仕事の目標だけでなく目的、志を語れ
2017年の正月である。今年の目標をあれこれとお考えの方も多いと思う。
しかし、稼げない人は目標を立てることはしても「人生の目的」を明確にしていない。
目標とはその漢字の通り道標(みちしるべ)となるポイントである。目標を決めても、道の行先、つまり目的地を決めなければ、道に迷ってしまうことは容易に理解できる。
人生における目的や志は、生きていく上での指針になり何のために仕事をしているのか、どんな生き方がしたいのかなどを折に触れて意識し確認することで、迷いや悩みから立ち戻ったり、成功による慢心やうぬぼれを戒めることもできる。
でも、それだけではない。目的や志が明確であれば、そこに共感したり、賛同したりする人たちが集まってくる。つまり「応援者」ができるのである。
とはいえ、若くして志を語れる人はほとんどいない。
私も例外ではなかった。何のために仕事をするのか考えたこともなかった。
それでも、どこかの段階で仕事に対する思いを、志に昇華していくプロセスが必要なのである。
きっかけは私の場合、人との出会いだった。
以前の連載にも登場した、ある地方銀行の副頭取との出会いである。
君はつまらん男だと 指摘された経験
20代の頃は、「3年以内に全国1位になる」と社内で宣言していた。
そこで売り上げをあげるために、毎朝の銀行回りを自分に課していた。行員が取引先企業を訪問する際に同行し、保険を販売させてもらうのである。その時、毎朝、銀行へやってくる営業マンは珍しいと、関心を持ってくれたのが、ある地銀の副頭取だった。
全国1位を狙っているんだと言うと、その率直さも気に入ってもらえたようで、銀行の各支店をはじめ、地元の有力者を紹介してくれるなど、何かと目をかけてもらえるようになったのである。
ある時、副頭取に、「なぜ損害保険会社を選んだのか」と質問された。
私の父は親類の借金に追われ、それがもとで命を縮めた。
私がサラリーマンになったのは、その父の死が影響している。商売をすれば借金の苦労がある。父の死を前に、そう思い、そのため、一流企業に就職することで一生を安泰に暮らしたい、と考えていたのであった。
ところが、それを聞いた副頭取は、「キミはつまらん男だな」と言い放ったのである。
目的や志がない人は自分の仕事に正面から向き合え
「保険を売って、金を儲けることしか考えていない。キミには何の魅力も感じないよ」
しかし次のようなアドバイスもいただいた。
「キミは、商売人だったお父さんのDNAを引き継いでいるんだろう。このままじゃもったいないぞ。お父さんの思いを、もう少し真剣に受け止めて仕事をしてみたらどうだ。そうすれば、もっと数字もついてくるぞ」
この副頭取のアドバイスに導かれ、私は自分がなぜこの仕事をしているのか、という問いに、正面から向き合うようになったのである。そうやって見つけたのが、「父のようにお金がもとで命を削るような人を作りたくない。お金で苦労する人をひとりでもなくしたい」という志だった。
人生の目的や志を聞かれても、すぐにそれを語ることができる人は、そうはいない。
だが、自分の生い立ちについては語ることができる。これまでの人生の目的や志を、意識するチャンスがなかった人は、まずは自分の生い立ちを棚卸するところから始めてみてはどうだろう。そこに人生の目的や志につながるヒントも潜んでいるはずだ。
今号の流儀
人生の目的を考えたことがなくても棚卸からヒントが見つかる。
筆者の記事一覧はこちら
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan