熊本県で圧倒的なシェアを占める住宅メーカー、シアーズホームグループHD。福岡での事業が好調で、2024年4月期は過去最高売上高となった。創業40周年を迎える29年には、売上高500億円を目指して事業を拡大する。(雑誌『経済界』2025年1月号「躍動する九州」特集より)
福岡での住宅事業が好調。北九州市への進出も検討
一般的に住宅業界ではシェア3~4%あれば十分と言われている中、熊本県で10%に迫る勢いの住宅メーカーがある。1989年創業のシアーズホームグループHDだ。
同社は2500万円ほどの注文住宅から1900万~1400万円の規格住宅までを手掛けている。顧客のニーズに合わせた松竹梅戦略が奏功し、県内トップシェアとなった。
福岡や佐賀、鹿児島でも事業を展開しており、累計施工実績は1万棟を超える。また、リフォーム、不動産、ホテル、金融などの分野にも進出し、グループ会社は計13社。2022年からは持ち株会社に移行した。
23年4月期はウッドショックによる資材価格高騰の影響により、売上高が前期比2・5%減の265億円、完工棟数は同10%減の842棟と落ち込んだ。
しかし、24年4月期は売上高284億円、完工棟数878棟と回復、過去最高の売上高となった。
会長兼社長を務める丸本文紀氏は「会社が存続するためには、常に新しい事業を生み出し、事業を拡大していくしかない」と語る。
同社は17年に開設した福岡支店を23年に分社化。シアーズホームバースを設立した。24年4月期の売上高は96億円と、熊本に迫る勢いだ。「福岡には熊本の3倍のマーケットがあり、今後伸びていく余地が十分にあります」と丸本氏。現在は、福岡市と久留米市で事業を展開しているが、今後は北九州市にも進出していくという。
省エネ需要を見込み。高断熱住宅を計画
丸本氏は、事業創出の手を緩めない。主力の住宅部門では、24年秋から新商品「育hug:(ハグ)2・0」の販売を開始する。同住宅は日本最高ランクの断熱等級7(HEAT20 G3グレード)を採用。「冬の最低体感温度が概ね15℃を下回らない」「省エネ基準に対して暖房負荷削減率が約75%」など、厳しい基準をクリアした高断熱住宅だ。
「カーボンニュートラルに向けての省エネ住宅として、今後の主力商品としていきます」
一方、グループのシアーズアセットビジネスでは沖縄のホテル事業の拡充を進めている。コバルトブルーの海と豊かな緑の大地に恵まれた今な帰き仁じん村そんにあるリゾートヴィラを6棟購入。全室プール付きで、そばにはプライベートビーチも広がる。沖縄美ら海水族館へのアクセスも良好だ。
また、インバウンド向けのレジデンシャルホテルも沖縄に建設する予定。
「ホテル事業を拡充し、ストックビジネスにも力を入れていきます」
事業拡大とともに生産性向上にも取り組む
同社の経営方針は、「Smart Growth(賢明なる成長)」。これは、利益率と自己資本比率を上げながら成長していくことを意味する。
「売り上げが伸びても、利益が出ていなければ、社員の給料を上げることはできません」と丸本氏。「お客さまに満足していただくには、社員が幸せである必要があります。事業を拡大し、社員の所得と休日を増やしていきます」と力を込める。
29年に創業40周年を迎える同社は、グループ売上高500億円、経常利益50億円の達成を目指す。また、今後毎年4%以上賃金アップ。一人当たり有休取得日数を毎年1日ずつ増やしていくビジョンを掲げる。
実現のためには、事業拡大とともに仕事の仕組みを変え、生産性を上げなければならない。
その一環として取り組んでいるのが営業のDX化だ。同社ではクラウド型の営業支援ツールを導入。個々の社員の営業進捗が可視化され、上司がリアルタイムで確認できる。顧客対応が遅れている社員には、上司が指導し対応を促す。
また、一部の優秀な社員がどのようなプロセスで営業を行っているのかも可視化が可能。それを他社員の活動に生かし、営業効率を上げていくという。
「生産性の向上は人材育成そのもの。大事なのは、上司が目の前の社員を幸せにするとの思いを持って、根気強く構っていくことです」と語る丸本氏。
社員の成長が、顧客満足度を高める。そうして、売り上げ・利益が上がれば、社員の所得や休日が増えていく。目の前の人を幸せにする経営が好循環を生み出している。
会社概要 設立 1989年1月 資本金 1億円 売上高 284億8,000万円(2024年4月期決算・グループ連結) 本社 熊本県熊本市南区 従業員数 グループ総数640人 事業内容 住宅建築事業、住宅リフォーム事業、公共工事事業、不動産事業、環境事業 https://searshomegroup.co.jp |