経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

新社屋を拠点に提案力強化 多様化するオフィス需要に応え顧客企業の価値向上へ 髙松建設

高松建設 新ビル外観

リモートワークの普及などで従来のオフィス機能を見直す動きがある一方、魅力あるオフィスを企業価値向上につなげたいというニーズが高まっている。そうした中、土地の有効活用から始まり、デザイン性、環境面への配慮、従業員の働きやすさなどの観点から、顧客への提案を行っているのが髙松建設だ。今年6月に竣工した髙松コンストラクショングループ東京本社ビルをモデルとして、強みである企画・提案力にさらに磨きをかけていく方針だ。(雑誌『経済界』2023年10月号より)

高松建設 高橋健一 営業第八本部本部長
高松建設 松山和彦 設計本部部長
高松建設 松山和彦 設計本部部長
高松建設 高橋健一 営業第八本部本部長

ハードとソフトの両面からオフィスの魅力を高める

高松建設 新ビル外観
高松建設 新ビル外観

 企業が所有する不動産を有効活用して価値を生み出すCRE(Corporate Real Estate)戦略の企画・提案を得意とする髙松建設。最近増えているのが、本社機能の集約や工場・倉庫の移転などに関連する案件で、特にオフィス需要に関しては新たな傾向が出てきているという。設計本部部長の松山和彦氏はこう語る。

 「以前は建物の耐震性や機能性などが提案のメインでしたが、今やそれは当たり前になっています。それらに加えてSDGsにつながる環境面の配慮や、従業員の方々の働きやすさなども打ち出していかなければ、顧客企業やその株主からの理解が得られにくくなっています」

 新型コロナ禍に伴うリモートワークの普及などを経て、オフィスに対する考え方がこれまでとは大きく変わってきた。機能縮小に向かう流れもある中、従業員や顧客などが集まる拠点としての重要性を見直す風潮も強くなっている。ハード、ソフトの両面でオフィスの魅力を高め、企業価値向上につなげようとするもので、人材確保の観点からも価値観のアップデートが必須となっている。

 「特に若い方々には、『こんなオフィスで働きたい』と思ってもらえなければ来てもらえません。ハード以外のソフト面の提案を強化していかないと顧客に響かないと感じています」と、松山氏は語る。

 そんな中、髙松建設では東京本社ビルを、顧客に対するさまざまな提案の拠点として活用していく考えだ。移転計画は創業100周年を迎えた2017年を機に進み、同社と青木あすなろ建設の両グループおよび関連会社から約1300人を集約。新社屋は美しい流線形の外観や高い環境性能、働き方改革に対応した多様性などが特徴となっている。

日本初の新技術(CCF)導入とフリーアドレスの採用

高松建設 レセプションルーム_18階
最上階の18階には来客スペースやオープンスペースを設け、多目的な利用が可能だ

 外観は「ガラス張りで洗練されたデザイン」を当初から掲げ、CCF(クローズド・キャビティ・ファサード)と呼ばれるシステムを日本で初めて採用した。熱性能と遮音性に優れた密閉型のダブルスキンカーテンウォールとなっており、2枚のガラスの幅が狭いため室内の有効活用面積を広く取れるのも利点だ。

 環境への負荷を減らすために、照明や空調などの運用面も重視している。ブラインドは自然光の強さによって自動制御で開閉する仕組みになっている他、自然光が入る場所では照明の出力が落ち、暗い場所では出力が上がるDALI(Digital Addressable Lighting Interface)システムを導入。シーンに応じた調光制御を全フロアーで実施している。

 ペーパーレス、フリーアドレス化など、働き方改革を意識したオフィスにしているのも特徴だ。本社移転を機に、髙松建設ではペーパーレス化を推進。「移転後2週間で早くも効果が出始めている」と松山氏は話す。髙松孝年社長の号令で始まったフリーアドレス化も、試行錯誤しながら進めているという。

 最上階となる18階には、これらの取り組みについて実際に顧客が目にして、実感できるオープンスペースが設けられている。同スペースはグループ会社の社員間の交流にも使える他、セミナールームなどとしての活用も可能だ。

 営業第八本部本部長の高橋健一氏は「お客さまに提案する際、この場所を一通りお見せすることで納得感が増すと思いますし、実際に取り入れるかどうかは別としてCCFなどを紹介できれば、環境配慮へのご理解が深まると考えています」と語る。

顧客の状況を把握し付加価値をもたらす提案を

高松建設 営業フロア
働き方改革を意識したフリーアドレスを採用

 建築と運用面だけでなく、顧客企業の資産状況や会社全体の売り上げ、社員のモチベーション向上まで考慮して、不動産活用の最適解を導き出せるのが髙松建設の強みだ。所有する不動産を有効活用することで、多くの顧客にとって悩みどころとなっている投資負担を減らしながら、理想のオフィスを実現していく。分散している拠点を集約するようなケースでは、移転後の土地を売却するのか、あるいは貸しオフィスやマンションなどに転用するのかといった点まで考慮して全体計画を提案する。機能集約や事業拡大などに伴う新たな土地の取得に関しても、地域に根差して活動する営業担当者ならではの独自情報を活用することができる。

 「ハード面の強さだけで差別化は難しいですが、われわれには100年以上の歴史の中で5千棟を超える建築を手掛けた実績と信用があります。他社と比べて技術者が多いのも特徴で、全体で約400人の設計者がいますし、建築の現場経験がある営業担当者も多い。土地情報なども含めて、初期段階から設計と営業で共有する体制を取っているので、スピード感を持った提案が可能です」(高橋氏)。

 たとえば、大阪に本社を持つ顧客企業が東京に本社機能を移転する際、研修所や社宅を集約して、国内の責任者も集まれるようにしたところ、社員の士気が上がり業績向上につながったケースがある。また、都内の一等地にビルを保有していたある中小企業は、オフィス再編成で余った階を賃貸マンションとして活用し、コロナ禍で業績が落ち込んだ際に賃料収入で売り上げを補填できたという。

 「施主の要望通りに作るのではなく、どうすれば一番良いのかを考えて付加価値をどれだけもたらせるかが、われわれにとっての永遠の課題です」と松山氏は語る。都心部のオフィス需要増加が予想される中、髙松建設のノウハウが生きる場面が増えていきそうだ。

髙松コンストラクショングループ
東京本社ビル
東京都港区芝4丁目8番2号
敷地面積:1,529.49 m²
延床面積:16,488.64 m²
階  数:地上18階、地下1階
構  造:鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造