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再生可能エネルギーで電力供給 時代が「みんな電力」に追い付いた―大石英司 (みんな電力社長)

5年前、小売り電力が自由化された時、新しいマーケットを求めて多くの会社が参入した。みんな電力もそのひとつだが、ユニークなのは再生可能エネルギーにこだわったことだ。他社の多くは料金の安さを謳い文句にする中、みんな電力は価格より質にこだわった。大石英司社長に5年間での社会の変化を語ってもらった。聞き手=関 慎夫 Photo=横溝 敦(『経済界』2021年4月号より加筆・転載)

大石英司・みんな電力社長プロフィール

みんな電力・大石英司社長
(おおいし・えいじ)1969年、大阪府生まれ。明治学院大学経済学部卒業後、広告制作会社などを経て凸版印刷へ転職。2011年、みんな電力を設立し、小型ソーラー充電器の販売や世田谷区との再エネ啓発事業などを手掛ける。16年に電力小売りに参入、再生可能エネルギーで発電した電力を供給している。

電力自由化当時とは「隔世の感」

―― みんな電力は、小売り電力自由化で誕生した新電力会社の中でも、再生可能エネルギーのみを契約者に供給してきました。日本もいよいよ脱炭素に舵を切りましたが、時代がみんな電力に追いついて来たのではないですか。

大石 時代の変化というか、社会の変化を感じますね。電力自由化が始まった5年前とは隔世の感があります。

 新電力会社のほとんどは、ガスと一緒に契約すれば安くなる、CATVと一緒ならいくら、といった具合に安さを売り物にするところが大半でした。私たちのように、再生可能エネルギーを使いましょう、さらには、顔の見える再生可能エネルギーを作り、それを使いましょうと言ったところで、誰が作ったかで電気を選ぶ人はいない、電気代なんて安ければ安いほうがいいといった感じでした。

 しかし少し前から、炭素排出ゼロの電力で企業活動するムーブメントが欧米で起こり、その後日本にも入るなど、徐々に再生可能エネルギーに対する関心は高まってきました。そこに菅首相の発言です。ようやく電気は価格から質を求められる時代になったと思います。

―― サービスを始めた時、再生可能エネルギーのみでの電力提供に勝算はあったのですか。

大石 どうせ電気代を払うなら、それが石炭や石油の火力発電所にお金が流れるよりも、福島で復興に頑張っている太陽光発電事業者や、過去に旅行で行ったことある青森の風力発電事業者さんに払った方がよっぽど気持ちいいじゃないですか。

 しかもCO2を排出しないから、自分の子どもの世代にもツケを回さない。そのためには電気代が200円か300円高くてもいいと考えているのは私だけではないだろうなとは思っていました。ただし勝算があったかというと、みんな安さを売りにしているからやっぱりそうなのかな、と不安になったこともあります。

―― 契約者は現在どのくらいですか。

大石 570社・約3千件、個人約5千世帯に電力を供給しています。最近では再生可能エネルギーの電気を買いたいという企業も増えてきましたが、どうせなら、みんな電力の「顔の見える電力」がいいと言ってくださる会社も増えています。安い電力でなければ成功しないと言われていた環境の中で、これだけパートナーが増えていますから、順調に行っているんでしょうね。

 最近では、気候変動に関心を持つ企業が世界的に増えています。その中で、例えばパタゴニアさんは、取引先にも100%再生可能エネルギーを使おうと呼び掛け、もし使わなければ取引を見直すと、サプライチェーン全体にも広げるような動きをされています。こうした動きが今後は加速するのではないでしょうか。

みんな電力が供給する「顔の見える電力」とは

―― みんな電力は「顔の見える電力」をセールストークにしていますが、顔が見えるとはどういうことですか。

大石 電力会社には必ず電源構成というのがあります。例えば東京電力なら、石炭20%、LNG・その他ガスが59%といった具合です。このように電力会社ごとに電源構成が決まっています。当社が提供する「プレミアム100プラン」を契約していただければ、CO2を一切排出しません。

 それほど、私たちは電源構成にはこだわっています。そのためにほとんどの電気を発電所と直接契約して、購入しています。このように、みんな電力が提供する電力は、どこで誰が発電したものか、すべて分かります。だからこそ顔が見える電力なんです。

―― 電力会社の中には、化石燃料で発電しているのに、非化石証書を購入することで再生可能エネルギーだと言っているところもあるようですね。これだど、石炭の電気に証書という包装紙でくるんでいるようなものです。

大石 そのためにトレーサビリティも徹底しています。ブロックチェーンを活用した電力トレーサビリティシステムを開発し、ユーザーが「どの発電所からどれだけの電気を買ったのか」を見える化しています(法人のみ)。その逆に発電者の側でも、自分たちがつくった電気がどこで使われたかが分かります。そうした点が評価されて、昨年の「ジャパンSDGsアワード」では、最高賞である内閣総理大臣賞をいただきました。

―― ラジオを聞いていたら、「みんな電力が提供する〇〇発電所で発電した電力でお届けします」と言っていました。

大石 TBSラジオですね。TBSさんには18年に契約していただきました。埼玉県にある戸田送信所の電力は、すべて再生可能エネルギーで発電したものですし、ラジオの中でも言っていただいています。このほか、丸井さんの店頭では、どこで発電した電力を使っているかの表示があります。

―― どこで発電した電力を使うかは、ユーザー側が決められるのですね。

大石 そうです。30分単位で、どこの電力にするか決めることができます。
―― ユーザー間で発電所の取り合いになったりしませんか。

大石 人気の発電所というのは出てきます。先ほど言ったように福島復興を応援しようとか、地元の電力を使おうというケースも多いです。そういう発電所の電力は、多少高くても買い手がつきます。使う側にしても、〇〇の電力を使っていることで企業価値が高まる、というようになっていくと思います。

 一方、大規模ソーラー発電でも、それが森林を伐採してつくったものであれば、使いたいと思う人はあまりいないかもしれません。バイオマス発電にしても、最近パームヤシ殻を燃料にするところもありますが、東南アジアではパームヤシを栽培するために熱帯雨林を伐採するケースもあります。ですからみんな電力ではパームヤシを使うバイオマス発電とは契約していません。しかもそれを証明する手段をわれわれは持っている。ですから、地球環境に関心の高い企業が、みんな電力を使ってくれています。

みんな電力

みんな電力は社会課題解決型ベンチャーの成功事例となれるのか

―― 少し前までは赤字が続いていましたが、そろそろ利益が出るようになったのでは。

大石 部門ごとには利益が出ていますが、まだ投資しつづけなければならないので、全体ではまだ赤字です。でも以前は、ステークホルダーのためにも早く利益を出さなければならないというプレッシャーもありましたが、最近は株主からも利益よりも社会課題の解決のほうが大事だから、もっと再生可能エネルギーを広げてよ、と言われることも増えました。とくに海外の投資家からは、まず社会課題解決だとよく言われます。

 残念ながら日本ではまだ、社会課題解決に挑んでいる企業にはファイナンスはつきにくい。ESG投資がさかんになってきているといっても、日本の会社から資金を調達しようとすると、利益はいつ、どのくらい出るんですかと聞かれます。社会課題解決は長期にわたるものですから、何かやったら明日すぐに利益が出るものではありません。だからこそ、ファイナンスが付きづらい環境の中でベンチャーとしての成功事例を作りたいと思います。

 僕らが成功すれば、社会課題解決をテーマに起業する人が増える。それが次の社会課題の解決につながります。

―― 市場は間違いなく拡大していきます。

大石 日本の電力市場は約15兆円です。電力自由化が始まった頃は、99%のユーザーが価格で選び、1%が質で選ぶと考えていました。1%でも1500億円なのでそこで勝負していけばいいとも考えていました。しかし菅首相の脱炭素宣言で、再生可能エネルギーへの関心が高まったため、質で選ぶ比率が10%にまで上昇すると見ています。そうすると1兆5千億円の再エネ市場ができあがります。その中でみんな電力はトップシェアを取っていきたい。

 でもそれ以上にこだわっていきたいのは電気の質です。調達基準を明確にして、みんな電力だったら買って安心だねと言われるようになりたい。質に関して常にトップを走り続けたいと思っています。

―― 再生可能エネルギーがビジネスになることが分かったため、参入する企業も増えています。

大石 実は危惧していることがあります。電力会社の中には、先ほど出たように石炭火力発電の電気を非化石証書でくるんでいるケースもあります。そのほうが電力料金は安くなりますから。ユーザーはそこまで気にしないで、自分は再生可能エネルギーを使って地球環境に貢献しているつもりでも、実際には石炭火力の電気を買っているということも十分起こりえます。

 ブームになることで、電気の質が悪くなったのでは意味がありません。再生可能エネルギーは新しくできたマーケットなので、整備が追いついていないところがあります。ですから政府にはそういうルール作りをお願いしたいですね。