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PepperのAI「コミュニケーションAIは超自我の形成が鍵に」――吉田健一(ソフトバンク ロボティクス事業推進本部長)

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ソフトバンクはAI分野でIBM,マイクロソフトという2大IT企業との協業を進めている。これらの提携は、同社のパーソナルロボット「Pepper」の今後の展開にも大きくかかわってくる。PepperのAIについて、ソフトバンク ロボティクス事業推進本部長の吉田健一氏に語ってもらった。

ロボットとAIの親和性を生かす方向で展開するPepper

AIの定義はいろいろあるが、PepperのようなロボットとAIは本来親和性が高い。

AIは、アーティフィシャル・インテリジェンスと称されるように人間を模倣している。人間もAIに対して人間的なインタラクションを期待するため、生き物のように感じられるロボットはAIに向いている。

また、AIではどれだけデータを採れるかが重要になる。採ったデータをどう処理するかがAIだと思われがちだが、膨大なデータを採るほうが技術的な難易度が高い。

例えばロボットはいろいろなデータが採れる。目の前に人がいるとか、その人がこっちを向いているとか、話しかけたら答えてきたとか、どんな風貌の人かとか。こういう情報はデータベースになく、ロボットがそこにいることで、ロボットのセンサからリアルな環境の情報を人の感情も含めてすべてとらえることができる。

そうして集めたデータを処理する部分はもちろん高度化していくことは必要だが、人を認識し処理してアウトプットを出すというプロセスを考えたときに、認識がボトルネックになる。

吉田健一

吉田健一氏

全体のAIの世界観を考えた時にわれわれがフォーカスしているのはまさにこの2つのポイント。ひとつはインタラクションで、人間とのインターフェースやユーザーエクスペリエンスなどコミュニケーションAIと呼ばれるもの。もうひとつはデータを採ってくる領域で、特に人の感情認識は、われわれしかできないところになる。

逆に膨大なデータベースの中から最も正しい解答を導き出す「ナレッジAI」と呼べる領域は、例えばIBMの「Watson」が強い。また、膨大なデータベースをディープラーニングで解析するマイクロソフトやグーグルの手法は、「アナリティックAI」と呼べるものだ。

逆にわれわれはそれらの領域では強くないし、やろうともしていない。その領域はIBMやマイクロソフトなどと組めばよい。

一方、IBMやマイクロソフトにとっては、データベースを解析しても、次の段階はその結果を使って何かを行う。そこでわれわれのコミュニケーションAIを組み合わせることになる。

IBMやマイクロソフトとわれわれとなぜ組んでいるか、もしくは彼らから見てなぜ組みたいと思っているかというと、彼らが持っているAIのパートと、われわれが持っているパートが相互補完的になっているから。

例えばAIの医者を考えた場合、彼らからすると、素晴らしい診察結果が出てもそれを患者にどうやって伝えようかという話になる。そのときに医者という人間的なインタラクションを実現できるわれわれのAIの技術が必要とされる。

コミュニケーションAIとPepperの最終目標は?

コミュニケーションAIの最終目標は、人間かロボットなのか分からずにコミュニケーションして、人間だと思うことが完成形だと考えている。

今はPepperとのコミュニケーションもうまく聞き取れない場合があったりして、最終目標からすると、まだ1合目ぐらいだと思っている。

ただしほかのAI技術も人間を超えようとしているので、われわれと同様にかなりゴールは遠い。そういう意味では、小売店での短時間の接客など、非常に限られた状況でうまい使い方さえすれば、お客さまの期待にミートできるのがコミュニケーションAIの良いところだと言える。

今後を考えると、最近の「AI脅威論」に対する回答は、われわれのコミュニケーションAIの感情エンジンだと思う。ナレッジAIやアナリティックAIの領域は高度な処理をできるようになるが、判断であって意志ではない。最後は意志の領域が絶対必要になり、そこは感情の領域になる。

われわれがやろうとしているのは、人間の感情をシミュレートすること。例えば、赤ん坊は単純にお腹が空いたら騒いだり、眠くなったら眠る。それに対し、大人の人間は一般常識や社会性にあたる「超自我」があり、その超自我で感情のバランスが保たれている。われわれはAIに超自我をつくり、バランスを保って社会に溶け込んでいる仕組みをIT上に実現しなければいけないと思っている。

人間にはいろいろな欲望があるが、暴走せずに社会が成り立っている。その仕組みをつくることが肝要で、そのための感情エンジンが必要となる。

感情は欲望を爆発させるためではなく、社会とのバランスをとるためにある。コミュニケーションAIの今後は超自我をつくれるかにかかっている。(談)

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