信念に魅了された。こうした考え方は、一般的なアメリカのスタートアップにはなく、新鮮だったからだ。

Danny Taing
Danny Taing氏

日本の小規模な家族経営の企業はeコマースを理解しておらず、英語も話せない場合が多いが、彼ら職人による食品に対する国際的な需要は、過去数十年にわたって急激に上昇している。同社のサブスクは月額49.95ドル(約5690円)で、米国をはじめとするほとんどの国に送料無料で届けられる。3カ月プランは月44.95ドル(約5120円)、6カ月プランは月42.95ドル(約4890円)、12カ月プランは月39.95ドル(約4550円)となっている。

同社は1月25日、評価額1億ドル(約114億円)での2200万ドル(約25億円)のシリーズAを発表した。このラウンドはValor Siren Venturesがリードし、Company Ventures、St. Cousair、World Innovation Lab(WiL)、Headline Asia、Gaingelsが参加している。

短期間のうちに本物かつ目的志向のブランドを構築し、厳選された商品とグルメ体験を日本から世界へ提供する彼らの成功は、今後のD2C食料品プラットフォームを新たに構築するであろう。