成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。
マキ・コニクソン氏プロフィール
マキ・コニクソン氏がハワイに来た経緯
大手テレビ局に就職するもすぐに退社
イゲット マキさんがハワイに来られたのは何年前になるのでしょうか?
マキ 22年前、あっという間ですよね。
イゲット 引っ越されてきたのはどんな経緯でしょうか?
マキ もとの旦那さんが海軍のパイロットでした。オーストラリアとワシントンDCを経て、次の赴任地がハワイ。それで引っ越してきました。
イゲット その前はワシントン大学卒業後、テレビ局に就職してすぐに退職したんですよね。
マキ アメリカの大学を卒業して、中途入社でテレビ局に入りました。ただ、制作が好きだったのですが、違う部署に配属されたんです。本来はインタビューなどをやりたかったんですよ。
それこそ35年前は昭和の時代で、社内でタバコを吸うのも当たり前で、セクハラもバンバン受けて、そういうのも嫌で。今思えば可愛がられていたんだとも思いますが、当時は尖ってましたね。給料は良かったのですが、こんな感じでずっと行っていいのかなと。若かったなとは思いますが、人生ってやっぱり行動あるのみと思ったんです。それで辞めました。
フリーランスで通訳・キャスティングに携わる
イゲット 退社した後はフリーでやっていたんですか。
マキ そうです。23歳のときかな。自分のコネクションがいっぱいありましたし、番組制作会社の人も知っていたので。ご存知かどうか分かりませんが、逸見政孝さんの番組のレポートをやったりもしてたんですよ。
イゲット え、レポーターもやっていたんですね。
マキ 米軍の横須賀基地にインタビューに行く仕事があって、その制作の進行役で行ったのですが、そこのレポーターのモデルの女の子が、インタビューが下手で取材が出来なかったんです。それで私が横でバックアップしたのがきっかけです。そうしたらディレクターが「もうマキちゃんがやった方が良いよ」と。
いろいろな番組で通訳などもやっていました。通訳ってその人の心をそのまま繋げなきゃいけないから大切なんです。あと、特に楽しかったのは外国枠のキャスティングです。タレントさんともすごい仲良くなれましたし。もとの旦那さんともテレビの仕事で出会ったんですよ。
イゲット え、そうなんですか。
マキ 番組の企画で知り合いました。でも彼がオーストラリアに転勤になったので、仕事を辞めて一緒に行ったんです。当時は自由が丘で英会話サロンもやっていて、生徒さんが800人くらいいたのですが、それも辞めました。
イゲット フリーランスの仕事をしながら英会話学校もやっていたんですね。
マキ 自分の中で、30歳までに結婚して子供を産むって決めていたから。潔かったですね。
イゲット オーストラリアでは何をしていたのですか?
マキ 主婦ですよ、主婦。南半球だったので、彼とバヌアツやフィジーやニューカレドニアに旅行に行ったりして、本当に楽しかったです。旅するといろんな発見があって、それが世界を回るようになったキッカケになったのかもしれませんね。
マキ・コニクソン氏のハワイでの仕事
コーディネーター、プロデューサーとして活躍
イゲット いろんなお仕事をされていると思うんですが、コーディネーター業だけじゃないですよね?
マキ ハワイでプロダクションとかエンタープライズなど、正社員とアルバイトを含めて150人ぐらいを束ねています。なので、「母ちゃん頑張んなきゃ」みたいな(笑)
コーディネーターというよりプロデューサーとして動いていますね。いろんな撮影にしても、場所を決めて、ここでタイアップを持ってくるみたいなことも全部。企画から撮影まで全部やっているんですよ。だからどこの国にいっても、あ、「ここで撮影できるな」と思ったら、キーパーソンと話してきます。いろんな事情で訪れた場所が、ロケ現場になっているんです。
イゲット もう世界中にコネクション作ってきた、みたいな?
マキ そう。「世界!弾丸トラベラー」っていう番組を5年やっていたんですが、そのキャスティングとプロデュースをやっていた時に、世界中のコーディネーターと会ったんですね。ネットワークが増えて凄く良かった。宝ですよね。
イゲット ビジネスの面で、スタッフがそれだけたくさんいらっしゃる中、どうやってマネージメントしているのですか?
マキ 私は、本当にお金の計算が出来ない人なんですよ。だから、パイロットだった元旦那が軍をリタイアして担当してくれています。彼は大学でファイナンシャルのマスターを取っているんです。子供のパパでもあるし、パートナーです。
イゲット 今はもとの旦那さんと一緒に、会社の経営をしているのですか?
マキ 一緒に経営をしています。パパとママの仲が良いから、子供たちも喜んでます。
クリエイティブで好きなものだから頑張れる
マキ 例えばプロモーションでも何でも自分のペースでやっていて、11店舗くらい持っているんですよ。
イゲット 何をやっているんですか?
マキ ハワイ限定販売の契約で、日焼けスヌーピーの販売やムーミンショップ・ハワイを展開しています。あとは、メイド・イン・ハワイのオーガニックブランドであるマリエオーガニックと、ベアフィットドリームス。業務委託で洋服屋さんのミコモリと携帯ケースのユニケースも扱っています。
イゲット すごい!
マキ 今日もスタッフミーティングを行って、「次のデザインどうする?」とか話し合ってきました。クリエイティブなことが大好きなんです。
絶対日本では売らないように!みたいな。インターネットで売ってしまうのは簡単じゃないですか。お金になるかもしれないけど、それをやったら夢がなくなると思っています。日焼けスヌーピーだって、ハワイでしか買えないから良いんじゃないでしょうか。
イゲット ハワイ限定にするんですね。
マキ そうしたらみんな飽きないし、もっと欲しくなる。だから誰かに頼んでハワイで買ってくるというふうになりますよね。
イゲット クリエイターでかつ、マーケッターの人って多分少ないと思うんですけど、マキさんはそうなんじゃないですか?
マキ クリエイティブでマーケティングもできますね。
マキ・コニクソン氏の人脈と人間力
一流の人達に共通する点とは
イゲット 多くのアスリートや芸能人などと交流されていますが、一流の人達に共通する点はありますか。マキさんが、人と交流する上で心掛けていることとか。
マキ 私が仲良くしてもらっている人たちはみんな本当に、普通の人です。「私はこれよ!」っていう人は1人もいません。それが共通点ですかね。
イゲット なるほど。
マキ 大物ほど腰が低い。大物ほど人に優しい。大物程人にフェア。もちろん嫌な人も見たことはあります。そういう人は反面教師で、絶対こういう風にはならないぞ!と、思っています。
すごくラッキーなことにプロダクションをやっていると、いろんな人と会う機会があるから、日々が本当に勉強です。で、そういう人達と仲良くなるじゃないですか。うちでよくパーティーをするんですよ。そこで、アーティスト、スポーツアスリート、俳優、女優など、会ったことのない人達がいっぱいいて、みんな仲良くなって「良い人が揃ったね」ってなります。気が合うんです。
イゲット へぇ~。
マキ 私は本当に恵まれているな、って思います。皆さん連絡もくれるし、居心地の良い同士が集まってくるんです。
ピンチの時のハンドリングで、人のキャパが分かる
イゲット お仕事でいろんなところに行って、さまざまなトラブルもあったと思うんですけど、その中でも凄く困ったことはありましたか?
マキ いっぱいありました。
イゲット 問題解決能力みたいのがないと難しいですよね。
マキ ピンチがチャンスなんです。人は本当にピンチになった時に、みんなを安心させなきゃいけないと思います。リーダーが、「大丈夫!」って言うと皆が「大丈夫かも」って思うじゃないですか。
でも実は心の中はバクバクしているんです。そういうピンチの時のハンドリングで、その人のキャパが解ると思う。だからイコール、ピンチこそチャンスだと思うんです。
イゲット 具体的なエピソードはありますか?
マキ イタリアのシチリア島での撮影の時の話です。「世界!弾丸トラベラー」で有名カメラマンとタレントさんと一緒だったのですが、みんな日本でパツンパツンに仕事を入れていて、絶対に帰らなきゃいけかったんですが、飛行機が取れていなかったことがありました。
でも(航空会社に)「払い戻して」というのは効かないんです。もう「チケットを買い直してください」という感じで。スタッフ12人くらいが「えー!」ってなって、みんなパニクっていたので「大丈夫!買えば良いじゃん! これがイタリアなんだから!」ってみんなをなだめたんです。
別の便はもう一杯だったので「別経由で帰ろうよ、大丈夫だよ! 明日までに帰れれば良いんでしょ?」って。
結局、私とディレクター以外は全員帰れたので、私と、ディレクターは2人でローマ経由で帰ろうということになりました。トリビアの泉に行って、美味しいピザを食べて、ローマは楽しかったのでラッキーでした。もうありえないことが本当にあるんです。
キングフィッシャーでも、チケット代を払っているのに予約が入っていなかったことがありましたね。それで私たちみんなロケ隊は、香港経由で入って香港経由で帰ってきました。で、「皆で楽しかったね!」って。反対に良い思い出になるわけです。普通の完璧なロケだったら、あまり覚えていないんだけど、何かアクシデントがあると、その時の事は今だに覚えていますね。
うちのスタッフいわく、ピンチになると「マキさんニヤッとなる」らしいです。
イゲット (笑)。わかる気がします。問題解決の時に、AプランBプランCプラン、何通りくらい用意しておくのですか?
マキ 大体5通りくらいから選べるようにしておきます。このパズルが最高に楽しいんです。
マキ・コニクソンというコーディネーターとして名前が売れたのは、やっぱりピンチをいっぱい切り抜けて、ハンドリングしたからのような気がします。
イゲット 解決力っていうのが全然違うんですかね。
マキ ピンチが私にとって腕の見せどころ。輝く場所なんですね。
イゲット 事業は好きなものが増えたら、もっと増えていくみたいな感じでしょうか?
マキ そう!好きなことがあったら、また何かやりたいです。
イゲット 私たちうっかりすると120歳まで生きちゃうから、まだまだたくさん事業展開できますよね。
マキ すごく楽しみ!
(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。
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