気付けば、アパホテルができている。そう思うほどに勢いのあるアパグループ。その勢いの源泉はどこにあるのか。また、ビジネス・出張需要に応えるためにどのようなサービスを提供しているのか。アパグループの元谷一志社長に話を聞いた。
規模を追って競争力を生むアパホテル
―― 都内にも新しいホテルが続々と誕生していますが、グループのホテル数は。
元谷 9月15日現在で、海外、フランチャイズを含めて227ホテル、4万9379室になっています。これは建築、設計中も含んだ数です。さらに、提携するパートナーホテルが162ホテル、1万5522室(9月末現在)ありますので、合計で、389ホテル、6万4901室。提携ホテルが増えていたりもしますから、日々変わっているような感じですね。
―― 10万室を目指されているそうですが。
元谷 日本のトレンドとしてはホテルが増えて旅館が減っている状況ですが、現在の宿泊施設の状況はホテルが80万室で、旅館が70万室の、だいたい150万室前後で推移しております。アパグループは、海外を除いて6万室前後ですからシェアで考えても4%ほどしかありません。仮に、直営やFC、提携のホテルを加えて10万室になったとしてもシェアでいえば、6.6%であることを考えると、まだまだ伸ばせる余地があります。ただ、現在の百花繚乱から寡占化は進むと思います。
―― 大規模化するメリットは。
元谷 人口動態で見れば人口は減少しているわけですから、地方のホテルなどは集客などの面で非常に厳しいわけです。外部のサイトで集客するにしてもコミッションを払わなければなりませんし、検索で上位に掲載されるようにしなければなりませんから、どこかのチェーンに属していかねば成り立たなくなっていると思います。また、規模が大きくなると、調達力も大きく有利になります。例えば、私どももテレビを1千台ベースで購入していますから、調達力は部屋数に比例し、部屋数は競争力になるのです。
アパホテルの人気の鍵はキャッシュバック
―― インバウンドのお客さんが増えていますが、ビジネス利用者の数は。
元谷 ビジネス、国内の観光需要は例年に比べてほぼ横ばいといった状況です。最近は4つの需要があると考えられています。1週間を帯で考えたときに、ビジネス需要が、火、水、木で、観光需要が金、土。それに加えて、コミュニティー需要といわれるホテルの半径500メートルくらいに住まわれている方の日常的なニーズがあります。例えば、親戚の方が遊びに来られたが自宅に寝具が足りないといった理由でご利用いただいております。
最近では4つ目のニーズである訪日外国人需要が増えていまして、グループホテルの全国平均でも3割くらいのシェアを占めるようになっております。首都圏や関西圏などはその比率がさらに高くなっていますね。
私たちも海外へ行くと曜日はあまり関係なくなるのと同じように、平日、休日関係なくお泊まりいただく、分厚い需要が生まれております。昨年、1974万人の訪日客でしたが、今年は2350万人前後になるのではないかと考えています。
―― それでは外国人向けの施策も始めているのですか。
元谷 私どものホテルの考えとしては、コンパクトな客室で平米数を誇るのではなく、満足をいかに売るかを考えています。そういった意味からも「BBCワールド」を全室で観られるようにし、無料Wi-Fiも完備して、客室の中で自国のニュースはもちろん、情報をストレスなく得られる環境を整備しています。
―― 横ばいの需要とはいえ、日本のビジネス利用者も安定的なお客さんでは。
元谷 もちろんそうです。考え方として日本のみならず、世界においても出張に行く人材は仕事ができるからこそ出張に行くのであって、だからこそ将来の経営層に成り得る人材であり、キーパーソンであると考えています。ですから、その方たちが経営層になったときに、アパホテルに良い印象を持っていただくことを推進していきたい、そう考えております。
―― 具体的なビジネスマン向けの施策は。
元谷 入会無料のアパカードの会員さまになっていただきましたら、キャッシュバック制度を利用していただけます。例えば、5万円利用時に5千円キャッシュバックをさせていただいておりますが、上級会員になっていただければ、ポイント獲得率が最大で11%になります。多くのお客さまが最初はビジネスの利用で使っていただくのですが、キャッシュバックがあるお陰で、観光のときでもご利用いただけるようになっています。ポイントを貯めたいと思われているユーザーさまにとっては現金に勝るものはないのではないでしょうか。
―― 現金は強いですか(笑)。
元谷 私の部下でも結婚すると、お小遣い制になる場合が多く、飲み代が減るんです(笑)。日本の経済を活性化させるためにも消費を増やしていかなければなりません。そういった意味でもキャッシュバックの恩恵は大きいと思いますね。
―― 収益を上げるためにレベニューマネジメント(値付け)が重要となりますが、これはどうやって決めているんですか。
元谷 ある程度は支配人の裁量に任せています。ホテルによっては1千室を超えるものから50~60室のホテルまで幅広くありますから、インセンティブを設けることによって結果を出せば、より大規模なホテルに転属させたりするなど、モチベーションや人事施策のひとつとしても考えています。
アパホテルの海外進出と客室数日本一の横浜ベイタワー
―― 昨年から海外進出されていますが進捗状況は。
元谷 昨年11月にニューヨークのニューアーク空港近郊にある「アパホテルウッドブリッジ」がフランチャイズでオープンしました。ニューヨークで記者会見をさせていただいたのですが、その時に「5年間で100ホテルを出していく」といった発表を行っています。その後、カナダのコーストホテルチェーンを取得し、現在40ホテル、5028室体制になっています。1号店がフランチャイズでしたのでオーナーの意向もありますから、やはり日本のアパホテルとは違いがあります。ですから今後は、直営のホテルでアパホテルとはこういうホテルだと示したほうが、目標に向けてのスピードも加速できる、そう考えております。
―― 今後の需要と戦略は。
元谷 2019年の秋に横浜のみなとみらい地区に2400室という日本で一番大きなホテルを予定しております。テナントもホテルにふさわしいブランドを誘致し、当社のブランド向上にもつなげていきたいと考えています。需要に関しても、人口が3千万人の首都圏を考えれば、まだまだ伸びますから横浜以外にも、両国、新宿歌舞伎町などにタワーを建設していきます。
何より、20年にはオリンピックがあります。1964年の時もそうでしたが、新幹線や首都高など、インフラを整備する契機です。20年も同じくインフラを整え、都市としての魅力付けをしていくことで、人口減少で国内のビジネス需要は減っても、訪日外国人の需要、中でもビジネス利用は増えるのではないかとみています。そう考えれば、やるべきことはまだまだいっぱいありますね。
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