文化・ライフ

2040年のピークに向けて拡大する葬儀市場

 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、2015年の死亡者数は129万人と戦後最高を記録。今後も死亡人口が減ることはなく、ピークを迎える40年の166万9千人まで増加が続く。

 葬儀業界の市場規模は1兆8642億円(死亡人口×葬儀平均単価144万5千円)。死亡人口増加に加え、単価底打ちで市場はゆるやかに拡大している。ただし、単価に飲食や生花を含むか否か、葬儀費用は日本消費者協会のアンケート調査を元にしているが、地域差があることと、そもそもこの調査は一般的な葬儀を行った人を対象にしており、近親者のみが参列して行う家族葬や、火葬だけを行う直葬(ちょくそう)の数字が含まれていないため、高めの数字となっている。

 こうしたことを背景に、葬儀市場には新規参入が相次ぐ。葬儀専門業者と冠婚葬祭互助会が市場を二分。その他、JAや生協、電鉄、ホテルなど異業種からの参入も続いている。

 専門葬儀社系は地域密着型の零細企業が多く、開業にあたって特別な資格や許認可を必要としないため、実際の事業所数を正確に把握することは困難で、その数は全国で5千~6千ほど。葬儀業界全体の売り上げのうち、40%強が専門葬儀社によるものと推測される。二大勢力のひとつ冠婚葬祭互助会の事業者数は約300だが、施行件数は年間35万件、売り上げは全体の40%に達するとみられる。

 サービス業として葬儀を請け負う葬儀社が誕生したのは明治になってから。日清、日露などの戦争を経て葬祭業は徐々に発展を遂げた。当初は装具を貸し出す単純な役割だったが、寺院との折衝や式場の設営、火葬や埋葬の手配、飲食や物品の調達、医療機関や行政(警察)との連絡、花や写真の手配まで行う総合コーディネーター業に成長していく。

 現在、日本の葬儀の大きな特徴は、ほぼ100%火葬によって遺体が処理されていることにある。欧米各国やアジアの諸国では、大半が土葬中心。日本でも明治初期まで葬送の多くは土葬だった。しかし明治30年代、都市化が進んで人口が増えると共に、土葬場所の確保が問題になった。近代的な火葬炉が登場し、併せて1897年に伝染病予防法が制定され、火葬が一般的となった。

 戦後の混乱期になると冠婚葬祭互助会が誕生。毎月、会員から一定金額を掛け金として徴収して積み立て、結婚式や葬儀などの際に、契約に定められた役務や取り次ぎを行う業態だ。高度経済成長の波に乗り、ベビーブームとともに1990年代後半以降、互助会や葬儀社による斎場建設ラッシュが続いた。

「安くて早い」ことが評価されるとは限らない

20170221SOUGI_SOURON_P01 こうした中で、昨今は家族葬、直葬が増えている。少子高齢化や価値観の多様化によって普及し、首都圏では葬儀の3割を超えるまでになっている。葬儀ビジネスは高齢化時代の勝ち組産業と言われたが、社葬の減少、お別れ会でホテルと競合、JAなど新規参入組とも競合するなど不安材料は多い。

 日本全体が若々しかったころは、死や葬儀は身近なものではなかった。だが高齢化比率が25%を超え、出生数より死亡者数が多くなった昨今は、かつて以上に死は身近なものになっている。葬儀の役割には、遺体の処理を適切に執り行う(物理的理由)、宗教的儀式により魂を鎮める(宗教的理由)、その人が亡くなったことを広く知らせる(社会的理由)、残された家族の心を癒す(精神的理由)などがある。

 社葬・お別れ会の場合は、会社の発展に貢献した故人を偲び、功績を讃える、顧客や取引先などの関係者および社内外に後継者、新組織、新体制、方針を知らせる機会、儀式を一致協力して行うことで社員の結束、一体感を高める重要な機会になる、といった役割がある。

 葬儀は簡略化の方向に確実に向かっているが、個人も企業も、前記の葬儀の役割をすべて蔑ろにしていいのだろうか。そもそも地球上で、いかなる民族も葬送儀礼のない社会はない。

 サービス業は、製造業とは違い、「安くて早い」ことがいつも評価されるとは限らない。何より重要なのは、団塊世代が葬儀を望むかだろう。団塊世代の先頭は1947年生まれ。2017年には70代に差し掛かる。団塊世代は過去の日本のライフスタイルを大きく変えてきた世代だけに、この世代が「葬式もお墓もいらない」と言い出したら市場環境は大きく変わりかねない。

 サービス業は、感動体験と価格の両方が揃って、初めてリピートオーダーを貰える世界だ。葬送の世界は、まさにサービス業の最前線といえる。葬儀も工夫次第で顧客満足度を大きく高めることができるはずである。やり方次第で伸び代があるのではないだろうか。

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