文化・ライフ

今回のゲストは、家庭問題の専門家として多くの方々の相談に乗っている池内ひろ美さんです。池内さんご自身も離婚されて、娘さんを育てながら働いてこられました。女性の社会進出が目覚ましいですが、だからこそ池内さんは「男は男らしく、女は女らしく」と言い切ります。

池内ひろ美氏が家庭問題コンサルタントとして活躍するまでの経緯

佐藤 池内さんは家庭問題コンサルタントとして多くの方の相談に乗っているほか、テレビのコメンテーターとしてもご活躍なさっています。どんなきっかけでこの仕事に就くことになられたのですか。

20170321IKEUCHI_P01

(いけうち・ひろみ)1961年、岡山市生まれ。32歳の時に離婚。95年から著作活動を行い、96年に「東京家族ラボ」を主宰し家族問題コンサルタントとして活動する。八州学園大学教授、内閣府後援女性活躍推進委員会理事なども務めている。

池内 私自身、離婚経験者です。20年以上前のことですが、当時は大阪に住んでいて、一人娘を連れて実家のある岡山に帰りたいと思いましたが、両親から、「女三界に家なし。親を頼るなら頭を下げて夫のところに戻りなさい」と言われて。やむを得ず、泣きながら東京に出てきました。仕事のあてもありません。でも高校時代の先生から「あなたは字がきれいだから、本を書く人になる」と言われたのを思い出して、自分の離婚の経験を本にしました。それが評価されると同時に、いろんな方から相談が寄せられるようになりました。

佐藤 子どもを連れた女性が一人で生きていくのは厳しかった時代ですね。社会の仕組みそのものが、女性は家族を支えるようにできていました。共働きでも家事は女性の役割、それを放棄した女性は、途端に社会から厳しい目で見られました。

池内 古い時代の日本では、夫の活躍や子どもの出世は、妻、そして母親としての女性たちの犠牲の上に成り立っていたのに、誰も疑問を感じていませんでした。でも私たちは、そうではないと思った初めての世代です。

佐藤 小池都知事のように、男社会の中でも活躍する女性が増えてきました。社会もようやくそれを受け入れるようになってきましたね。

池内 世の中は大きく変わりました。それに伴い、女性の生き方や位置付けも変わらざるを得ません。それまでは家に縛られながらも家に守られていましたが、今は、自由を得た代わりに家は守ってくれません。自分で自らの生きる道を決めなくてはならなくなりました。

池内ひろ美氏が夫婦別姓に反対する理由とは

佐藤 安倍内閣は女性活躍推進を前面に掲げています。しかし子どもが小さいときは、預けて働くよりも家庭にいて子育てに専念したいと思う女性も多くいます。

池内 いろいろな考え方があっていいと思います。大事なことは、男女は違うということを認識した上で、男は男らしく、女は女らしく、その良さを互いに尊重し、生かしながら協力しあうことです。これは家事でも仕事でも同じです。

佐藤 夫婦の在り方も変わってきました。LGBTの方でもパートナーの権利が夫婦同様に認められる一方、事実婚や夫婦別姓なども増えています。

池内 世界の20%で、同性婚が認められるようになりました。でも家族というのは子どもをつくって次の世代に引き継ぐという役割もあります。ですから日本は多様性を認めると同時に、養子縁組がしやすくなるような施策も必要だと思います。

 でも私は夫婦別姓には反対です。海外では認められているといいますが、中国の場合は、夫の姓を名乗らせてもらえないという文化的背景があって別姓になっています。そういう文化の違いを無視して別姓を導入するというのはおかしいと思います。

佐藤 相談に乗るときに気を付けていることは何ですか。

20170321IKEUCHI_P02池内 夫婦それぞれの経歴やパーソナリティーを知ることです。夫婦は2つの違う文化がぶつかってひとつの文化をつくっていきます。問題を解決するには、それぞれの文化が分からなければなりません。昔だったら、お互いの釣書を知っている仲人さんが相談に乗っていましたが、今の時代は仲人をたてる人などいなくなりました。だからその役をやろうと。もうひとつは、誰も悪くないということです。家族の問題でどちらかが100%悪いということはありません。その立場でアドバイスさせていただいています。

池内ひろ美氏が従事する女性の健康と尊厳を守る活動

佐藤 池内さんは家族問題コンサルタントとして活躍される一方で、NGO法人「Girl Power」を立ち上げ、南インドの少女の支援を行っているそうですね。

20170404IKEUCHI_P01

池内 途上国の少女の尊厳を守るプロジェクトを行っています。インド南部のタミル・ナドゥ州の少女は貧しく、生理の意味も30人に1人しか知りません。そこで現地のNGOと組んで、清潔で安全な生理用品を提供し、同時に女性の健康と尊厳を守るためのワークショップを開催しています。

 母親をがんで亡くした少女などは、生理の出血を見て、母親と同じがんだと勘違いして怯えて暮らしていました。生理や妊娠のメカニズムを知ることで、そういう不安がなくなり、とても喜んでいました。

佐藤 途上国の女性たちを支援するための組織なんですか。

池内 女性のベースアップのためのNGOです。そういう活動がやりたくて、安倍昭恵さん(安倍晋三夫人)たちに声を掛けてスタートしました。

 なぜ、海外の支援を行っているかというと、日本の女性にもっと日本の文化を知ってほしいからです。でもそのためには、世界を知らなくてはいけません。

 世界には5・3億人の字の読めない女性たちがいます。字が読めないため、地雷が埋設されている地区の注意を呼び掛ける看板を読むことができず足を失った少女もいます。また南インドでは女性の尊厳が認められておらず、レイプも頻発しています。

 そんな世界の女性たちのことを知ってほしい。そうすれば、日本に生まれたことがものすごく恵まれていることが分かります。

佐藤 国内ではどんな活動を行っているのですか。

池内 NGOとして、これをやらなければならないということよりも、何かやりたいことがある人がいたら、その人がリーダーになってプロジェクトを動かし始めるんです。ですから活動は多岐にわたります。女性のスタートアップ支援も行っていますし、各種セミナーも行っています。また薬物やアルコールの依存症の女性の支援を行っている支部もあります。

自分の意見と責任と覚悟を持った女性を

佐藤 情熱的な赤のタオルがシンボルになっていますね。

池内 イベントがあると、メンバーはみなこのタオルを持って集まります。最近ではオリジナル商品の開発にも取り組んでいて、昨年には「フランク三浦」とコラボして時計をつくり、メンバーに販売しています。

佐藤 ああ、フランク三浦! 大阪らしいパロディー商品で、しかも値段は本家に比べてはるかにかわいい。

池内 そんないろんな取り組みを通じて、女子力を上げていきたいと考えています。能力の高いハイスペック女子が増えてきましたが、せっかくのスペックを生かせていないケースも多い。女子力があれば、この問題はクリアできます。女子力とは、男にもてるということではなく、かわいげがありながら、自分の意見と、やりたいことに責任を持ち、やりきる覚悟を持つことです。

 女性の中には命令しかできない人もいますが、これでは物事はうまくいきません。でも覚悟があれば、頭を下げてお願いすることもできます。

 そんな女性が増えてくれば、日本の社会はもっと素晴らしくなると思います。


対談を終えて

20170404IKEUCHI_P02池内さんが離婚をされた20年前の日本は、子どもを抱えた女性が一人で生きるには今よりもっと厳しい社会でした。でも池内さんは、その苦労を感じさせないほどチャーミングです。だからこそ池内さんを慕ってGirl Powerに多くの人たちが参加されるのだと思いま

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

グローバル化が進む中、多くのビジネスパーソンにとって英語力の向上は大きな関心事の1つ。日本人が相変わらず英語を苦手とする理由と解決策について、英語学習アプリで展開するポリグロッツの山口隼也社長を取材すると共に、同社が提供するサービスについても聞いた。(取材・文=吉田浩)日本でますます高まる英語学習熱  201…

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る