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一瞬で400万円を突破したビットコイン相場の見方

昨年の大納会は、2万7444円と31年ぶりの高値となった。しかし株式市場以上に盛り上がっていたのがビットコイン相場。3月には40万円台だったものが年末にかけて高騰、新年には400万円を突破した。2017年に高騰した時は、その後、暴落したが、今度は一体どうなるか――。文=関 慎夫(『経済界』2021年3月号より加筆・転載)

ビットコイン相場の高騰、暴落の背景

200万円が2021年1月初めには400万円に

 暮れも押し詰まった12月31日、ビットコインの価格が300万円を突破、その8日後には400万円を超えた。

 驚くのは上昇スピードだ。1年前の2020年当初は100万円を割っていた。コロナ禍が世界に広がり始めた3月には、一時50万円を下回る。

 その後、ゆるやかに上昇し、5月末に100万円を突破したが、10月半ばまではその水準を維持したまま。しかし10月下旬から上昇を始め、11月上旬には150万円を超え、11月末には200万円の大台に乗せた。

 ビットコインの過去の最高値は17年12月の230万円だったが、12月17日にそれをあっさりと超え、年末年始の300万円超えへとつながり、1月3日には350万円の高値をつける。その後急落して、一時300万円を割るシーンもあったが、すぐに回復、8日には400万円を超え最高値を更新した。

 100万円から200万円に上昇するのに半年かかったものが、200万円から300万円へは1カ月、そして300万円から400万円へはわずか8日しかかかっていないのだから、その上昇スピードのすごさが分かる。

ビットコイン相場

2017年の急騰後に大暴落

 以前、ビットコイン相場の上昇が話題になったのは17年のことだった。この年初頭に10万円前後だったものが、8月末には50万円を突破してさらに加速、12月に230万円の最高値をつけている。年初から1年間で価格は23倍に膨れ上がった。

 それまでビットコインに代表される仮想通貨(暗号資産)は、一般の人たちには馴染みの薄いものだった。ところが恐ろしい勢いで上がっていく相場を見て、多くの人が関心を示し、実際に購入した。

 さらには、ビットコインを使って決済できる店舗も増えるなど、急速に普及していく。またビットコインにつられる形でイーサリアムなどの他の仮想通貨(アルトコイン)価格も上昇、仮想通貨投資は一種のブームとなり、専門誌まで発行された。仮想通貨で億単位の利益を上げた「億り人」の出現も話題になった。

 しかし、ビットコイン価格はその後、大きく下落し、1年後には50万円を下回る。バブル期に株初心者が株式投資を行って大やけどを負ったように、このビットコイン暴落で億り人になることができず、借金だけが増えたという人も多かった。

前回の急騰時との違いとは

 ということは、今度も上がり方が急な分、大きく落ち込むのではないかと考えるのは当然だろう。

 ただし、17年相場とは状況が大きく異なる。

 マネックス証券執行役員でマネックス仮想通貨研究所所長を務める大槻奈那氏は次のように語る。

 「17年は、ビットコインへの流入通貨の6割が日本円でしたが、今回、日本円はわずか10%にすぎません。代わって米ドルが7割以上を占めています」

 つまり、17年はビットコインの売買を行うのは日本人が大半で、その投資動向によって価格は上下したが、今では世界中の人がビットコイン投資を行うようになった。

「うさんくささ」の象徴だったビットコイン

 その背景には、数年来続く世界的な金融緩和がコロナ禍でさらに緩み、投資先を求めていることが大きい。

 アメリカではコロナ禍で経済失速が起きているにもかかわらず、株式市場に資金が流れ込み、ダウ価格が史上初の3万ドルを突破するなど活況を呈しているが、だぶついた資金は仮想通貨にも流入し、それが価格高騰につながった。

 これを後押ししているのが、仮想通貨への理解の浸透だろう。一時期、仮想通貨は「うさんくささ」の象徴だった。14年、当時世界最大のビットコイン交換所のマウントゴックスで多額のビットコインを紛失するという事件が起き、ビットコイン価格が暴落したのはその典型だ。

 18年には大量のテレビCMで取引量を増やしていたコインチェックで仮想通貨が流出、これがビットコイン価格暴落を加速させた。この時は北朝鮮の関与も疑われたが、その真偽はともかく、仮想通貨取引にはマネーロンダリングや、インターネット詐欺の決済手段として使われるなど、反社会的なイメージもあり、それが、機関投資家や企業の仮想通貨投資へ二の足を踏ませていた。

数年で向上した信頼性

 しかし、ここ数年でシステムが改善され、セキュリティが向上したことで、まず機関投資家が関心を示した。

 加えて、世界中で仮想通貨を含むデジタル通貨を巡る動きが加速していく。その代表がデジタル人民元でありリブラだ。

 デジタル人民元は、中国政府が発行するデジタル通貨。本来、仮想通貨は特定の管理者がいないことが特徴なため、デジタル人民元はその範疇には入らないが、世界第2位の経済大国が、本腰を入れてデジタル通貨に取り組んだインパクトは大きい。

 既に4月には実験の第一弾が終わり、300万件の決済が行われ、10月には5万人に配布された。このまま進めば発展途上国を中心に、デジタル人民元が基軸通貨として使われるとの観測もある。

 一方のリブラは、フェイスブックが発行を計画している仮想通貨。ドルなどの法定通貨と一定比率で交換できるため、ビットコインのような投機性はなく、送金や決済に使われることを目指している。

 しかし、この計画に対して、今まで以上にGAFAによる情報集積が進むことを危惧した米政府が反対姿勢を崩していないため、現在、宙に浮いた形となっている。それでも最先端企業がデジタル通貨の可能性を高く評価していることが明らかになったことで、仮想通貨にとって追い風となった。

イーロン・マスクがビットコインに投資?

 その証拠に今では、機関投資家だけでなく、企業の中にも財務活動の一環として仮想通貨を購入するケースが増えてきた。これもビットコイン価格を押し上げた理由の一つでもある。

 きっかけとなったのは昨年8月、ナスダック上場のソフトウェア企業、マイクロストラテジー社が260億円のビットコインを購入したと発表したことだった。それ以降、IT企業でビットコインを購入する会社が相次いだ。

 しかも同社は9月、12月にビットコインを買い増した。そのうえでマイケル・セイラーCEOは、自動車業界で時価総額世界一のテスラのイーロン・マスクCEOに対して「株主に1千億ドルの利益を提供したければ、バランスシートを米ドルからビットコインに転換してみて」とツイッターで呼び掛けた。これに対してマスク氏は「可能なのか」と応じたという。

ビットコイン相場はこの先どうなるのか

 これが憶測を呼び、ビットコイン価格はさらに上昇した。実際にマスク氏が購入したかどうかは不明だが、この一件は、企業にとってビットコインが資産運用の一手段として認知されつつあることを証明している。

 そうした背景もあり、ビットコイン価格はまだ上がる、との見方も強い。

 ビットコインの先行きを読むのがむずかしいのは、過去から学ぶことができないためだ。ビットコインが誕生したのは09年で、まだ12年しかたっていないのだからそれは仕方がない。それでもマウントゴックス事件後との類似性を指摘するのは、前出のマネックス・大槻氏だ。

 「マウントゴックス事件前にピークを迎えていたビットコイン価格は、事件から1年後にボトムをつけましたが、その時の価格はピーク時の20%。17年の12月に230万円の最高値をつけた後も、底を打ったのは1年後で、価格はピーク時の20%だった。しかもそれぞれ上昇基調に乗るまでに2年半かかっている」

 マウントゴックス後の底値は約2万円、そこから17年の最高値230万円まで、115倍、値上がりをしている。これを当てはめると、17年相場以降の底値は18年12月の39万9千円。40万円としてその115倍は4600万円。つまりまだ10倍以上の上昇余力を持っていると考えることもできる。そのため1千万円をうかがうという強気な見方も出てきている。

 ただし大槻氏は「ビットコインは経験則がない世界。何が起きてもおかしくない」と警告する。

 18年のように、一気に最高値の2割にまで値を下げるのか。あるいはカネ余りは当分続くため、資金流入がさらに増え、値を上げていくのか。当面の間、目が離せそうにない。