脱退を掲げるドナルド・トランプ氏が次期米大統領となったことで、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効が見通せなくなっている。国内ではTPPの承認案と関連法案が11月11日の衆院本会議を通過した。日本政府は、他の参加国との連携を密にしながら、トランプ氏に自由貿易体制の重要性を訴え、米国が極端な保護主義に走らないよう求め、TPPの発効につなげたいところだ。
18日の安倍晋三首相とトランプ氏との会談は友好的なムードで終わった。外国要人として、初めてトランプ氏と直接会談したすばやい対応に、経産省幹部は「『こいつと一緒にやっていける』ということになるかどうか。こういうときは安定した首相というのは心強い。安倍さんはそこらへんはうまい」と胸をなで下ろした。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)にあわせて、TPP参加12カ国が首脳会合を開いた。トランプ氏に翻意を促すための環境をつくるためだ。各国はもう一つの巨大自由貿易協定(メガFTA)交渉にも名を連ねている。中国が力を入れ、米国が参加しない「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」だ。
米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の試算では、TPPが発効しRCEPが発効しなければ、中国に220億ドル(2兆4200億円)の経済損失が出る。一方、RCEPが発効しTPPが発効しない場合は、逆に880億ドルの経済効果をもたらす。
中国の影響力拡大を警戒する発言を繰り返してきたトランプ氏にとって、TPP脱退が逆に中国の立場を強めることになるとの主張は、説得力を持つ。
トランプ氏は選挙期間中、自由貿易を否定するような言動を行ってきた。経産省は「トランプ氏が選挙中に話していた日米の貿易関係は数十年前のもの。現状をしっかり説明すれば、TPPのメリットを分かってくれるはず」(経産省幹部)と説得を続ける構えだ。
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