政治・経済

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イラスト/のり

私立高校の授業料無料化に隠された意図

 本稿が読者の目に触れるころには、東京都議会で論戦が繰り広げられている。年に4回の定例会の中でも、来年度予算をめぐって知事サイドと都議会各党が対決姿勢を示す議会だ。

 小池百合子・東京都知事にとっては、都議会で圧倒的な力を発揮してきた都議会自民党の力を削いで、今夏の都議選でも独自候補を擁立するなどして都議会での多数派を形成したい。

 「ことあるごとに、自民党の権益や力の源泉に手を突っ込む戦略」(小池氏周辺)だ。

 その1つが、今議会に提案されている私立高校授業料の無償化だ。

 予算案では、年収760万円未満の世帯を対象に平均授業料44万2千円を都と国で給付するとしている。これで私立高に通う都内在住の生徒16万7千人のうち、5万1千人の授業料が実質的には無償化される。

 これは教育改革の一環として、小池知事が教育の機会均等として目指してきた政策だが、実は二次的な効果があるのだ。それは、都議会自民党の権限を弱体化させるという「隠された仕掛け」とも言えるものだ。

 都庁幹部はその「仕掛け」についてこう話す。

 「東京は地方と違って私立に通わせる親や通いたい子どもが多い。すると、都議会議員にとって私学の補助金をアップさせるといった訴えが若い母親などの支持を得るのです。都議会自民党は過去私学の団体に対して補助金や助成を約束し集票をはかってきました。ところが、小池さんは今回の予算で、補助金などのさらに上を行く、授業料実質無償化を決めた。私学団体や親御さんはもう自民党に頼む必要もなくなり、相対的に自民党の選挙での痛手になるのです」

 このようなさまざまな「仕掛け」を駆使して、都政改革や情報公開などで攻める姿勢を見せ続け、世論の支持をキープしたい小池知事だが、ここへきて「豊洲新市場」もまた新たな展開になりつつある。

豊洲問題は白紙撤回の可能性も浮上

 「想定を超える高い数値が出て驚いている」(小池知事)

 築地市場を移転する計画の豊洲新市場について、1月14日、第9回目の地下水モニタリング調査の結果が発表されたが、何とベンゼンが環境基準値の79倍、さらに猛毒の有害物質であるシアンも初めて検出された。

 「モニタリング調査は客観的で科学的。にもかかわらずこれまでと全然違う結果が出たとなると、もう今後どんなに科学的に調査したと言ったって信用されない。小池知事周辺には『白紙もやむなし』の空気が出てきている」(都庁幹部)という。

 実は、今後「白紙」に向かうかどうかの鍵を握る小池知事の政策ブレーンがいる。調査の中心にいる小島敏郎・元環境省審議官だ。小池氏が環境相時代からの付き合いだが、最近小島氏と会った元参議院議員が「豊洲の件をいろいろ話したが、彼は白紙という選択肢も排除していないように感じた」と話している。

 「小島さんは小池知事の就任前後から既に有識者や建築の専門家などと話しながら、築地を再整備して豊洲は物流拠点などにという案もひとつとしていた。小池知事もかつて国会議員時代に築地問題に触れ、築地での再整備が望ましいと公言しています。つまり、白紙案は水面下で生きてきた。豊洲をスマートシティにするなど環境政策の象徴の場所にするという案も知事周辺の一部では密かに語られている」(前出元参議院議員)

 豊洲問題は小池知事にとっては「パンドラの箱」のようなものだった。汚染対策の盛り土の未整備を都が隠ぺいしていたことが発覚する一方で、市場関係者の早期移転を望む声に押されるなど解決への道のりに苦慮していた。しかし、今回のモニタリング調査の結果は、「これで白紙の可能性アリ。小池知事の背中を押すきっかけになり、豊洲問題が前へ進むかもしれない」(前出小池氏周辺)というのだ。

 小池知事は1月20日の記者会見で、責任問題に踏み込むことを明らかにした。

 「豊洲の土地購入をめぐって石原慎太郎・元都知事の責任を問う住民訴訟が起こされているが、小池さんが就任する前まで都は石原さんに責任はないという立場を示してきた。ところがこれを都の弁護団を入れ替えてもう一度責任についての見解を再検討するというのです。つまり石原さんの責任という本丸に切り込んだ上で移転も白紙にするのではないか。白紙のインパクトは大きい。改革や情報公開の象徴として小池さんの支持は上がるでしょう」(前出都庁幹部)

 次々と繰り出す小池知事の「仕掛け」にはしたたかさが増してきた。

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