入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩)
鬼頭政人氏プロフィール
資格試験突破のための勉強ノウハウを提供
AI(人工知能)を活用し、試験問題を予測する「未来問」というサービスがある。オンライン通信講座「資格スクエア」を運営するサイトビジットが開発したもので、2019年の宅地建物取引士試験(宅建)では、カテゴリー的中率74%を達成。この数字は、業界大手の模試の的中率を上回っており、AIによる問題予測が講師の予測に劣らないことが証明されたという。ちなみに合格率は通常17%程度であるところ、未来問を活用して勉強した受験者では78%という結果をたたき出している。
「未来問を開発したもともとの目的は、資格スクエアの付加価値向上だったんです」
サイトビジット社長の鬼頭政人氏はこう語る。
資格スクエアは宅建や司法書士試験、司法試験予備試験(司法試験の受験資格を得るために、法科大学院修了者と同程度の学識があることを証明するための試験)といった各種資格試験をパスするノウハウを提供、講座を受講した生徒たちは高い合格率を誇り、現在10万人以上の会員が登録している。
試験合格者に共通する勉強のコツを反映
講座の特徴は、試験に成功してきた人々から徹底的にヒヤリングした勉強のコツと、鬼頭氏が学生時代から培ってきた独自の学習理論が導入されている点だ。
「試験は体重測定と同じで実力をつけるものではないので、さっさとパスして多くの人がスタートラインに立てるようにしたい。どちらにせよ受かった後のほうが大変なので、そこまで最短で行くことには何の問題もありません」というのが信条だ。
鬼頭氏自身、さまざまな分野に足を踏み入れる際に、効率の良い勉強法を役立ててきた。
名門の開成高校を卒業後、東大法学部に入ったが、法律のことをほとんど勉強してこなかったので恥ずかしいという理由で司法試験を受験し合格。弁護士時代に経験した民事再生案件でビジネスに興味を持ち、産業革新機構に転職。そこで出会ったベンチャー起業家に刺激を受けて独立した。
未来問の開発の際はAIのディープラーニングに関して独学で勉強し、サービスに活用できるという結論に至ったと話す。
試験突破のコツは過去問と出題者の徹底した分析
「学生時代は期末試験などのヤマ張りがかなり得意だった」という鬼頭氏が挙げる勉強法のコツは、過去問と出題者の特徴を分析することだ。
「学校のテストは先生が目の前にいるからすごく簡単で、その先生が過去に作った問題から傾向が分かるんです。英語だったら、和文英訳を多く出す人なのか英文和訳を出す人なのか、それとも単語を出す人なのかといった感じで。あとは試験の前に突然、特定の範囲を復習しだすなど不自然な行動をとったり、テストの範囲を聞かれて言葉を濁したり、そういうことにすごく集中していました(笑)。
司法試験の場合も、過去の出題者はホームページや官報に出るし、それまでに出した論文とか本の中から関心が強い分野の問題が大体出ます。試験の前に本を書いていたりしたら、その分野は激アツです」
過去の統計を取るそれらの行為をAIにやらせれば絶対自分より精度が上がるはず、と考えたのが未来問を開発した理由だと説明する。
勉強のためのツールが「働き方改革」を促進
未来問を作ったのは、サービスの付加価値向上とは別にもう1つの理由があった。自分たちで模試の問題を作る手間を省きたかったからだ。
「模試の作成は、果てしなく手間がかかる割に付加価値を出せないんです。それならAIを活用したほうが圧倒的に早いからそれでいいんじゃないかと」
反響は意外なところからもあった。資格スクエアと同じく、人手による模試作成に苦労している予備校や資格検定団体などが未来問のプログラムに興味を示したのだ。こうした法人需要に応えるべく、講師の負担軽減やコスト削減といったメリットを積極的にPRしていく方針だ。
法人顧客の「働き方改革」を促進させるツールとしては、ワンストップ電子契約サービス「NINJA SIGN」もリリースした。契約の締結や契約書の作成、管理といった業務をクラウド上でワンストップで行えるもので、定額料金で使い放題なのが特徴。現在の主流である紙の契約書を使うことで生じる煩わしさを解消するのが目的だ。
2019年の電子契約市場は約52億円。行政手続きを電子申請に統一するデジタルファースト法が成立したことにより、2020年以降は本格的な電子契約時代が到来すると鬼頭氏は予測する。
「日本で普及させるためには、まず契約は紙に印鑑を押さないといけないという常識を崩さないといけません。スケールできれば今後いろいろなサービスを載せていけますし、電子契約書は中国と米国ぐらいしか普及していないので、海外展開にも可能性があります」
「勉強の仕方を教える人」としてのブランディングが成功し、ユーチューバーとしても活動する鬼頭氏だが、今後の目標は、法律業界を中心に広く行き渡る息の長いサービスを展開することだという。
法律知識とITを組み合わせたリーガルテックと呼ばれる分野ではさまざまなベンチャーが立ち上がっている。そんな中、まだまだ世の中に提供できるサービスの余地は大きいと鬼頭氏は考えている。
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