「方正」は中国語で真四角を意味する。当初開発した漢字フォントの形状が正方形だったことが社名の由来だ。そして方正は人柄が実直・公正という意味も併せ持つ。日本の新聞・出版業界に真摯に向き合い続けてきた姿を追った。
日本の新聞・出版業界をITサービスで支える
大手新聞社や出版社を中心に約200社の基幹系システムを任されている。紙面を構成する膨大な写真や原稿を管理し、レイアウトを構成。台割と呼ばれるページの並び順や、エリアごとに異なる版の編集まで、一元管理するシステムを個々の版元のニーズに沿って作り上げていく。これら全工程を支えているのが方正なのだ。
また、システムの納品先で「営業の管理が大変だ」という話を聞けば営業の進捗管理サポートツールを、「チラシ制作が大変だ」と聞けば進捗・掲載商品管理を可能にするシステムを開発。そのほかチケットの発行システム、書店の管理システムなど新聞・出版業界以外のニーズにも対応。ビジネスのフィールドが広がりつつある。
高い技術力を誇る方正だが、そのルーツは北京大学にある。かつて印刷といえば、活字を使って版を組むのが通例。この活字をコンピューター上で再現することができないかと、70年代から研究が進められてきた。その成果を普及させるべく、中国に次いで日本でも会社を設立するに至り、立ち上げを任されたのが当時、日本の印刷業界にいた管社長だったのだ。
「方正はデザイン・印刷の工程をコンピューターで行うDTPの黎明期を支えてきた会社です。英語の市場を作り上げたのがアドビシステムさん、漢字は方正が同時期に同じように苦労して、作り上げてきたのです」
ネット時代に対応した新たな2事業を立ち上げる
インターネットの隆盛により、紙メディアのマーケットは縮小傾向にある。この事業環境の変化に対応すべく、2015年には新ビジネスをスタートさせた。
「社内の資産を棚卸しした結果、スポーツ関係の事業と、インバウンドを支えるインフラの提供の2つが上がってきました」
スポーツコミュニティーアプリの開発と運営を手掛けているのがaiSports。第1弾はバスケットボールに特化した「Stats ai Basketball」だ。テレビでは放映されることがない2部リーグやアマチュア、学生の試合状況・成績などを、スマホやタブレットなどで手軽に情報共有できるツールである。スポーツメディアの制作システムを請け負う中で培ってきた「記録する仕組み」を生かした格好だ。今後は野球やサッカーなどへの展開も視野に、アマチュアスポーツ市場のビジネスチャンスをうかがう。
また、訪日旅行者向けマッチングサービスを提供しているのがプラットフォーム「Okulo」。日本滞在を楽しむための観光資源の情報、旅行者向け医療技術の情報の2種類を提供している。今後はIT分野でのM&Aも積極的に行い、事業のさらなる拡大を目指す。
管社長が重視するのは“専門性”だ。「日本は大手信仰がありますが、“ゼネコン”形式で専門性は育ちません。また、経営者の目も行き届かない。例えば、スティーブ・ジョブズは自社の商品を細部までレビューした。われわれも領域を絞って精度を上げ、会社を発展させていきます」
方正には日本人社員も中国人社員もいる。それぞれに文化があり、もちろん個人としても異なる存在だ。その前提に立ち、互いの長所を出し合っていくことが重要だと説く。
「成功するためには、多様性を受け入れ、その中からより見識の深いものを見出していかなければならない」
管社長が唱える孔子の言葉は「和して同ぜず」。多様性こそがイノベーションの源泉であり、方正の強さなのだ。
方正株式会社
- 設立/1996年3月
- 資本金/6549万5798円(資本準備金 5億2378万7448円)
- 売上高/21億円
- 従業員数/92名
- 事業内容/メディア向けITソリューションの提供、アプリ開発
- 会社ホームページ/http://www.founder.co.jp/
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