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大学中退への不安に寄り添うチャットボットを提供する「EdSights」

記事作成=hackjpn

新型コロナウィルスの影響により非接触のコミュニケーションが進み、現在チャットボット市場が大きく成長を遂げている。多くの企業が接客DXという新たなソリューション提供を始めている。

接客DXの中でも、チャットボットを利用すると、ユーザーとの継続的なコミュニケーションが図れることで顧客視点を得ることができ、コンテンツをパーソナライズ化してより良く磨き上げることができる。チャットボットはまさに「おもてなし」を提供しているのである。

そんな中、ある姉妹が立ち上げた米国のスタートアップが、大学中退に対する不安や不満に寄り添うツールとして、チャットボットを学生に提供している。

チャットボットで大学生の悩みに寄り添う

EdSightsが提供するのは、コロナにより大学中退の危機にある孤独化した学生と大学をつなぐチャットボットだ。学生に個人的な質問やメッセージを送り、まず学生が自身のストレスの原因を理解できるようにする。そして彼らを、経済、食事、メンタルヘルスを支援する大学の制度につなげていくことを可能としている。

学生の悩みの多くは、「コロナでバイトが出来ず、家計がギリギリの状態で学校にあまり行けないが、大学の成績が自分たちの将来を決めるため、どうしていいかわからず、気を紛らわすことができない」といったものだという。以前よりも孤独になってしまった学生の増加が、同社へのニーズを促している。

元々、悩み相談をしたくとも、お問い合わせフォームがわかりづらい位置にあったり、メールだと煩わしいと感じる学生は一定数いる。そこでお問い合わせをチャットボットにすることで、スマホユーザーである学生らはお問い合わせが使いやすくなり、気軽に不安を語り、整理することができる。

同社のチャットボットは学校のマスコットを使用しており、チャットボットのほかにも、さまざまな問題に悩む学生の比率と問題点を管理者に示すダッシュボードも提供している。

留学生として悩みが絶えなかった姉妹による創業への想い

EdSightsは、Claudia(クラウディア)とCarolina(キャロライナ)のRecchi(レッキ)姉妹による共同創業。彼女らはイタリア人で、姉のクラウディアは、米国の大学に留学した際、初めて出会ったGPAシステム(各科目の成績から特定の方法によって学生の評価値を算出する手法)に困惑していた。近くに親や頼れるクラスメイトがおらず、学生アドバイザーの存在すら知らなかったため、孤独間に押しつぶされ、大学を中退してしまった。

2年後、妹のキャロライナがジョージタウン大学に行くために米国に移る際、自分が陥った課題を乗り越えるのを手伝った。数年後、彼女らは教授と学生に指導の進行状況についてその場でフィードバックを提供するClassPulseを設立し、わずか2カ月で200を超える学校で1万人以上のユーザーを獲得した。

学生たちの多くは、キャロライナが中退したのと同じ理由で学校を中退していた。アドバイザーへのアクセス方法を知らない、大学に所属していると感じられない、ホームシックになっているなど、さまざまな悩みを抱える学生たちは多かった。姉妹は、まさにかつての自分たちが必要としていたサービスを、現在提供しているわけだ。

姉妹は2017年、大学生が学校に留まれるよう支援し、大学の定着率を高めるためにEdSightsを創業。現在は70大学を顧客とし、その中には、ベイカー大学、ミズーリ・ウェスタン州立大学、ベテル大学、カルバー=ストックトン大学、ウェストミンスター大学などの有名校が含まれている。

姉妹は、「チャットボットはとてもフレンドリーで、学生を引き付けるのに良い仕事をしている。また、若いチームを持つことで大学生を魅了し、この世代の進化するニーズに追いつくことができるツールを構築するのに役立った。年配の世代は、生徒が自分たちに悩みを共有したくないのではないか、という誤解を持っており、生徒に何が必要かを尋ねるのが怖い。そこで、学生が直面している問題に到達するために、学生の声に耳を傾けることが重要である。」と述べている。

EdSights共同創業者のRecchi姉妹
共同創業者のRecchi姉妹(参照:https://www.edsights.io/teampage)

大学側へのメリットも考えた戦略

学生が離れて戻って来ないのではないかと恐れる大学は多い。姉妹が提供するサービスのポイントは、学生と確実につながり、大学に来ないまでも大学とつながっているという感覚を持たせたいというニーズに応えようとしているところだ。

 同社のチャットボットを通して、大学は学生のデータを得ることで、真の需要を知ることができ、そこから外れた別のサービスに費やすコストを削減できる。

学生の定着率が1%低下すると、大学に100万ドルの費用がかかる可能性があると指摘する調査結果も出ている。学生数の保持は大学にとって死活問題である。EdSightsでは、大学がどんな取り組み始めるべきかについてのロードマップも提供している。

実際、EdSightsを導入したミズーリウエスタン大学では、2018年秋学期に学生の保持率を1%向上させ、わずか数カ月で50万ドル節約することに成功したという。

EdSightsのチャットボット
大学のマスコットを使ったチャットボットを提供(参照:http://www.wiu.edu/news/newsrelease.php?release_id=18014) 

学生の不安にどこまでも寄り添う姉妹の姿勢

退学の恐れが高い学生とその問題に関する情報を扱っているため、同社はプラットフォームにおけるプライバシー保護を徹底している。米国家族教育権とプライバシー法(FERPA)とEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠しており、学生には、自身の記録の修正要求や、全記録を取得する権利が与えられる。

また、今後は学生の相談に乗ることだけでく、最終的にはメンタルヘルスの専門家や金銭面のリソース、就職支援など需要の多いサービスも提供したいと考えている。

姉のキャロライナは「教育機関では支援できない分野において、何かができる人は他にいるのだろうか。私たちにそれができるか分からないが、挑戦していきたい」と述べている。

コロナによって何百万人もの学生がキャンパスから離れ、自宅でオンライン授業を受講している今、学生たちをつなぎとめる新しい方法を提供する姉妹の今後の挑戦に期待願したい。