文化・ライフ

今回のゲストは、都心を中心に次々と新しいホテルをオープンさせている、アパホテルの元谷芙美子社長です。女性社長にとって日本は冷たいと言われますが、元谷さんは逆に「日本は女性社長に優しい」と言い切ります。元谷さんが語る女性ならではの特権とは――。

世界417ホテルのアパのネットワーク

佐藤 最近どこに行ってもアパホテルを見かけます。随分と数が増えましたね。

20170124MOTOYA_P01

(もとや・ふみこ)1947年福井県生まれ。藤島高校卒業後福井信用金庫入庫。小松信用金庫に勤める元谷外志雄氏と知り合い、結婚。外志雄氏が企業した信金開発(現アパ株式会社)取締役を経て94年からアパホテル社長。2001年法政大学に入学し05年早稲田大学大学院に入学、博士課程を修了した。東京国際大学客員教授。

元谷 東京都心の直営ホテルだけで38ホテル8437室が営業中です。このうち32ホテルが2010年以降にオープンしたものです。さらに建築・設計中の都心直営ホテルは24ホテル、6395室あって、すべて完成すれば62ホテル1万4832室になります。これ以外にも全国でアパホテルネットワーク(直営・海外・FC・パートナーホテル)を展開しており、合計で417ホテル(建築・設計中、海外、FC、パートナーホテルを含む)となります。19年には日本最大級客室数となる2311室のホテルを横浜にオープンさせます。

佐藤 しかも15年にニューヨークからほど近いところにアパホテルをオープンさせるなど、海外展開にも積極的です。

元谷 16年を世界戦略元年と位置付け、アメリカ、カナダで39ホテルを運営するCoast Hotelsを取得しました。今後はフランチャイズ方式を基本にM&Aや不動産の取得も含め、海外での展開を本格化させていきます。北米の次はアジアでの展開を目指します。

佐藤 アパのおもてなしが世界に広がっていくわけですね。

元谷 アパホテルでは折り鶴を浴衣の上に置いてありますが、海外でも同じです。これはおもてなしの気持ちを伝えるために、私が始めたものです。

 欧米のホテルでは、お客さまとスタッフはご主人と召使の「奉仕」の関係です。でもアパホテルは、「お客さまとスタッフは対等」という理念があります。アメリカでも、スタッフは宿泊していただけるお客さまに誇りをもっておもてなしをしています。

ホテルの仕事と主婦の仕事の親和性

佐藤 元谷さんがアパホテルの社長に就任したのは22年前のことです。今は女性社長の数も増えましたが、当時はほとんどいませんでしたよね。ある意味、女性経営者の地平を切り拓いてこられたわけですが、苦労もあったのでは。

元谷 苦労したことはありません。日本は、女性に優しい国です。女性という理由でメディアも私のことを取り上げてくださるわけですから。それに甘えてはいけませんし、何かあった時は毅然とした対応をしなければいけませんが、とても恵まれた22年間だと思います。

 それにホテルの仕事と主婦の仕事は重なる部分が多いですから、女性のほうが向いているかもしれませんね。料理やおもてなしも、女性のほうが男性よりもきめ細やかな心配りができるのではないでしょうか。

佐藤 今の世の中、何が起きるか分かりません。天変地異も起きています。ホテルの場合、お客さまの安全を第一に考えなければなりませんから、社長は気が休まる時がありませんね。

20170124MOTOYA_P02元谷 アパホテルネットワークは6万7570室になります。万に一つのことが起きると、1日6件もの事故が起きることになります。これをゼロにするために、いつも気を使っていますし、本社の会議でも現場でも、常に課題にしています。それが浸透したお陰で、例えばすべてのホテルにAED(自動体外式除細動器)を置いてありますし、社員の9割以上がAEDを扱える救命技能認定証を持っています。先日はホテル内での救命活動に対して、東京消防庁より消防総監賞を頂きました。

佐藤 今後の目標はなんですか。

元谷 アパグループでは、20年までに全世界で10万室という目標を立てています。でも規模を追求してもゴールはありません。もともとビッグカンパニーではなくグッドカンパニーを目指してきました。お客さまにとっても従業員にも社会にとっても、いい会社でありたいと思っています。(後編に続く)

似顔絵=佐藤有美 写真=佐藤元樹

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