enstemは、専用のスマートウォッチからカラダのデータを取得、分析し、コンディションを数値化するアプリ「Nobi」を開発。これを運送業界にも導入するため、ドライバーの安全と健康管理を行う「Nobi for Driver」を開発、2022年6月に運用開始した。構想から開発、運用までを手掛けた山本寛大社長に話を聞いた。(雑誌『経済界』2023年7月号巻頭特集「物流クライシス2024」より)
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眠気や疲労を感知して事故リスクを回避
―― 「Nobi for Driver」はトラックドライバーのどのようなリスクを可視化するシステムですか。
山本 Nobiは生体から発生するさまざまな波形をAIで解析し、数値が一定の基準に達するとアラートが発動するシステムです。スマートウォッチで心拍数や血圧を測定し、健康状態を数値で可視化します。
もともとはスポーツ用に開発したものですが、ブルーワーカーと呼ばれる体を使う業務でも生かせると考え、運送業界に特化したNobiを開発しました。
トラックドライバーの運転中の眠気、疲労、体調などを可視化することで事故のリスクを回避することができます。現在トラックドライバー業界は高齢化や新規参入者の減少により、人手不足に陥っています。人手不足の業界において、事故で労働者が欠けるというのは大きな損失に値するため避ける必要があります。
―― どういった企業が導入していますか。
山本 去年の6月にリリースし、現在の導入社数は90社を超えています。そのうちの99%はトラック台数20~400台ほどの中小企業です。
特に、高齢の方や、睡眠時無呼吸症候群の方、深夜帯に運転する方、長距離を運転する方を対象にした、事故リスクが高い分野での導入を勧めています。
また、新人ドライバーも事故率が高いため、新人雇用を積極的に行う大手運送会社にも導入してもらっています。
導入コストは、スマートウォッチの購入料込みで、1台の初期費用が6千円です。またトライアルプランとして最大3カ月間お試しで導入することができます。
―― 運送業界の課題に対する効果は感じられましたか。
山本 健康リスクの可視化に加えて、ドライバー個人や会社全体の傾向も可視化できるようになりました。
ルート別の事故リスクや、朝夕の調子の差、眠気を乱発するようになる走行距離など、個人の傾向をデータ化することができます。その結果を会社全体で共有し、ドライバーそれぞれにも効果的な指導をすることで、結果的に事故抑止につなげることができます。
そして今後は2024年問題と言われているように、ドライバーはますます不足していきます。そうなったとき、運送業界ではどれだけ少ない人材で事業を継続させるかという点にフォーカスが当たるはずです。
ドライバー個人の傾向がデータ化できるようになったことで、誰でもドライバーの乗務管理や指導監督を含む運行管理の仕事ができるようになります。そしてこれからは個々のドライバーが評価され、傾向データを基に適材適所に配置されるようになるでしょう。
青年部と呼ばれる40〜50代の人たちは、当社のサービスのような新しい技術に対する受け入れ間口が広いです。今後はこの世代の方たちが運送業界を変えるゲームチェンジャーになると思います。