記事作成=hackjpn
日本人エンジニアが開発したソフトウェア開発テストツールが注目される
身の回りにあるサービスは、日々ソフトウェアに不具合がないか検証テスト(品質保証、QA)が行われている。世界の企業の75%がソフトウェア開発のテストを手動で行っており、開発プロセスの1/3を占めるこの検証テストは、標準化が難しく、いまだに人力に頼ることが多い。
独自でテストを自動化したい場合でも、自動化のコードを書けるエンジニアや、複数ブラウザでのテスト環境を整備することが必要となる。
米国の大手IT企業には、創業者が全員ソフトウェアエンジニア出身であるという共通点が見られる。しかし、日本や他の地域ではエンジニア出身の創業者は圧倒的に少ない。ソフトウェア品質を守るQAエンジニアが世界中で不足しているにも関わらず、従来のテストには複数の端末が必要で、手動テストを自動化したりテスト修正をしなくてはならず、多くの企業が効率的なソフトウェア開発を行えずにいる。
そのような中、ある日本人ソフトウェアエンジニアが米国で創業した、AIを用いたソフトウェアテストの自動化ツールを提供する企業が注目されている。
人手不足課題を解決するAI自動化ツール
Autifyはコードが書けなくともモバイルで誰でもテスト実行・修正ができるプラットフォームを開発している。人手不足と技術的困難の問題を解決する、AIを用いたソフトウェアテスト自動化ツールだ。
その特徴は、開発したソフトウェアが期待通りに動くかどうかの検証作業を、誰でも簡単にブラウザ上で自動で作成、実行、自動化できる点だ。
クロスブラウザや複数デバイスでの並行テスト、AIによる自動修復、ビジュアル回帰テストの3つを実施可能で、AIがソースコードやUIの変更を自動で検知し、ユーザーはメンテナンスなしでテスト実行することが可能となる。
同社のモバイル用システムはアプリを操作するだけであるため、ネットワーク事業者、ユーザーシナリオなどが、OSや画面サイズなどが異なるモバイル機器を用意する必要がなくなる。
ローコードのテスト自動化ソリューションを提供している同業他社もいるが、それらは既に技術に精通したソフトウェア開発者をターゲットとしているものばかりだ。開発者が不足している中、ノーコードソリューションを使うことで、技術系企業だけでなくともソフトウェア開発の改善を可能にしている。
開発サイクル加速化とコスト削減を叶えるアプローチ
Autifyには、ノーコード、AIによる自動化、多様な環境でのテストを同時に行えるという、自動化に関する3つの特徴がある。対象のウェブページでテストしたい動作をレコーディングすることでテストシナリオが簡単に作成でき、作成されたテストシナリオに対し、AIがWebブラウザに表示された内容の変化を分析しながら自動的にテストシナリオをアップデートする。
AIにメンテナンスさせるメリットは、工数が圧倒的に減少することだ。対象のウェブページでテストしたい動作をレコーディングするため、テスト実施時の時間や環境が記録され、不具合の原因などがより分かりやすくなる。そして、記録したシナリオはiPhoneやAndorid等を使いながら、ChromeやSafarで同時にテストできる。
ソフトウェアテストでは自動化ができないことや、メンテナンスが大変であるという課題を発見し、人力に頼るのではなく自動で検証テストを行うAI自動化ツールを開発したことでAutifyは成長している。同社のツールを使用することで導入企業はソフトウェアの開発サイクルを素早く行え、コストも削減できる。
ソフトウェアテストの非効率性は世界中の課題
AutifyのCEOである近澤良氏は、2019年に開かれたサンフランシスコのアクセラレータープログラムAlchemistを日本人として初めて卒業したエンジニア。日本、シンガポール、サンフランシスコにて10年以上開発に従事する中で、ソフトウェア開発業界には「ソフトウェアテストに時間がかかりすぎる」という共通の問題があることに気づいた。
近澤氏と共同創業者の山下颯太氏は、2016年にサンフランシスコでソフトウェアテストの自動化にめどをつけ、開発者が高品質なソフトウェアを顧客に迅速に提供できるようにするために会社を立ち上げた。
創業当初からグローバルビジョンを持っていたという。日本だけでソリューションを展開するとグローバル展開が難しくなることが多く、グローバルスタンダードで設計を行った結果、日本、米国、シンガポール、欧州に顧客を抱えることになった。Unity、DeNA、ZOZOなどのB2C、およびB2BのSaaS領域にもクライアントが多数存在している。サービス展開後は、β版にも関わらずマーケティングなしでデモリクエストが150社を超えるに至った。
Global Market Insightの調査によれば、ソフトウェアテスト市場は2027年までに600億ドル(約6兆7100億円)までの拡大が見込まれている。一方、世界中で開発者不足が問題になっており、労働統計局の発表によれば、米国でも2026年にはエンジニアの不足数が120万人を超えると言われている。
ソフトウェア開発テストを「誰でも簡単に」、世界中で叶える同社の今後のグローバル展開に注目だ。