政治・経済

マイナス金利の影響で冬の時代が続く金融業界。中でも新規融資先を見つけるのがむずかしい地方銀行の置かれた環境は厳しい。そこで頼ったのが、高金利で個人に貸し出すカードローン。右肩上がりで貸し出しを伸ばしてきたが、社会的批判の高まりで規制せざるを得なくなってきた。文=関 慎夫

9%の伸びを示したアパマンローン融資

kinyucyou

 金融庁が10月25日に発表した「金融レポート」が話題を呼んでいる。このレポートは、2016年9月に発表した金融行政方針をもとに、その実績を評価したものだ。

 レポートはまず、「銀行の不良債権比率は歴史的にも国際的にも低い水準」としながらも、融資業務に関しては「貸出利ザヤの縮小から減少が継続。持続可能なビジネスモデルの構築が課題」と現状を説明した上で、地銀については「本業利益(貸出・手数料ビジネス)がマイナスとなる銀行が年々増加」と、地銀の置かれた厳しい状況を伝えている。

 前3月決算の数字を見ても、ほとんどの地銀の本業利益は減益となっており、半分以上が赤字決算だった。

 アベノミクス下での景気拡大は戦後2番目の長さ(58カ月)を継続中だが、その実感は乏しい。中でも地方の経済実態は厳しく、産業集積のある太平洋ベルト地帯を除けば、停滞しているところがほとんどだ。

 地方経済が停滞すれば、企業の資金需要も限られる。融資案件が少ないだけに、一つの案件を取り合うことになる。その結果、利ザヤは縮小し、それが銀行の体力を奪っていく。そしてこの状況が好転する可能性は現段階では極めて低い。

 では、地銀はどうやって稼いでいるのかというと、不動産融資とカードローンが2本柱となっている。

 メガバンクでも不動産融資は増えているが、それでも前年対比の増加率は4%前後。ところが地銀の場合は9%近い。しかもその大半が中堅・中小企業向け、もしくは個人への貸し出しだ。

 こうした不動産ローン、いわゆるアパート・賃貸マンション(アパマン)ローンが増えているのは、15年1月に相続税法が改正されたためだ。この改正によって、これまで〈5千万円+(1千万円×法定相続人の数)〉だった基礎控除額が、〈3千万円+(600万円×法定相続人の数)〉へと大きく減額された。そこで節税対策としてアパマンローンが活用されるようになった。そのスキームは次のようなものだ。

 不動産所有者にアパマン経営を持ち掛けるのは建設・管理デベロッパー。デベロッパーは地銀とローン提携しており、入居者の払う賃貸料金をアパマンローンの返済原資に充てるというスキームだ。これならば、不動産相続にかかる相続税をかぎりなくゼロにすることができるため、団塊世代の土地所有者がデベロッパーの誘いに応じている。

 もうひとつのスキームは、デベロッパーが土地を取得して賃貸マンションを建設。1室ごとに区分所有の投資をセールスするというパターンだ。この場合も提携先の銀行が取得費用のためのローンを提供。入居者の賃貸料金でローン返済しながら、その利ザヤを稼ぐ。これに飛びついたのは働き盛りのサラリーマン。自分が高齢者になった時に本当に年金がもらえるのか、不安を感じている世代の人たちだ。その不安を少しでも解消しようと、老後の蓄えのつもりで賃貸マンションの区分所有を申し込む。

 有力な融資先の乏しい地銀にとってアパマンローンは渡りに船だった。その結果が、前述のような融資残高の激増だ。

 もちろん、融資がきちんと返済さえされていれば問題はない。気になるのは金融レポートには次のような記述があることだ。

 「築年数の経過とともにアパート収支のみで返済資金を賄えない借り手が増える傾向がある。金融機関は、金利上昇や空室・賃料低下等のリスクを適切に評価し、借り手に分かりやすく伝える必要がある」

 アパマンの建設は近年、高い水準で推移している。その結果、地域によっては部屋がだぶつく。当然、空室物件も出てくる。

 ほとんどのアパマンデベロッパーとの契約では、家賃保証が入っている。つまり空室となってもデベロッパーの責任で所有者に家賃を払い続けるという契約だ。これならリスクはないように思える。しかし契約の中には、条件見直し条項、つまり空室が続くなどのやむを得ない場合は家賃を下げるとの条項が入っていることも多い。

 新築物件の場合は、定められた家賃でも入居者を探すのは難しくない。それが経年劣化するに従い、家賃を下げなければ入居者が集まらなくなる。見直し条項があれば、当然、所有者に支払われる家賃は少なくなり、場合によってはローン支払い額に達しないケースも出てくる、と金融レポートは指摘する。

 金融庁の行ったサンプル調査によると、築後5年のアパマンの空室率が2・6%なのに対し、10年7・1%、15年8・5%と増え、20年では11・6%と2ケタを超える。大半のアパマンローンは30年であることを考えると、最後の10年はかなりの空室リスクを抱えることになる。もし家賃でローンを払えなくなったとしても、銀行は土地・建物を担保としているため貸し倒れリスクはそれほど大きくないが、もし担保権を行使するなら、バブル期の不動産担保融資と何ら変わらないことになる。金融庁がここまで地銀に対して指導してきたのは「事業性ローン」の強化である。地銀側はこれまでアパマンローンを事業性ローンと主張してきたが、返済資金が賄えないケースが増えれば、その強弁は通らないどころか、金融庁の指導が入る可能性もある。少なくとも、これまでのようにアパマンローン融資を増やすことはむずかしい。

5年前から急増したカードローン融資

 もうひとつ、地銀の貸し出しが増えているのがカードローンだ。銀行のカードローン貸出残高は3兆円強で安定していたが、5年ほど前から急増、16年度には5兆6千億円に達している。

 カードローン融資が増えたのは、10年に改正貸金業法が施行されたためだ。これにより消費者金融業者は、年収の3分の1を超えて貸すことができなくなった。つまり年収300万円の人がA社から100万円を借りている場合、他の消費者金融業者も貸すことはできない。

 ところが銀行は総量規制の枠に含まれない。そのため消費者金融で借りられなくなった人がカードローンに流れてきたために貸出残高が右肩上がりで増えていった。カードローン金利は10%前後。低金利時代にあっては信じられない水準だ。その分リスクもあるが、そのリスクを補ってあまりあるほど「おいしい」融資だ。融資先開拓に困る地銀が飛びつくのも当然だろう。

カードローンも総量規制導入へ

 しかし借りる相手が消費者金融から銀行へと変わったところで実態は変わらない。「銀行は返済能力があるかどうか厳しく審査する。返済能力があるのに年収の3分の1を超えたという理由で一律に断るのはむしろ不親切」と主張するが、特に地銀の場合、そこまでの審査能力があるとは思えない。事実、貸出残高が増えるに伴い多重債務者が増え、自己破産するケースも増えていった。

 そこで日弁連は17年4月に銀行に対して自主的に総量規制を行うよう申し入れた。これを受けて9月には、広島銀行、京都銀行など複数の地銀が総量規制を導入した。さらに秋田銀行などは年収の2分の1に制限するなど独自の基準を設定した。

 金融レポートではカードローンについては次のように触れている。

 「低金利環境を背景に近年残高が増加し、過剰な貸付けが行われているとの批判。現在、各銀行において、全国銀行協会の『申し合わせ』を踏まえた対応を行っているが、金融庁は、貸金業法における多重債務発生抑制の趣旨等を踏まえ、業務運営の適正化をスピード感を持って推進する」

 つまり、これ以上、過剰な貸し付けが増えるようであれば規制に乗り出すという最後通牒である。銀行としても従わざるを得ない。恐らく今後、カードローン貸出が大幅に増えるということはなくなるはずだ。

 となると問題は、今後地銀はどうやって稼いでいくかである。

 金融レポートは「早期に、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた具体策を検討し、実践する必要がある」と締めているが、持続可能なビジネスモデルの構築が簡単でないから、アパマンローンとカードローンに頼らざるを得なかったのだ。

 金融庁は経営改革の進まない地銀に対する検査の検討を始めている。問題を抱える銀行に対しては他行との再編などの対策を迫る可能性もあるという。これまでも地銀の再編は徐々に進んできたが、アパマンローンとカードローンの見直しが、その動きを加速させることになりそうだ。

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