政府が4月13日、世界経済情勢についての意見交換を行う「国際金融経済分析会合」の第5回会合を開き、出席した経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長は、来年4月の消費税率10%への増税を「経済状況が許せば予定どおり行うべきだ」と提言した。同会合の有識者が4月の増税実行をはっきりと勧めたのは初めてだ。安倍晋三首相による延期判断を牽制したい財務省には、「追い風」と見る向きも多い。
グリア氏が増税を求めるのは、日本の公的債務残高が国内総生産(GDP)比230%と非常に高く、財政再建を急ぐ必要があるとみるからだ。また、増税を一度延期しているため、再び先送りすれば「日本への信認の問題が出る」とも話した。
さらにグリア氏は、消費税率について「少なくとも15%まで引き上げる必要がある」とも指摘。消費を冷やすのを防ぐため、「毎年1%の引き上げが最善だ」と語った。
グリア氏の考えは、これまでの会合で出た意見と対立するものだ。
特に、ノーベル経済学賞受賞者、ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授とポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授の2人は、日本や世界の経済減速を理由に、増税の先送りを強く主張「首相が延期を決断する上での、強い支えとなった」との見方が広がっている。
こうした中で増税を主張したグリア氏の考えは、社会保障制度を維持するため、安定財源の確保を急ぐ財務省の考えに沿うものだ。会合を進行する石原伸晃経済再生担当相も財務省寄りだとされる。会合の議論の流れが一気に「増税見送り」となることに、一定の歯止めをかけた形となった。
政府は、5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、当初「5回程度」としていた会合の回数を、さらに増やす。前半、「増税先送り」派の意見が目立ったため、今後は増税賛成派の数を増やし、形の上だけでも先送り派とのバランスをとるのではないかとの見方も強い。今後の議論が注目される。
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