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自販機の新たな価値を創造し世界中に楽しさと健やかさを提供 ダイドーグループホールディングス 髙松富也

ダイドーグループホールディングス 社長 髙松富也

省人化・自動化の先駆けと言える自販機チャネルは今、変革を迫られている。生活者のライフスタイルが多様化する中、ダイドーグループは世界をリードする企業になるべく持続可能な価値創造に挑む。(雑誌『経済界』「関西経済! 次の一手!特集」2023年3月号より)

髙松富也・ダイドーグループホールディングス社長

ダイドーグループホールディングス 社長 髙松富也
ダイドーグループホールディングス 社長 髙松富也

自販機事業を再構築し新たな展開で世の中に貢献

── 中期経営計画を踏まえた2026年までのビジョンは。

髙松 30年にありたい姿として「グループミッション2030」を策定しました。3段階のうち基盤強化投資ステージを経て、26年までの5年間は成長ステージと位置付けています。そして最後の3年間を飛躍ステージとし、次の時代に向けた発展計画を立てています。これには再成長への決意があります。

 1975年に「ダイドーブレンドコーヒー」を自動販売機で販売して以来、小売りに頼ることなく自社で商品選定、販売管理できるチャネルとして安定的に成長してきました。しかし、10~20年ほど前からカフェやコンビニ、ドラッグストアなどの台頭で、コーヒー市場は伸びつつも収益を得ることが難しくなってきました。飲料事業の再構築によって、グループ事業である飲料の海外展開、そして医薬品関連事業や食品といった非飲料事業の安定的成長につなげたい考えです。

── 具体的な取り組みを教えてください。

髙松 自販機チャネルを含めた国内飲料事業の営業力強化によるシェア拡大、もう一つは収益構造を改善するため、デジタルやIoTを利用し、生産性を向上させるスマートオペレーションの構築を図っています。そして自販機の提供価値拡大として、全国に約27万台設置している自販機にもう一度注目してもらう取り組みもあります。

 一例として、ショッピングセンターの授乳室や道の駅に、飲料と共に紙おむつを併売する自販機を全国に約350台導入してきました。コロナ禍によって見直された非接触・非対面販売の価値をよりブラッシュアップし、「ここにダイドーの自販機があってよかった」とお役に立てるシーンや機能を模索しています。

── 「グループミッション2030」にはどのような想いを込めていますか。

髙松 当社は配置薬事業から始まった会社です。現在はドリンク剤や医薬部外品の製造を発展させ、飲料事業ともシナジーを生む事業を展開しています。

 グループミッションは「世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ」を掲げました。30年の日本は、高齢者が3人に1人を占めると言われます。医療費や社会福祉の社会課題から健康寿命延伸の動きの中で、健康で長く楽しく生きられる世の中に貢献したいという想いを込めています。

変化に対応しながら社員とチャレンジし続ける

── 昨今の情勢の変化による事業への影響はいかがですか。

髙松 エネルギーコストや原材料の高騰、円安も加わり、原価高の状況が続いています。これに伴い22年10月に飲料業界が足並みを揃えて価格を上げました。消費税増税以外の理由で値上げに踏み切らざるを得ないほど影響があったということです。今後の課題は、買い控えによる影響を最小限にどれだけ販売を維持していくか。こうした流れからも自販機の利便性や付加価値を高める必要性を強く感じています。

── ミッションを実現するために社内で工夫されていることは。

髙松 ミッションの実現についてブレずに伝え続けることでしょうか。14年の社長就任時にグループ理念を刷新しました。創業から掲げてきた「共存共栄」に、次の成長のために「チャレンジ」を加えています。当時約100の拠点で直接伝え、また双方向コミュニケーションを図ってきました。社員と話す中でアイデアが生まれてきたこともあり、社内提案制度を本格的に実施。設立40周年時には全社員から提案を募りました。

 コロナ禍による、リモートワークやデジタルツールを利用した業務遂行、副業制度といった新しい働き方にスムーズにシフトできたのは、以前から社内提案による実証実験を行ってきた成果です。

 社員の立場からすれば、アイデア提案の声を上げても実現しないなら言わないようにしようと諦めてしまいがちなところを、会社から「良いことは試しにやってみよう」と率先垂範で取り組んできました。次第に提案の質も上がっており、「チャレンジしていいんだ」という風土が根づいてきたように思います。

グループシナジーを生み、ブランド価値を磨いていく

── 2030年以降の動きは。

髙松 医薬品や食品を含めたグループでのブランド価値向上に一体となって取り組んでいきます。海外向け飲料事業は、既にグローバル巨大企業が展開する中での参入になりますが、同じ立ち位置ではなく「楽しく健やか」のコンセプトで展開していきます。弱アルカリ性のミネラルウォーターを主力商品とするトルコのメーカーを傘下に加え、また中国での無糖飲料の展開にも手応えを感じています。高齢化先進国である日本の強みを生かし、世界に健康提案できるチャンスと捉えています。世界をリードできるグループになるべく努めてまいります。 

会社概要
創 業●1975年1月
資本金●19億2,400万円
売上高●1,626億200万円(2022年1月期)
本 社●大阪市北区
従業員数●4,029人
事業内容●飲料事業、医薬品関連事業、食品事業
https://www.dydo-ghd.co.jp/