テクノロジー

モバイルインターネットが踊場を迎え、次のインターネットの牽引役として、バーチャルリアリティー(VR)への期待が高まっている。その中でコンテンツ業界をはじめ、プラットフォームビジネスを熟知したプレーヤーの動きは速い。2014年12月に上場したgumiも、将来の成長領域として、VRに強くコミットメントしている。國光宏尚社長にVRビジネスの展望を聞いた。 聞き手=本誌/村田晋一郎

國光宏尚氏は語る VR、AR、MRでインターネットの革命が起こる

―― 現在のVRの流れをどうみていますか。


國光
 これはVR単体というより、VRから次のオーグメンテッドリアリティー(拡張現実:AR)、そしてリアルとバーチャルとが完全に交わるミックスドリアリティー(MR)までを一体で語るべきだと思います。この流れをインターネットの第3の波ととらえています。第1の波は「PCでのインターネット」、第2の波が「モバイルでのインターネット」、そして第3の波が「VRやARでのインターネット」だと思います。

 2007年に米アップルのiPhoneが出て、そこから一気にモバイルでのインターネットが立ち上がりました。モバイルはPCの市場をかなり置き換えてきましたが、今は踊り場になっています。ほぼ一巡して、ニッチな領域しか残っていない。そこで次に来るのがVRやARによる第3の波だと思います。

―― 第3の波の世界とは。

20160621GUMI_P01

(くにみつ・ひろなお)1974年生まれ、兵庫県出身。私立岡山高校卒業後、中国・上海の復旦大学へ入学。その後、中国・インドなどのアジア諸国、北米、中南米など約30カ国を放浪。2000年、米国・カリフォルニアのサンタモニカカレッジに入学。04年アットムービー入社。07年gumiを創業し代表取締役に就任。Tokyo VR Startupの代表取締役社長、VR FUND,L.P.のGPを務める。

國光 現在はモバイルインターネットの駄目なところも見え始めています。その一つが端末をポケットやカバンから取り出して操作しなければいけないということです。面倒臭くて、直感的ではない。そこで次のVRやARでやろうとしているのは、自分の視覚とインターネットを直接つなぐ世界。例えば、漫画の「ドラゴンボール」のスカウターや映画の「マイノリティ・リポート」や「アイアンマン」の世界などで、目の前の空間に画面が表示されるイメージです。最終的にMRでは、目の網膜に直接見せたいオブジェクトを照射し、目の前に何かがあるような状態をつくる。そういう世界をつくろうという動きが第3の波です。

 最初のVRは、ゴーグルをつけて360度のバーチャル空間の中に自分がいると認識させる。次のARが要するにスカウターで、眼鏡型端末にネット上の情報やオブジェクトを表示し、ネットとリアルを融合させる。そしてMRは眼鏡型端末から網膜に光を照射させてネットの情報を目に写し、ネットとリアルを完全に合わせていく。ここの技術がひとつなぎで、コアな技術的な問題はほぼ解決が見えていて、あとは細かい部分の進化だけです。

 今、16年がまさにVR元年で、これから5年〜10年間かけて、VR・AR・MR市場が伸びていく。3年〜4年後ぐらいにAR市場が今のVR市場と同じ状態になる。要するにARのハードウエアが出てきて、いろんな会社がAR向けのコンテンツをたくさんつくる。さらに今から6年後にMRという世界が出てくる。自分の目とネットがシームレスにつながって、目の前の空間すべてがネットの情報を映す空間でありつつ、わざわざモバイルを操作しなくても、より直感的に、より広いフィールドでインターネットができるようになる。それがこれから来る次の時代であり、VRはその入口だと考えています。

ゲーム、起業支援、ファンドの3本柱でVRを展開したいと語る國光宏尚氏

―― 貴社のビジネスはこの第3の波にどうつながっていきますか。ゲームもスマホのVRゲームが出てくるのでしょうか。

國光 当社にとってゲームは当然、重要な部分です。スマホのゲームも結局、家庭用のゲームを移植したものはあまり流行らなくて、スマホならではのゲームを一からつくった会社がヒットしました。当然VRのゲームでも、スマホや家庭用のゲームを直接移植しては駄目です。VRでしかできない体験をどうやってつくるかが1つ大きなところかなと思います。

 まずはVRならではの体験をもった形のゲーム。あとはエンターテイメントの定義が変わり、ゲームや映像の枠組みがどんどんなくなってくると思うので、新しいVR的なインタラクティブなコンテンツがあるのかなと思います。VRの特性である距離感覚・位置間隔を生かしたソーシャルネットワークやゲームなど、ヒントはある程度見えてきています。

―― 具体的な事業の取り組みは。

國光 VR、ARの取り組みは、大きく3つのことをやっています。1つが自分たちで新しい時代のゲームをつくっていくというところ。

 2つめがTokyo VR Startupsというインキュベーションプログラムをやっています。日本発で世界に通用するVR、ARの会社をつくりだそうという取り組みです。今1期生が5チームあり、デモイベントが6月29日にあります。そうは言っても、イノベーションの中心はアメリカです。そこでアメリカのシリコンバレーにおいて、有力パートナーと一緒に、「VR FUND,L.P.」というベンチャーキャピタルファンドを立ち上げました。この3本立てが、今当社が取り組んでいることです。

國光宏尚氏の戦略 モバイルVRゲームの立ち上がりを狙う

―― VRのゲームはいつごろ最初の製品が出てくるのですか。

20160621GUMI_P02國光 ゲームは投資先もたくさんあります。Tokyo VR Startupsでも2社はゲーム会社です。今年、来年にはもっとたくさん出てくるでしょう。

 ゲームに関しては、今はまさに07年のiPhoneが出た当初のスマホ市場のような感じだと思っています。結局、「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」が出たのは12年でしたから、iPhoneが出てから5年ぐらいが経過しています。最初の2〜3年はVRならではの遊び方をみんなで試行錯誤していくことになるでしょう。その中からVRならではの新しい体験を見つけ、3年後ぐらいにようやくパズドラのようなすごいコンテンツが出てくると思っています。

 われわれの戦略について言うと、自社でもコンテンツ開発は行っていますが、自社だけでやるのではなく、投資も含めて、世界中のいろんな会社に張って行きながら、VRならではの形を見つけることが今のフェーズです。それが明確に見つかってくると、投資を強めて、VRにおけるパズドラみたいなものを見つけていくことになるでしょう。それが次のフェーズです。

 ゲームは結局、売れているハードの数に圧倒的に依存します。スマホは2億台普及しています。VRのハードは徐々に普及していき、さまざまな企業が競合してきた段階で、一気に広がっていくと思います。

―― モバイルVRのゲームはOculusなどのハイスペックVRのゲームとは違ってくるのですか。

國光 現状はそこも試行錯誤の形で、意見が2つに分かれています。VRはハードの性能が必要で、OculusやHTCが動くPCは超ハイスペック。モバイルはそこまでの性能がないので、現状でOculusなどの性能をフルに生かしたゲームを作ると、モバイルでは全く動かないです。なので、ハイエンドとモバイルで流行るゲームは別で、それぞれに最適化したほうがいいというのが一つの意見。一方、もう一つの意見は、ハードの進化のスピードは速いので、そう遠くない未来にVR機としてのスマホの性能が今のハイエンドのPCに追い付いていくから、最終的には一緒になるという意見。私の意見は前者です。しかし、もう一歩踏み込んで、ハードの処理を全部クラウド上で行うクラウドゲームの形にすれば、モバイルVRでも行けるという議論も出てきています。

―― 今後の展望は。

國光 当社にとってVRで一番大きくかかわるのは当然ゲームだと思います。市場も大きくなるのはゲームですし、当然やっていくからには、次のVRゲーム市場では当社が世界一をとることを狙っていきます。ただし、今回のVR、ARの流れはそれだけにとどまりません。VRのエコシステムにおいて、ゲームなどのコンテンツだけでなく、ツールやプラットフォームを含めた領域も取っていければ、ビジネスが大きく広がります。そこは国内のインキュベーションや海外のファンドを通じて幅広く展開し、次世代の大きなプラットフォーム的な市場を狙っていきたいと思います。ゲームで圧倒的に1位になっていきながら、何かのプラットフォームの領域でも1位になっていることが理想ですね。

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