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東宝が引っ張った2016年の映画界と今年のヒット映画展望

新宿歌舞伎町の東宝シネマ

新宿歌舞伎町の東宝シネマ

「シン・ゴジラ」、「君の名は。」と、2016年の映画業界は、邦画、とくに東宝作品が引っ張った。年が変わり、各社のラインアップをみると、邦画、洋画ともに話題作が控えている。昨年に引き続き邦画が業界をけん引するのか、はたまた洋画が巻き返すのか。戦いは既に始まっている。文=本誌/古賀寛明

賞獲得の意欲作か待望の超大作か

正月明けの1月8日(現地)、アカデミー賞の前哨戦となるゴールデングローブ賞が発表された。女優のメリル・ストリープ氏が、トランプ大統領の資質を批判するなど、作品以外も話題となった授賞式だったが、肝心の作品で話題をさらったのは、ミュージカル・コメディ部門で作品賞をはじめ、監督賞など史上最多となる7部門を獲得したミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」。脚本賞も受賞したデイミアン・チャゼル監督は、一昨年のアカデミー賞でも前作の「セッション」で作品賞にノミネートされるなど評価が高かったが、今回の賞獲得でその名を不動のものとした。まだ、32歳と若い監督であるだけに、日本でも話題になること間違いない。

日本では、ギャガ配給で2月24日から公開予定となっている。配給元であるギャガは4月に公開予定の「ライオン 25年目のただいま」もアカデミー賞を狙える作品といわれており、良作が控えている。

2017年の洋画を興行成績から予想してみると、確実に大ヒットとなりそうなのが、12月に公開予定の「スター・ウォーズ エピソード8」だろう。15年12月に公開された前作「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の日本での興行収入は116億円。同程度の数字と、コアなファンが生み出す数字以上の熱狂が見込めそう。配給するウォルト・ディズニー・ジャパンはほかにも、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の最新作や、ハリー・ポッターシリーズのエマ・ワトソンが主人公ベルを演じる「美女と野獣」などが控えており、洋画配給ナンバーワンの実力を今年も発揮しそうだ。

ワーナーブラザーズ配給では「キングコング 髑髏島の巨神」や、第2次世界大戦のダンケルクの撤退戦を描いたクリストファー・ノーラン監督の歴史大作「ダンケルク(原題)」が、ソニーピクチャーズは新シリーズとなる「スパイダーマン」などが控える。傾向としては続編やリメイク、シリーズ作品といった馴染みのある作品が目につく。知名度に優れ、DVD化後もレンタルなどで安定した収益を狙える堅実な戦略が見え隠れする。

主流のアニメが今年もけん引

一方の邦画業界、昨年メガヒットを連発した東宝は、年間興行収入が854億円を記録。配給した32本中25作品がヒットの目安となる10億円を突破し、これまでの最高であった10年の748億円を100億円以上上回るなど、記録的な1年となった。

興行収入ランキング 稼ぎ頭の「君の名は。」は、リピーターが多いことで知られる作品だったが、お正月のランキングでも再浮上するなど根強い人気。1月16日現在、累計の興行収入は232億円を突破。興収で日本歴代3位の254億円の「アナと雪の女王」(14年)を追う。当初、15億円の興収を狙っていたとは思えない桁違いの作品は、既に世界90カ国近くで配給が決まっており、中国での日本映画の観客動員記録も更新。訪日外国人観光客がアニメゆかりの地を訪れる聖地巡礼でモデルの地である飛騨を訪れているといった話まで聞こえてくる。

また、東宝の陰に隠れがちだが松竹も自社配給作品の8本が10億円を突破している。「聲の形」、「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」は、20億円を超えるなど、若い客層を取り込んでヒット作に結び付けている。

では今年、どの邦画が引っ張るのか。年末年始のランキングをみると、やはりアニメの強さが目立つ。超大作「スター・ウォーズ ローグワン」に対し、「妖怪ウォッチ」の最新作は互角以上に戦う。昨年もトップ10のうち6作品が子どもをメーンのターゲットにした作品であることを考えれば、例年同様アニメ作品が上位に入り込みそうだ。既に東宝では、「メアリと魔女の花」や「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」などが、東映は「プリキュア」、「仮面ライダー」が、松竹も「ウルトラマン」など定番含め多くの作品が控える。「モアナと伝説の海」といったディズニー作品を含め、今年も興収ランキングはアニメ中心で動きそうだ。

ただ、興収だけで映画の魅力を測れないのも事実。そういった意味では、昨年11月に封切られた「この世界の片隅に」(東京テアトル配給)は、広島の呉市を舞台に現代と変わらぬ戦時下の日常を描き、世代を超えて共感をよんでいる。興行的にも10億円を超えており、上映館も全国に広がってきている。

また、ここ数年、「帰ってきたヒットラー」や「アイヒマンショー 歴史を映した男たち」など、ナチスドイツに関する映画も多い。今年も「ベルリンに一人死す」が日本でも公開されるという。これも昨今のポピュリズムの台頭と無関係ではないはずだ。映画は産業でもあるが、一方で、時代の空気を多分に含み、未来の社会を示してもくれる。ヒット作にはヒットをするなりの理由があり、埋もれた作品にも良作は多い。今年も良い映画に出会えるかは、映画館に足しげく通い、たくさんの映画と出会うしかない。

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