(雑誌『経済界』2024年11月号「リゲイン中部経済」特集より)
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鈴与グループ 鈴木与平代表のプロフィール
―― 鈴与は静岡県に密着した企業経営を続けています。
鈴木 鈴与の設立は1801年。廻船問屋としてスタートしました。以来、静岡県とともに成長してきました。今では事業領域は、物流だけでなく、エネルギーや食品、情報、教育、航空へと広がっています。
―― 静岡県にとっては不可欠ながら、収益的には難しい事業もあります。そういう分野への進出の基準は何ですか。
鈴木 社会的に価値があるかどうかというのが一番です。地元のお役に立てるかどうか。
例えば鈴与グループの中に静岡理工科大学があります。なぜ大学をつくったかというと、静岡県はモノづくり県にもかかわらず、理工系の大学が静岡大学工学部しかなかった。そして卒業生の多くが東京の大企業に就職していた。ですから地元企業の多くが技術者採用に困っていました。だったら技術者を供給して地元のお役にたとう。そう考えて1991年に設立、私が初代理事長を務めました。ご存じのように、少子化もあり私学経営の環境は非常に厳しいものがあります。それでもやる価値があると信じています。
―― 2008年にはフジドリームエアラインズ(FDA)を設立して航空事業にも進出しました。
鈴木 FDAを立ち上げたのは地方創生への思いからです。09年に静岡空港ができました。この空港を使って地方と地方を結んでいく。地方は人口減少に悩んでいます。かといって定住人口を増やすことは難しい。だけど交流人口を増やすことは比較的簡単です。地方の空港を直接結べば交流人口が増え、消費も経済も活性化する。その考えに基づき、リージョナル航空会社であるFDAを設立しました。
―― なぜそこまで地元にこだわるのですか。
鈴木 鈴与は200年以上にわたり、静岡県に育てられて今日にいたっています。地元に根を張ることで事業全体が成り立っています。これを忘れてはいけません。
鈴与グループは、Jリーグの清水エスパルスもサポートしています。現在J2のため、収益的には厳しいところもあります。それでも観客動員数はJ2の中でトップですし、これにより静岡市民は一体感を持つことができています。
このように、われわれは市民や県民の接点を増やすことに力を注いでいます。それこそが鈴与グループの原点です。