マネジメント

uemura Tsugumi.1

(うえむら・つぐみ)1978年生まれ、東京都出身。99年、法政大学経営学部在学時より設立2年目のサイバーエージェントの内定者インターンを開始。 2000年に同社へ入社、社長秘書を経て広報専任として広報部署を立ち上げ。 08年より広報責任者として全社の広報統括と企業広報を担当。(株)宣伝会議主催「広報リーダー養成講座」講師 著書は2016年2月『成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術』(日本実業出版社)

上村嗣美氏の思い「サイバーエージェントの可能性を知ってほしい」

  この人に任せておけば安心――いちメディアに携わる人間から見たサイバーエージェントの上村嗣美氏はそんなイメージだろうか。

 同社社長の藤田晋氏のインタビューを始め、筆者は何度か上村氏に仕事を依頼したことがある。多くの企業の広報担当者と接してきた経験から言っても、その的確な対応力と安定感は際立っている。ひと言で言えば「印象に残る広報」だ。

 上村氏が入社したころ、サイバーエージェントはまだ従業員30人前後の小さな会社だった。インターネットビジネスの将来性と、自分と同世代の20代の経営者や社員が新たな産業にチャレンジしている姿に共感したのが入社の理由だ。

 広報を志したのは、入社が決まったときに大学の友人やゼミの教官から「なぜ?」と言われた記憶も残っていたからだという。

 「もっと会社の存在と可能性を世の中に知ってほしい。会社の成長に貢献したい」という思いが沸いた。それができるのが広報という業務だった。

 インターネット広告代理店としてスタートしたサイバーエージェントでは、当初は企業広報が業務の中心だった。

 だが、ブログサービスの「Ameba」が立ち上がり、個別ユーザー向けの広報にも軸足を置くようになった。上村氏は、ブログそのものの認知向上と利用者拡大に取り組み、その年に話題になったブロガーを表彰する「Blog of the year」や、人気ブロガーのギネス認定といった企画を広報主導で仕掛けていった。

 「経験者も教えてくれる人もいない中で試行錯誤してきたことは、大きな自信につながりました」と、上村氏は言う。

広報という職種の価値を向上させたい上村嗣美氏

 企業の広報担当者と話をすると、「プレスリリースを打ってもメディアから反応がない」「なかなか取材に来てもらえない」といった声がよく聞かれる。「印象に残る」「また一緒に仕事がしたい」とメディアに思わせるのは、なかなか難しい。

 上村氏が心がけているのは、「自社の売り込みだけではなく、その先の消費者のことまで想像して、社会の動向を背景に、ネット業界やサイバーエージェントでどんなことが起きているのかを、自社や周囲の状況を含めて伝えること」だという。

 メディアの立場から言わせていただくと、確かに売り込みだけの広報を相手にするのはしんどい。逆に、客観的で正確な情報を高いスピード感で提供してくれる広報であれば、関係を深めたくなる。上村氏の場合は、今やベテラン記者からも「ネット業界で今何が起きているのか、知りたい時には上村さんに聞きに行く」と言われるまでになった。

 自社製品やサービスの売り込みだけでなく、メディアや消費者との良好な関係を築くことは、SNSなどが発達した現在ではこれまで以上に重要になってくる。この点について上村氏は

 「広報が社会と会社をつなぐコミュニケーションエンジンである、という役割は変わりませんが、メディアが多様化し、SNSの浸透で一般消費者の情報発信が進む中、会社や商品についてマスメディアを通じて魅力的に伝えるだけでなく、さまざまな手法を通じて会社のビジョンや戦略を伝えていくことが必要になります。さらに、社会の目を社内に伝え、経営や事業に反映させていく創造性が必要となり、より企業価値を高める社内コンサルのような役割も強く求められていくのではと思っています」と、語る。

 広報の業務内容、存在意義が変わりつつある時代の中で、上村氏はどんなキャリア像を描いているのだろうか。

 「会社の成長と共に、自分の広報のキャリアを築き、入社時30名だった社員数は現在4千名を超えるまでになりました。とはいえ、まだまだ会社自体が新たなチャレンジの途中なので、広報の仕事の面白さをもっと知ってもらえるような活動と、日本における広報という職種の価値向上に携われたらいいなと考えています」

 確かな実績を積む中で、結婚・出産も経験し、ワーキングマザーとして多忙な日々を送る上村氏。

 「教育や保育にも強く興味を持つようになったので、社外活動としてこういった領域にも携われたらと思います」と、新たな挑戦にも意欲を見せる。(文=吉田浩)

 

バナー経済界_01_1女性エヴァンジェリスト養成アカデミアのご案内

開催期間:2018年4月12日、5月10日、6月7日、6月28日(計4回コース)

講師:西脇哲資(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員・エバンジェリスト)、上村嗣美(株式会社サイバーエージェント 全社広報室 シニアマネージャー兼広報責任者)、菅本 裕子(モテクリエイター)他

最新情報はこちらから

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る