2025年4月から開催される大阪・関西万博。161カ国、9つの国際機関が参加する国際イベントにもかかわらず、国内はやや盛り上がりに欠ける。現地を視察した国内外の要人の感嘆の声を市井の人々へ届けられるか。関西経済同友会の宮部代表幹事が語る。
グッドニュースを全国へ。関西から情報を発信する
昨夏、コロナ禍による資材や労働力不足を背景に、大阪・関西万博の会場建設スケジュールが遅れる見込みとの知らせが出た。世界が注目する一大イベントなだけに、暗雲は瞬く間に列島を覆い、不安の声が各所で上がった。その実情はどうか。
「準備にさまざまな課題があったのは事実です。しかし、岸田前首相の大号令の下、経産省を中心にバックアップ体制が整いました。現在は会場建設をはじめ良い方向に進んでおり、視察で訪れた各国の要人や国内政財界の方々も会場を見て感嘆の声を上げられています」
そう話すのは、関西経済同友会の代表幹事を務めるパナソニックホールディングス副社長の宮部義幸氏。博覧会協会としても協力体制が整ってきているとする同氏に、メディア報道と実情の乖離について聞いた。
「情報はネガティブな方が拡散力は強く、昨夏以降の動向はなかなか知られていません。良いニュースは関西圏に留まり、残念ながら全国までは届いていないのが現状です」
関西経済同友会ではこの情報格差を解消するべく、会場視察の招致や情報発信に積極的に取り組んできた。
「これまで全国の同友会会員を対象に万博会場の視察の招致を行ってきました。関西経済同友会の会員には5回、それ以外の全国の会員向けには3回実施しています。また、こちらへ招致するだけでなく、われわれが各地へ出向いて話す機会も設けてきました。会場を視察された方や、われわれの話に耳を傾けてくださった方は、それぞれ異口同音に『これは期待できる』とおっしゃっています。現状のイメージを払拭するべく、今後も引き続き取り組んでいきます」
「いのち」問うパビリオンと成長を遂げる新興国の参加
メディアのトップニュースでは、会場のデザインや予算ばかりが取り上げられ、万博本来の魅力があまり伝わってこない。宮部氏はテーマと参加国に焦点を当てながら、万博の魅力を次のように語る。
「魅力を一つ一つ紹介するのは難しいのですが、テーマについては、会場の中心に位置するシグネチャーパビリオンは一つの目玉ではないでしょうか。8つのテーマそれぞれの切り口から『いのち』を考え、概念をアップデートする体験が提供される予定です。そして、各パビリオンを取り巻くように161カ国のパビリオンが並ぶ。今まで日本ではあまりなじみのなかったグローバルサウスの国々があるのも、70年万博とは異なるポイントです」
グローバルサウスとは、インドやインドネシア、トルコ、南アフリカといった、南半球に多い新興国を指す。日本の大阪にいながらこれらの国々の文化に触れられるのは、またとない機会だと熱弁する。
「国内の産業界はアジアや欧米との結び付きが強い一方で、グローバルサウスの国々への認知度はまだ低い。成長目覚ましい現地の空気感をまとって参加してくださる彼らは、われわれの古いイメージを払拭してくれることでしょう。これを契機に、日本の産業界もグローバルサウスに関心を持ち、ビジネスの可能性を感じてもらえると嬉しいですね」
テーマに沿って異なる体験ができるシグネイチャーパビリオンと、それらを取り巻く魅力的な国々のパビリオン。外苑部にはシンボルである「大屋根(リング)」が環を成し、さらにその周りを多数の企業パビリオンが取り囲む。参加者の興味・関心に応じて異なる体験ができるフェス型イベントは、多様な気付きや学び、思い出をつくってくれることだろう。
万博後、ハードだけではない。レガシーを次世代へ
万博やオリンピックなど大規模イベントを実施する際、必ず話題に上がるのが遺産(レガシー)だ。スポットで盛り上がるだけでは負の遺産となりかねない。その後のビジョンを描けているかどうかは中長期的な経済・産業発展の肝となる。宮部氏は万博後について次のように述べた。
「万博開催に際し、同友会では万博レガシー委員会を新設しました。現在、関西は万博を機に諸外国の注目が集まっています。これを一過性で終わらせるのではなく、継続した国際交流へとつなげていけるよう取り組んでいます。また、同友会にはかねてより海外交流委員会を設置しており、関西の政財界と海外との窓口機能を果たしてきました。こちらも人員を増強し、受け入れ態勢を整えていく予定です」
ハードだけでなく、国際交流の機運醸成といったソフトの面でもレガシーを遺していく。交流人口を創出し、その影響を地方にも伝播させるためにも、交通網の整備や多様なデスティネーションの開発は欠かせない。万博後、その真価が問われることになる。