IT人材育成専門企業として世界15カ国にトレーニングサービスを提供するトレノケートホールディングス。マイクロソフトやAWSから、世界のトレーニング企業の中から1社のみが選ばれる表彰を受け、グローバルITベンダーからの信頼も厚い。(雑誌『経済界』2023年5月号「注目企業2023」特集より)
トレノケートホールディングス 社長 杉島泰斗氏
デジタル後進国の日本では全ての人にIT教育が必要
米DEC社(現ヒューレットパッカード)の教育研究事業部門が独立し、その日本支社としてスタートしたトレノケートホールディングス。
M&Aや海外展開によって成長を続け、2017年にホールディングス化し、商号を現在のトレノケートに変更した。
杉島泰斗社長はITコンサルタント、ウェブエンジニア、マーケティングの分野で実績を重ね、現会長から誘われて同社にジョイン。21年から社長を務めている。
「『IMD世界デジタル競争力ランキング2022』によると日本は第29位と順位を下げ続けています。さらに労働生産性、IT人材育成投資額ともにG7最下位という状況です。IT人材不足が深刻化する中、世界と戦える土壌をつくるには、日本でのIT人材育成は急務です。DX・リスキング市場が拡大している現在、企業のIT部門担当だけでなく、全ての働く人へのIT教育が必要な時代です」と話す。
以前はIT系企業の研修の依頼は多くても数百人規模だったが、最近は一般企業で数千人単位のIT基礎研修の依頼が増えているという。
「ITスキルだけを身に付ければいいわけではありません。例えば百貨店の販売員へのIT研修では、ITスキルを習得し、それをどう販売に生かし、売り上げを伸ばすかといったビジネススキル全般の向上を目的としました」
コロナ禍でオンライン研修を増やし、昨年7月にはオンラインでの累計受講者数が10万人を突破した。
「オンライン研修でしっかり学べるのか不安を持つお客さまもいましたが、チャット機能などで双方向のやりとりができますし、オンライン研修で十分成果が出ることが分かりました」
同社は世界で最も優れたIT研修企業20社として、日本で唯一かつ3年連続で選出。研修の種類・内容と、企業としての成長性が世界的に評価されている。
グローバルITベンダーの最重要パートナーに
同社は、AWS(アマゾンウェブサービス)やグーグル、マイクロソフトといったグローバルITベンダーの公認資格取得を目指す研修をいち早く実施しており、それをアジアに広げていくことで、売上高を伸ばしてきた。
「日本でAWSが注目され始めた13年頃、業界に先んじてクラウドサービスの波を捉え、研修を充実できたことが成長のフックになったのだと思います」
IT人材育成の専門企業の競合は多いが、同社の強みは大手ベンダーの系列ではなく、独立系であるところだ。
「大手ベンダーの場合、自社の技術とグローバルITベンダーの技術が競合してしまうことがあります。当社は中立の立場で、ニーズに合わせて柔軟にトレーニングを提供でき、対応ベンダーのラインアップも豊富です」
教材は言語を変えれば、世界で使うことができる。現在はシンガポール、マレーシア、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、米国、台湾、スリランカ、オーストラリア、UAEに現地法人を設立。現地の商習慣を熟知した各国出身者でマネジメントチームを構成している。
展開国と研修対象を増やし世界ナンバーワンへ
トレーニングを担当する講師のスキルの高さ、熱さも同社が選ばれる理由の一つだ。
講師の中には、グローバルITベンダーの講師を辞退して、同社を選ぶ人もいるという。
「『IT人材育成で世界を変える』という当社のビジョンに共感してくれた講師が入社しています。高いスキルを持つ講師陣によって、アジアナンバーワンのトレーニング企業としての地位を築くことができました」
研修の内容や品質に常に磨きをかけており、アバターやVRなど最先端の技術を活用したロールプレイング研修では、「恥ずかしい」という意識がなくなり、研修に没頭しやすくなるという。
「どうすれば人や企業が成長できるか徹底的に考えています。例えば『OJTを受ける側の研修』もつくりました。OJTを受ける側の心構えに焦点を置き、OJTでの学びを最大化することが目的です」
今後はさらに多種にわたる研修を増やし、展開国も北米を中心に拡大していく予定だ。
「人と企業が成長していくためには教育しかありません。各国のITレベルが上がっていく中、誰もが自分事としてITスキルを身に付けるという姿勢が大切です」
会社概要 設立 2017年10月 本社 東京都新宿区 従業員数 427人 事業内容 IT 技術教育、ビジネススキル教育を中心とした人材育成事業を含むグループ全体の経営管理および付帯業務 https://www.trainocate-holdings.com/ |