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監査法人のブラックボックスに切り込めるか――金融庁

金融庁は、企業の会計監査を担当する監査法人向けのガバナンス・コード(統治指針)の策定に着手した。東芝の不正会計を新日本監査法人が見抜けなかったことで会計監査への信頼が揺らいでおり、指針によって信頼回復や透明性の向上を図る狙いだ。企業とのなれ合い防止策などを盛り込んだ組織運営の原則を策定し、実施状況を社外からチェックするなどして実効性を高める。

金融庁は7月中旬に、監査法人の統治指針に関する有識者会議を設置して議論を開始した。監査法人に指針を導入しているイギリスやオランダの事例を参考にしながら、年内をめどに具体的な中身をまとめる。

東芝の不正会計問題などを受け、会計監査の在り方を議論してきた有識者懇談会が3月、指針の策定について提言していた。懇談会は、「問題への対応では、いたずらに規制・基準を強化するのではない」として、指針によるマネジメントの強化を通じ、“自浄能力”を発揮することを期待している。

東芝問題をめぐっては、担当する新日本監査法人の同じメンバーが長期にわたり監査を担当し、なれ合いが生じて不正を見抜けなかったことなどが指摘されている。このため指針では、現場の会計士が職業的懐疑心を発揮できるような組織運営体制などを規定する方針だ。

また、指針の実施状況については開示を求め、市場参加者や当局などが外部からチェックする。さらに社外の人材を活用することで、監督品質の向上に向けた自主的な取り組みを促したい考えだ。

有識者会議の初会合では、参加者から「昨年導入された上場企業の統治指針では、複数の社外取締役の設置など形だけの適用で実態が伴っていない企業も多く、同じ轍を踏んではいけない」とする意見が出たほか、「監査法人の経営、運営はブラックボックス化している」という厳しい指摘もあった。

また、監査法人の大規模化などについても話し合われた。大手監査法人による寡占が品質向上に向けた競争を阻害している懸念があるとの指摘があり、有識者会議は、大手企業を担当できる監査法人を増やす環境整備についても議論していくとみられる。

 
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