経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

データスケールの時代

連載 窪田望の「DX経営戦略論」(最終回)

窪田望

企業経営者が本気で取り組むべき、実践で役立つDXについて解説してきた本連載も今回で最後となった。今回は、DXの議論において欠かせないスケールについて考えていきたい。

農業とスケール

これまでのビジネス発展はスケーラビリティー(拡張性)との戦いの歴史だった。例えば、農業を拡大していくために人を雇い、土地を増やしていくという拡張性を考えてみよう。

例えば、日本において土地の私的所有権が出来るようになったのは、明治時代の地租改正で、田畑永代売買が解禁されたタイミングである。1872年に明治政府が土地の所有者データを定義したことで、世の中に地主が生まれた。1873年には地租改正が実施され、毎年3%ずつ米ではなく現金で納税させる仕組みが始まった。この金額が高額であったため、土地を手放す人たちが生まれた。

そこで生まれた構造が地主と小作人である。農地の所有者が小作人に土地を貸し、農作物の一部を小作料として徴収した。小作料は小作人にとっては、大きな負担だったが、地主は益々豊かになっていった。これによって、貧富の格差は拡大し、地主は政治に対する力や、銀行などを開始し始めるようになっていく。

農業に対して、地主という考え方が生まれ、農業に対するスケーラビリティを担保していった。これをスケール1.0と名付けてみる。この時代の力の源泉は、「人」がメインだった。そして、ビジネスモデルが重要だった。3%納税という最初の壁を乗り越えると、組織を束ねて、スケールさせることができた。

産業革命とスケール

第1次産業革命は18世紀末以降に工場の「機械化」がされたところから始まった。水力や蒸気機関による工場の機械化がされたことが出発点である。その後、20世紀初頭の電力を用いた大量生産である第2次産業革命が行われた。

これらの歴史は、「機械」を取り入れたことによって、人がやる仕事が減った。これにより、経営のコントローラビリティーはさらに高まった。基本的にはお金を払えばお金が増えるという状態を担保すればするほど、スケーラビリティーは高まる。

さらに1970年代初頭から情報技術を用いた自動化である第3次産業革命に続いていく。そして、現在は第4次産業革命であるIoTやAIを用いた技術革新が始まっている。

初期のスケール、DX時代のスケール

初期のスケールは人・組織によるものだった。そこから機械になり、ソフトウェアに移行していった歴史を見てきた。そして、そのスケールを加速させる存在としてファイナンスがある。人・もの・金で一気にスケールをした後の世界に私たちは生きている。しかし、DX時代、競合は当たり前のようにそういったスケールを手にした上で経営戦略を組み立てている。そんな時、私たちは現状維持をしていると、競合に追い抜かれてしまう。

どうするべきなのか?データによるスケールの時代がやってきた、と私は考える。これからはデジタルデータのみならずリアルデータを活用し、スケールする時代だ。データによるスケールを取り入れることで、指数関数的に企業はグロースすることだろう。

AIはデータを元に学習し、より精度を高めることができる。AI導入企業としていない企業の差は今後ますます高まっていくだろう。スケールを武器にする企業と、スケールを武器にした競合を敵対する企業に今後二分化していく。

DXの道は茨の道だ。多くの企業が失敗している。それはこれまでの壮大なもつれを解く作業だからだ。だからこそ、そのもつれを解いた先には、指数関数的な成長が存在する。他の企業が達成していない指数関数的な伸びを達成できる世界に、到達するためには、まずは地道な努力から始めよう。アドバイスが欲しい場合は連絡して欲しい。(終)

筆者プロフィール:

(くぼた・のぞむ)株式会社Creator’s NEXT、CEO & Founder。米国NY州生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。15歳の時に初めてプログラミング開発を行い、ユーザージェネレーテッドメディアを構築。スペイン・香港・シンガポール・ルクセンブルクでデジタルマーケティングについての登壇、ハッカソン優勝等実績多数。グッドデザイン賞受賞、KVeCS 2018 Grand Finaleで優勝しニューヨーク招聘、IE-KMD MEDIATECH VENTURE DAY TOKYOで優勝しスペイン招聘される。2019年、2020年には3万7000名の中から日本一のウェブ解析士(Best of Best)として2年連続で選出。東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻グローバル消費インテリジェンス寄附講座/松尾研究室(GCI 2019 Winter)を修了。マサチューセッツ工科大学の「MIT Sloan & MIT CSAIL Artificial Intelligence: Implications for Business Strategy Program」修了。グローバルマーケティングにおけるスケーラビリティーの実装に強みがあり、マーケティングやA/Bテストに関する教科書の執筆や、のべ3000名以上のマーケティング担当者の前での登壇・育成に携わる。
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