路上駐車された自動車に占拠されたインド都市部
インドでは車両所有の割合が高く、人々にとって駐車の問題は対立や混乱を招く状況になっている。空港、バス停留所、ショッピングセンターなど場所を問わず、駐車に困る事態が毎日発生している。
最近、インドでは家族の規模が小さくなり、自動車の合計数が家族の人数を超えたためだ。平日のインド都市部の道路のおよそ40%は、自動車を停めるためだけに占領されている状況となっている。最近では低所得層の人々も自動車を所有できるようになったため、問題はさらに深刻化している。インドの都市は、路上駐車された自動車で占領されてしまっている。
インドの自動車産業の規模は1千億ドルを超える見込みだ。インド自動車工業会(SIAM)の報告書によると、2016年にインドの自動車生産台数は、乗用車、商用車、3輪車、2輪車を含めて、合計で2396万940台に上る。
中間層の所得水準が上がるにつれ、彼らの要求や生活水準も上がる。それによって、インドの歴史上ないほどに自動車が購入されることになった。現在、インド国内の自動車の数は、1千人当たり25~30台に上り、街中で駐車スペースを見つけるのが困難になった。
道路を移動する車にとっての駐車スペース以上に問題なのは、商用スペースの問題だ。これまでは車を停めるための追加の空地を設けることで乗り切ってきたが、こうした空地は個人により占領されるか不法駐車の場となってしまっている。時には路上での犯罪や喧嘩に至るケースもある。
インドの大都市圏では、バスや電車などの公共の交通機関が、都市の交通量の45%を賄っている。ということは、ほとんどの人々は、バイクや自動車などの個人的な交通手段に頼っていることになる。歩道がほとんどない狭い道路は、例えそれが歩行者向けの道路であっても、行商人や路上販売者によって占領されており、その結果、歩行者と自動車、バイクなどが同じ狭い道路をそれぞれに通行している。
駐車は無料と考えるインド人
現在のところ、インド人は、駐車は無料だという考え方だ。自動車やバイクは自分で稼いだお金で購入したのだから、どこに停めてもいいという訳だ。しかし、こうした混雑状態は、自動車の販売ペースには追い付いてはいないものの、立体駐車場や自動駐車場などの導入につながった。
最近、インド政府は、混雑解消の試みのひとつとして、日本に似た新しい政策の施行を計画中だ。それは、駐車場所が確保できていることの証明(日本の「車庫証明」に当たるもの)を当局に提出するまで、新車の登録が認められないというもの。
新しい駐車証明書の規則に加えて、インド政府は不法な路上駐車に対して1千ルピーの罰金を科すという別の規則を全国で導入することを提案している。
将来は、交通量の多い都市部での高額な駐車料金、1人が複数の車両を購入するのを制限する法律、専用の駐車場所があることを自動車購入の条件化する。主要都市の一部では自動車台数を制限するなどの明確な自動車代替政策も行われることだろう。
最近行われた高額紙幣の廃止政策は、17年の第1四半期において、特に2輪車、大型SUV、高級車などのいくつかの自動車セグメントに影響を及ぼすだろうが、人々はすぐにまた新車を購入するようになり、経済も持ち直すだろう。
世界の自動車メーカーが注視するインドの消費市場
世界の自動車産業は、大きなトレンド変化を経験している。自動運転、コネクテッドカー、ローカルなビジネスモデル(自動車オンデマンドモビリティを含む)、ハイブリッド車/電気自動車などだ。
インドは、日本を含む世界中の自動車メーカーにとってカギとなる市場である。そのため、新しい政策やインド消費者市場における状況の変化などを、世界中の規制立案担当者は注視している。
人口増加と急速な都市化が相まって、インドの都市部にますます多くの人々が流入するにつれて、人々には安全な生活場所、職場、そして通勤のためのスペースが必要だ。
あらゆる新しい変化がインドで起こる中で、インドが先進国として見られるようになることを願うしかない。先進国とは、貧しい人々が単に願望で自動車を購入するのではなく、豊かな人も公共の交通機関を利用するものの、贅沢のために最高級の流行の自動車を購入するような国のことだ。
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