政治・経済

空港活性化という問いがあれば、「LCC(ローコスト航空会社)の誘致」という答えは間違いなく挙がるはず。それほど、新たな需要を生み出したLCCの貢献度は高い。ただ、どこの会社も成功しているわけではない。日系LCCで唯一黒字化を達成し、周りも潤しているピーチ・アビエーションの井上慎一CEOに、航空会社も就航地も元気になる方法を聞いた。

情けはピーチのためならず

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(いのうえ・しんいち)1958年神奈川県藤沢市生まれ。82年、早稲田大学法学部を卒業後、三菱重工業に入社。90年に全日本空輸株式会社(現・ANAホールディングス)入社。その後、主にアジアでの営業に携わる。2008年、アジア戦略室長に就任。11年、A&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)代表取締役CEOに就任する。 PHOTO:宇野良匠

 2016年に関西と仙台でコンセッション方式による民営化が行われることは、新たなチャレンジとして航空会社としても期待しています。仙台空港に関しては第4の拠点にすると表明していますが、実際は17年度から事業を開始したいと考えていますから、まだ路線などは何も決まっていません。

 よく就航の条件も聞かれますが、飛行時間が4時間圏内であるということと、何よりビジネスとして成立することが条件です。例えば、採算面で合わなくても助成金や支援で飛ばすこともありますが、結局は成り立たないわけですから、良い方法ではないと思っています。

 ただ、仙台、東北地方は、魅力的な地域だと思っています。まだまだインバウンドのお客さまにも知られていませんが、観光資源が豊富です。例えば、昔ながらの町並みが残っているんですね。グルメも良い。こないだも香港の方が「2つめの金閣寺に行ってきたよ」とおっしゃっていたんですが、中尊寺の金色堂のことだったんです。そういった観光資源は豊富にありますから、すごく期待しています。

 多くのお客さまに訪れてもらうためにも地元の協力は欠かせません。私たちは「THE関西モデル」と呼んでいるのですが、関西で事業を始めて失敗を重ねながら導き出したものがあります。

 LCCと空港会社、それに自治体と地元企業の4者が協力し合うモデルですが、例えば、空港会社から着陸料減免措置といった支援を頂いたときに、当社は黒字を出しているので、それを原資に運賃を下げました。そうすることでお客さまは増え、空港には恩恵をもたらし、鉄道などアクセスのお客さまも増やし、地元のホテルや飲食店を潤すといった良い循環をつくっていくことができたのです。つまり、「情けはピーチのためならず」ってことなんです(笑)。

 関西大学の宮本勝浩名誉教授の調べでは、14年度のLCCの関西経済圏に及ぼしたインバウンド効果を、1884億円と算出しています。当社の国際線シェアが33・3%ですから627億円のインパクトを単独で出せる計算になります。お客さまを連れて来ることで、こんなにもお金を使っていただいているんです。

「旅」から「日常」へ

 ピーチは、20代から30代の女性をターゲットとした結果、搭乗者の女性比率が50%以上になっています。沖縄線や石垣線などは、私がとまどうくらい女性客が多い(笑)。こうした新たな市場をLCCが開拓しましたが、今後もまだまだ伸びると思っています。

 面白いのは、LCCに乗り慣れた方が増えていまして、利用方法に変化が表れています。旅行ではなく、日常の拡大といえばいいでしょうか。例えば、20代後半くらいの方で台湾に昆虫採集に行かれている方がいらっしゃいました。採集できる昆虫は春夏秋冬で違いますから、結構利用していただいているはずです。ビックリしたのは、台湾の女の子たちが那覇の美容室を訪れていることです。日本の美容室の技術が高いというのもあるんでしょうが、安いからこそフラッと来ることができる。私たちが標榜していた「空飛ぶ電車」になりつつあるんですね。

 シニア層も増えていましてね。矢沢永吉さんみたいなカッコイイ方々が、自分で予約し気軽に利用しています。要望を聞くと、「毎日ちゃんと安全に飛んで、安い運賃をきっちりだしてくれればいい」。それだけだそうです。面白いでしょ。

 また、関空―ソウル線に日帰りのお客さまが多いという噂がありました。試しに往復7200円の運賃を出したところ大阪のおばちゃんたちの人気に。主婦だから日帰りが喜ばれるんだそうです。こういった気付いていない需要はまだまだあると思いますよ。(談)

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