経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

提言 名古屋商工会議所が見る中部経済の現状、展望提言 名古屋商工会議所 嶋尾 正

名古屋商工会議所 会頭 嶋尾 正

「未来の名古屋を拓く力~支える・繋がる・広がる~」をキーワードに、地域の持続的な成長に向けた取り組みに注力している名古屋商工会議所。昨年11月に会頭に就任した嶋尾正氏が中部経済の現状と今後を見通す。(雑誌『経済界』2023年11月号 第2特集「リブート中部経済」より)

名古屋商工会議所 会頭 嶋尾 正
名古屋商工会議所 会頭 嶋尾 正
しまお・ただし――1950年福岡県生まれ。73年早稲田大学第一商学部卒業、大同製鋼(現大同特殊鋼)入社。2010年代表取締役社長、16年より代表取締役会長。22年より相談役。17年中部経済同友会代表幹事。22年より名古屋商工会議所会頭。

 当地はものづくり産業の強い国際競争力により、日本経済を牽引してきましたが、新型コロナや半導体不足の影響も少なからず受けました。

 現在は非製造業においてもサービス業や観光施設にも人の動きが戻りつつありますが、原材料・エネルギー価格高騰などにより、中小・小規模事業者の経営環境は依然厳しい状況にあります。

 そうした中、地域経済の根幹をなす中小企業を「支える」ことが名古屋商工会議所の使命です。4~6月期の定期景況調査では、中小企業の7割超が価格転嫁を進めているとの結果が出ましたが、物価上昇分の8割以上を価格転嫁しているのは約1割です。適正な価格転嫁に向け、行政に事業者の声を伝えていきます。

 当面の課題は生産性向上とデジタルシフトです。物価高騰や人手不足に伴う人件費高騰、政府の無利子・無担保融資の返済などにより厳しい経営環境に置かれた中小企業が、生産性向上や事業再構築、DX化などを通じて、経営資源を最大限活用できるよう支援していきます。

 国内外で人と人が対面により新たに「繋がる」事業も展開していきます。7月に欧州の経済交流ミッションを派遣し、高付加価値製品を生み出す企業や名古屋の街づくりに参考になる地区の視察を行いました。2005年開催の「愛知万博」の理念(環境、科学技術、国際交流)の継承事業として、06年から異業種交流展示会「メッセナゴヤ」を毎年開催し、業種や業態を超え、幅広い地域からの出展者と来場者相互の販路拡大や人脈形成を図っています。

 中部経済のさらなる発展のためには、次世代産業や関連ビジネスが次々と生まれる環境整備と、都市の魅力向上により実現可能な領域が「広がる」ことが重要です。

 日本の航空機部品生産額等の約5割を占める航空宇宙産業の一大拠点として、他産業へ技術が波及する重要な産業は成長が期待されています。名古屋商工会議所は、14年から航空宇宙分野の国際展示商談会で実績のある「エアロマート」を仏BCIエアロスペース社と共催し、国内外の商談機会の創出やネットワークの構築機会を提供しています。

 都市の魅力においては、「ジブリパーク」の第2期エリア開業を控え、観光コンテンツの目玉として期待しています。足元ではラグジュアリー・ホテルが続々とオープンするなど、「行ってみたい」と思わせる受け皿が整ってきています。

 今後も官民一体で当地の魅力を発信し、インバウンドを含む、多くの人々が訪れる都市を目指します。