マネジメント

経営理念、事業計画と連動した人材育成型の人事評価制度は、中小企業の継続的な成長に欠かせないものである。会社が求める働き方を評価項目によって具体的に示し、社員をフォローすることで、社員一人ひとりの力を引き上げることが可能だ。そうして、人的資源を最大限に伸ばすことで、企業の成長は加速する。本連載では、人事評価制度改革によって業績を伸ばした中小企業の事例を紹介しながら、社員が育つ人事評価制度の仕組み化、設計について分析していく。

人材育成と人事評価をいかに連動させるか

埼玉・西東京を中心に展開するアクト

 今回は、電動工具を中心としたリサイクルショップを埼玉県・西東京エリアで展開する株式会社アクトの事例を紹介する。

 アクトは1975年に自動車の修理・解体業として創業し、91年に法人化。修理技術を活かし、リサイクルショップを展開した。2017年6月期の売上高は10億8100万円となり、電動工具分野では、業界トップ企業へと成長を遂げた。

 この成長の基盤を作ったのが、人材育成型の人事評価制度の導入である。アクトは社員の集団退職をきっかけに、経営の抜本的な見直しを図ったのだ。

 2009年、「会社は俺たちのことを見てくれない」と、会社の人事評価制度に不満を抱き、1店舗のスタッフほぼ全員の10人が集団退職をした。当時のアルバイトを含めスタッフ30人のうち、10人が一気に辞めるという異常事態である。

 当時の評価は社長の采配によるものが大きく、評価基準に明確な根拠がなかったため、社員が不満を募らせていた結果の出来事だった。

 当時、マネージャーだった現社長の伊藤啓介氏は、会社を根本から変えることを決意。会社経営に関する情報収集を経て、社員と理念の共有ができていなかったことが集団退職の原因だと気付く。

 当時のアクトにとって、会社存続のためには、社員の納得感の高い賃金制度の導入が不可欠だった。評価制度は、運用次第で、単に賃金を決定するものではなく、経営理念や事業計画実現のために人材を育てる仕組みとなる。経営理念、事業計画、人材育成と連動した人事評価の仕組み作りが企業の継続的な成長につながるのだ。

経営者の思いが具体的に表現された人事評価制度

アクト伊藤社長

社長の伊藤啓介氏

 伊藤社長は、「リユースサービスを通じて、お客さまに幸せをもたらします」という経営理念を制定し、ビジョンを「全国No.1」とした。

 2011年の7月からスタートし、2016年6月期までに売上高倍増を目標とした「5カ年事業計画」を作り上げ、これらに沿った「人材育成計画」も策定。「人間力が成長し、チャレンジ精神と思いやりにあふれた人材の宝庫にする」という「人事理念」のもと、人材育成に取組み始めた。

 人材育成についての経営者の思いが具体的な言葉となって落とし込まれている評価制度は、社員の成長に大きく貢献する。アクトの場合も、多くの評価項目の中に人事理念が具体化されている。

 例えば、成果項目のひとつの「経営理念の理解」。新入社員レベルでは、理念の暗唱ができることと内容の正しい理解を求めており、マネージャーレベルになると、自ら規範となって経営理念を部下に浸透させる役割が求められる。

 評価項目の中でも、特徴的なのが、「情意項目」だ。社会人としての基本姿勢を評価するもので、「謙虚」「勇気」などの7項目を設定。人間的な成長を重要視するアクトの姿勢が表れているといえる。

 「謙虚」の評価基準は、「他者を皆先生と考え、素直な心で愛情、敬意、感謝を伴った行動ができていた」となっており、かなり具体的な内容となっている。

徹底的にPDCAを回し、社内に制度を根付かせる

 新たな人事評価制度を制定しても、それを社内に定着させることは容易なことではない。

 伊藤社長が徹底したのは、「アクションプラン」と「評価制度」のPDCAを回すことだった。スタッフ全員の育成面談に参加し、評価結果や一人ひとりの目標、毎月の進捗状況について社長も一緒になってアドバイスを行う。経営理念を含めた自らの思いを社員へ伝え続けた。

 そういった日々の地道な取組みによって、社員のモチベーションは高まり、成長を目の当たりにすることも増えたという。当初は反発していた店長たちも、効果を実感し、積極的に取組むようになった。

 こうしてアクトは、社員全員を巻き込みながら、経営理念、事業計画、人材育成と連動した人事評価の仕組み作りに成功した。その結果、2016年6月期の売上高は、5カ年計画「5年で売上げ倍増」の目標を上回る8億9500万円となった。

 人材育成型の人事評価制度のPDCAがうまく回り出すと、社員の成長スピードは加速し、モチベーションも高まる。人事評価制度と、経営理念、事業計画がきちんと連動していれば、社員の成長は、直接業績向上につながるのだ。

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