国土交通省は2月中旬、都市計画問題を扱う有識者会議を開き、人口減少によって生み出される都市政策の課題について議論を開始した。主要テーマとなったのは、都市の密度が低下する「スポンジ化」なる現象。このスポンジ化が生み出す悪影響を読み解くことで、国交省が目指すコンパクトシティー実現への道筋をつける狙いがある。
都市人口が増加するときは、住民の居住圏が中心部から郊外へと広がり、都市の範囲が拡大していく。この時期には経済圏も同時に拡大するため、公共交通インフラ事業も採算が見込まれるほか、活発な個人消費に支えられて小売りサービスが充実する。また医療や福祉などの行政サービスも効率的に運用される。
ところが人口の減少局面では、一度膨張した居住圏の範囲が縮むことはない。範囲はそのまま維持され、櫛の歯が欠けるように空き地や空き家が点在していく「密度の低下」(都市局)が起こる。これが今回テーマとなった「スポンジ化」で、民間・行政サービスの低下や治安悪化といった悪影響が懸念される。
これまで国交省は、人口減少に向けた対策として都市機能の集約を目指すコンパクトシティー政策を掲げ、中心部への都市機能移転や住民の居住移転を推奨していたが、取り組みは広がりを欠いている。
だがコンパクト化に向けた対応はまったなしだ。自治体の長期債務残高は計約200兆円に上る一方、社会インフラの維持・更新費用は約20年後には約1.5倍に膨らむと試算されており、現状規模でのインフラ維持は難しい。バスや鉄道といった公共交通サービスの廃止も相次ぎ、地域事業者の6~7割が経常収支で赤字状態となっている。
国交省は「都市衰退の元凶」と位置付けるスポンジ化の進展と悪影響を強調することで足踏みを続けるコンパクトシティー政策の背中を後押ししたい考えで、夏までに対策の方向性を取りまとめるとしている。
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