「ダイエー」といえばかつての小売業の雄だが、今ではその名を冠した店舗は数えるほどとなった。旗艦店だった碑文谷店などかつての店舗の多くがイオンに生まれ変わったが、なかなか結果が出せなかった。しかしここにきてようやく道筋が見えてきた。文=本誌/関 慎夫
業績の底を打った旧ダイエー店舗
長い間、赤字を垂れ流し続けてきた旧ダイエーに、ようやく、光が見えてきた。
1月11日にイオンが発表した2017年2月期第3四半期(3Q)決算によると、9カ月の累計連結決算は、営業収益が前年同期比1.1%増の6兆998億円、営業利益は同5.6%増の853億円。最終損益こそ、熊本地震による損失や、店舗の減損が響き172億円の赤字だが、営業成績は好調だったといっていい。
特に好調だったのが、ドラッグストアや金融部門だが、懸案のGMS部門も、経費削減効果や店舗活性化などの施策が奏功し採算は改善した。しかしいまだにお荷物状態が続いているのがダイエーから引き継いだ店舗。完全子会社化からまる2年が過ぎたが、一向に赤字から脱却できない。
中内功氏が創業し、一時は日本最大の小売業として覇権を握ったダイエーだが、無謀とも言える拡大策は、バブル崩壊後、完全に裏目に出る。部門の切り売りなどで生き残りをはかったが、「安いかもしれないが欲しいものが何もない」と消費者からそっぽを向かれ、業績は悪化する一方。結局、主力銀行のひとつであるUFJの業績悪化もあり、04年に再生機構の支援を仰ぎ、丸紅とイオンがスポンサーとなり再生を目指してきた。
イオンにしてみれば、過去にヤオハンとマイカルの2つのチェーンストアの再建を手掛けたこともあり、その延長線上でイオン流を持ち込むことで再生は可能と考えていた。しかし長年の経営の停滞による、店舗の老朽化とそれに伴う顧客離れは深刻で、思ったような結果が得られなかった。
そこで、イオンが全力を挙げて再生することを内外に示すため、15年1月1日をもって完全子会社化し、抜本的改革を行うことになった。
そのダイエー再建スキームは、①完全子会社化②北海道、九州などの店舗をイオンに移管③本州の大型店をイオンスタイルに業態変更④ダイエーは食品スーパーに特化――というもので、「18年にはダイエーという屋号もなくなる」(岡田元也・イオン社長)。ダイエーの完全消滅計画といっていい。
15年9月には北海道と九州の店舗などを先行移管(イオン北海道とイオンストア九州に変更)。そして16年3月には本州の29店舗をイオンに移管、看板を掛けかえるだけでなく、レジやシステムなどイオンの手法を取り入れ、店舗を活性化させることで、売り上げ拡大を目指した。
ダイエーからイオンへの移管は、「移管期」「整備期」「改善期」の3つのステージからなる。「改善期」では看板の付け替え、制服の変更、システム移管、WAONカードなどの新販促の導入等を行い、「整備期」では売り場の改装やマーチャンダイジング改革など。そして「改善期」で回収をしていく。
昨年3月に移管した29店舗は昨年11月に整備期を終え、現在改善期を迎えている。また一足早く移管したイオン北海道等は、昨年5月から改善期にある。つまりそろそろ利益改善しなければならない時期を迎えているのだが、先日発表した3Q決算には、その兆しが表れた。「旧ダイエーからイオンに移管してから1年以上がたった店舗は売上高が前年比100%を超えた」(近澤靖英・ダイエー社長)。
例えばイオン北海道(8店舗)の売上高は、2Qが前年対比99.1%だったが、3Qには110.9%と大きく改善した。またイオンストア九州(24店舗)も、98.0%から104.4%へと改善した。
ダイエー旗艦店もイオンスタイルへ
イオンでは当初、半年ほどで移管効果が出るとみていた。しかしダイエーの負のイメージは大きく、イオンに変わったといっても「では利用しよう」とはならなかった。それでも、時間とともに抵抗感が薄れ、そこに店舗改装などの活性化策が加わったことで、客足が増えてきた。
そのひとつに旧ダイエー碑文谷店がある。東急東横線、学芸大学駅と都立大学駅の中間地点にあるこの店は、ダイエーの旗艦店として知られていた。ダイエーが新しい取り組みをする時に、ここの店頭で中内氏がハッピを着て気勢を上げていたのを覚えている人も多いに違いない。
この旧ダイエーの「本丸」は昨年5月に閉店し、12月16日、イオンスタイル碑文谷店としてオープンした。現在は1~4階の部分営業にとどまっている、にもかかわらず、開業からの半月間の売り上げは、前年同期の113%を記録した。全館オープンは3月31日を予定しており、さらなる売り上げ拡大が期待されている。
また、現在もダイエーの名を冠しているスーパーマーケットについても、粗利益率が改善するなど、3Qベースでみると、前期比6億円収益が改善した。消費不況の中でも食品スーパーの売り上げは好調であり、ここに力を注ぐことで、業績への寄与を狙っている。
ダイエーの負の遺産の処理がようやく終わろうとしている。その先のイオンの戦略が見ものである。
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