政治・経済

“後出しジャンケン”も日増しに失速した鳥越氏

 参院選の最中から“先出しじゃんけん”で先手を握り、自公推薦の増田寛也氏、野党統一候補の鳥越俊太郎氏を破り、東京都初の女性知事となった小池百合子氏。なぜ小池氏が当選したのか。裏返せば、なぜ増田氏や鳥越氏は敗れたのか。あらためて、振り返ってみたい。

 告示直後、ある選挙プランナーは鳥越氏の出馬会見を見ての感想をこう漏らした。

 「多くの都民は鳥越さん出馬の報に期待を寄せていたんでしょうが、あまりにも中身がなく、がっかりしたんじゃないでしょうか。告示直前に出馬を表明して、これから政策を考えるとか、勉強するなんて言ったら、有権者としては白けるだけです」

 究極の“後出しじゃんけん”と呼ばれた鳥越氏の出馬だった。民進党が出馬要請していた元経産省の古賀茂明氏が鳥越氏支持を打ち出し、身を引くと宣言し、立候補を表明していた弁護士の宇都宮健児氏も出馬を取りやめたことで野党統一候補が実現。大きなうねりで都知事選をリードしていくかに見えた。ところが、日増しに失速していった。

 「まるで、前回(2014年2月)の都知事選の再現のように感じました。鳴り物入りで立候補した細川護煕氏と援軍の小泉純一郎氏の“元首相コンビ”に都知事選の出だしは大盛り上がりでしたが、原発反対しか言わない細川氏に有権者は白けて、舛添氏が圧勝しました」(前出・選挙プランナー)

 鳥越氏は出馬について、政党からの要請ではなく自身の決断であったことを強調した。それ自体にウソはないだろうし、多くの都民は歓迎しただろう。しかし、出来上がった体制は、民進党お抱えの状態になったことは否めない。選対本部長は、現在落選中の民進党の元衆院議員T氏で、完全な民進党仕切りの選挙となった。

 加えて、“文春砲”が鳥越氏を襲った。『週刊文春』7月28日号に、過去の女性スキャンダルが掲載されたことに対し、鳥越氏は法廷闘争に持ち込んだのだ。前大阪市長の橋下徹氏は自身のツイッターで21日朝、「鳥越さん、あれだけ報道の自由を叫んでいたのに自分のことになったらちょっとケツの穴が小さくないか?」とつぶやいた。

 T氏をはじめとした選挙スタッフが、なるべく鳥越氏にコメントさせないようにしていた、との証言があったが、本来なら橋下氏が指摘するように、しっかり鳥越氏本人が説明すべきだったと感じている。取材する側として、常に相手に説明責任を求めるのに、いざ自分が逆の立場になった際、すぐに訴訟に持ち込み、「あとは弁護士のほうから」と言うのは、あまりにもお粗末に映ったことだろう。

凡戦では致命的だった終盤でのエラー

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イラスト/のり

 続いて、自公推薦の増田氏も追い上げが期待されていたものの、届かなかった。

 「本命は増田氏でした。小池氏には組織がない。鳥越氏は、肝心の連合は自主投票となり、宇都宮氏支持者の不満も多かったため、野党連合が必ずしも一枚岩にならないと見られていた。なので、組織力では“自公連合”がダントツだと自信を持っていたのです」(永田町関係者)

 しかし、最初のつまずきは、自民党都連の通達文書だった。「都知事選における党紀の保持について」と題された文書には、「党公認・推薦候補者以外の者を応援してはならない/各級議員(親族含む)が非推薦の候補を応援した場合は除名等処分の対象となる」と記されていた。このカッコ書きが大きく報じられ、「まるで北朝鮮」と批判の的となった。

 必死でカバーしてきたものの、終盤戦に差し掛かったところで、タイムリーエラーが出た。26日午後、自民党本部で開かれた決起集会で、石原慎太郎元都知事が「大年増の厚化粧がいるんだな、これが。困ったもんでね」と、小池氏を批判。加えて、長男で自民党都連会長の伸晃氏が「小池候補は自民党の人間ではない!」と声を張り上げた。

 このことがニュースで流れて、思わずニンマリとしたのは小池陣営だっただろう。選挙は、野球に例えれば、いかに効率良く得点していくか。一方で、いかにエラーによる失点を防ぐか、に尽きるものだ。

 今回の都知事選は、有力3チームのバトルロイヤルの様相を呈していたが、どこも突出した力を持ってはいなかった。いわゆる凡戦模様だったわけだが、そうなった場合、エラーをしたほうが負けるのは自明の理。とりわけ、終盤でのタイムリーエラーが致命的なのは、説明するまでもない。増田氏は強力なバックを抱えていたにもかかわらず、浮上することは叶わなかった。

 かくして、都知事の椅子を手に入れた小池氏。今後の都政の舵取りに注目である。

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