アパレルブランドを経営するフランドルは、財務状況を立て直すため2018年から事業改革を実施し、20年2月期に営業黒字化に成功した。会員アプリのメンバーも25万人を超え、コロナ禍でも健闘している。
会員向けマーケティングと経営資源の集中で黒字化へ
「イネド」「マーリエ」「イッツインターナショナル」などの婦人服ブランドおよび、セレクトショップ業態の「スーペリアクローゼット」を展開するフランドル。近年はファストファッションの台頭やECサイトの普及によって顧客の購入スタイルが変化したことで、百貨店での売り上げが低迷するなど業績不振に陥っていた。
同社はこの状況を打破すべく、2018年から大規模な事業改革に着手。経営オペレーション・サービスのトレイル社代表でもある戸田隆行氏と社員との二人三脚で、20年2月期には黒字転換を果たした。
「黒字化は原点回帰と強みへの集中。店舗集約やブランド統廃合に加えて、不採算部門の切り離し、経営効率化のための本社組織のスリム化、会員向けアプリやオンラインサイトへの投資、リアル店舗とECの顧客管理の一元化などを行いました。しかし、まだやるべきことはあります。今後もトライ&エラーで、懸命に進んでいきます」と戸田代表は話す。
ピンチはチャンス。コロナ禍によって、リアルとECの店舗の融合や、顧客とのコミュニケーションを強化するプラットフォームの構築は加速した。メンバーズアプリの会員数も順調に伸び、25万人を超えた。
「今後もチャネルを超えたOMO(オンラインとオフラインの融合)に注力します。アプリの新規会員獲得、アクティブ会員のオムニチャネル来店回数アップに向けて、ウェブサイト・メンバーズアプリ・SNSを活用した情報発信を強化し、販売前商品のオンライン受注会やウェビナーの実施など、お客さまとの1to1でのコミュニケーションを大切にしていきます」と原田敏常務は力強く話す。
コロナ禍でも好調な着心地を重視したブランド
コロナ禍でリアル店舗の休業を余儀なくされ、在宅ワークの普及によって通勤着の需要が減るなど、アパレル業界は厳しい状況にある。その中で、フランドルのブランド「イッツインターナショナル」は好調だ。20年第2四半期の売り上げは既存店が前年比140%、EC売り上げは上半期計で前年比400%となった。
「同ブランドは紡績、織物、編物、染物といったアパレル産業の川上にあたる協力企業さまと、原料や素材による肌触りの良さにこだわって取り組んできました。質の高いものを長く着たいお客さまに、日常の着回しに欠かせないアイテムとして支持されています」と原田常務は話す。
また、同ブランドは百貨店を中心としたリアル店舗21店に加え、既存の百貨店の婦人服売り場とは異なる売り場での販売も行い、それが新たな顧客の獲得につながっている。
「百貨店のイベントスペースなどで年間約80回のポップアップを展開しています。婦人服売り場に足を運ばないお客さまの目にも触れる場所を選び、ブランドの認知拡大に成功しました。これは長年培ってきた百貨店との信頼関係があってこそ実現できたことです」
パートナー企業を募りアパレル以外の商品も展開
新たな展開として、3月1日にFX(ファッション・トランスフォーメーション)推進室を新設した。これから洋服以外にも、「ファッショナブル」な感性やサービスを届ける商品を展開していく予定だ。
「次なる戦略として、異業種を含めたアライアンスパートナーを幅広く募り、百貨店の顧客層に向けた共同アプローチなどを仕掛けていきます。アパレルと親和性のあるマーケットを探り、複合提案業態にシフトすることで、新たな視点で市場を創っていきます」と戸田代表は話す。
FXの推進によって、販売スタッフにも服選びだけではないアドバイス力が求められるようになる。
「もともと当社の販売スタッフは、お客さまに寄り添い一緒に楽しみながら服選びをするパートナーで、接客のプロです。お客さまとの信頼関係をベースに、今後は洋服に限らない価値を提案していくステージに挑戦していきます」
しかし、まだまだ事業改革は道半ばであり、解決すべき課題は多いという戸田代表。ファッションが人を元気づける大きな力になることを信じ、誇りを持って働くことの大切さを再認識している。
「好きな服を着ると気分が上がるように、ファッションは心の栄養として必要なものです。こんな時代だからこそ、その価値を再発見する人も増えており、ファッションならではの『品性と着心地』を生み出せる存在でありたいと思います」
会社概要 設立 1980年 資本金 1,000万円 売上高 102億9,040万円 所在地 東京都渋谷区 従業員数 509人 事業内容 婦人服の企画・製造・販売 https://www.flandre.ne.jp/ |
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