政治・経済

 銀行窓口で販売される保険商品の手数料が“丸裸”になる――。金融庁が生命保険協会に対し、一時払いの外貨建て保険など貯蓄性保険商品について銀行が受け取る高額な手数料の開示を検討するよう要請し、3月末まで具体案をまとめるよう求めた。好調な販売に水を差しかねないだけに、生保や銀行に衝撃が走っている。

 「高過ぎる」。金融庁幹部は貯蓄性保険の手数料について率直に述べる。

 資産運用の投資商品として人気を集めている一時払いの外貨建て保険や変額年金保険には保険料の10%近い手数料の商品がある。だが、手数料は顧客の保険料に含まれており、保険会社が銀行への販売委託にいくら手数料を支払っているかは非開示だ。

 一方、投資商品として性格が似ており、同じ銀行窓口で扱われる投資信託の手数料はせいぜい3%程度で、開示もされている。投信の販売が落ち込む中、手数料の高い貯蓄性保険の販売が好調なのは、銀行が顧客のニーズでなく、手数料目当てで商品を勧めているからなのではないかという問題意識が金融庁にはある。

 日銀が導入したマイナス金利政策で金利が低下し、貸出などで利ざやを稼ぎにくくなったことで、金融庁は銀行が顧客目線を置き去りにして貯蓄性保険の販売に走ることを警戒。手数料開示を義務付ければ、顧客の商品選びに役立つ上、手数料の抑制にもつながるとみる。

 対する生保側は「やるべきなのは理解しているのだが」(関係者)とどこか表情がさえない。各社の好業績をけん引してきたのは貯蓄性保険だ。手数料が開示されれば、契約獲得のために手数料に下げ圧力が働いて銀行が保険を売り込む意欲が落ち、販売額を落としかねない。

 さらに、貯蓄性をきっかけに複数の保険会社の商品を取り扱い「乗り合い代理店」などにまで手数料開示の流れが広がり、収益構造がガラス張りになることを恐れている。

 一方の銀行とってもマイナス金利政策で、金融商品の販売による手数料ビジネスが重みを増しているが、保険の高額な手数料が下がると、収益確保の手段が狭められることになる。事業展開が限られる地方銀行にはその分影響が大きい。金融庁は地域経済活性化で主体的な役割を果たすべき地銀の働きを不十分としてビジネスモデルの転換を促しているが、「今回の政策も実は地銀に再編を含めた転換を迫る“地銀包囲網”の一環なのではないか」(関係者)との指摘も出ている。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年12月号
[特集] 沸騰する食ビジネス!!
  • ・食ビジネスが熱い!! 未来型食品が社会課題を解決する
  • ・市場規模70兆円! 食ビジネスが過熱するわけ
  • ・完全バランス栄養食で誰もがラクして健康になれる
  • ・人工光型植物工場で世界の食と農に新しい常識を
  • ・宇宙食ビジネスで勝ちに行く 10年後に5千億円市場創出へ
  • ・“大人の給食”で栄養の基盤をつくる
  • ・人工肉で糖質制限者に無制限のおいしさを
  • ・テクノロジーで高品質なジビエ調達が可能に
  • ・昆虫食ビジネスの時代到来
[Special Interview]

 伊藤秀二(カルビー社長)

 掘り出そうカルビーの未来

[NEWS REPORT]

◆エンジニアへの高額給与で 富士通は生まれ変われるか

◆豊田章男・自工会会長が挑む東京モーターショー100万人

◆消費増税で現金主義は終焉 キャッシュレス時代が到来した

◆加速するeスポーツ市場! インテルが東京で世界大会を開催

[総力特集]

経済界創刊55周年記念 新しい日本のかたち

東京1964からの55年と東京2020以降の日本の姿

ページ上部へ戻る